ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「こんなもんやろ」
「……どうも」
「お前、いざとなったら逃げろや」
「え?そういう事、言っていいの?」
「あいつの事、オレは認めてないねん。言いなりになる必要ないで」
「あなたが認めてるのは……幻狼だけ?」
「そうや」
見知らぬ私にもはっきり言うなんて……。
きっと、この人もいい人なんだ。
「あ、でも私、戦闘能力ないから。弓なかったら皆無だから」
「え゙………」
功児は縛られていた縄をスルリと解いてくれた。
どうやら縛っていなくても大丈夫だと認識したらしい。
部屋を出た功児について行く。
美朱たちはどこにいるのだろう。
案内されてるのは私だから美朱は大丈夫なんだろうけれど……。
でもその考えはすぐに打ち消された。
『ーーいやっ!!!』
え?今の声、なに?
功児を見上げる。
彼もわけがわからないと言った顔を向けてくる。
でも……今のは間違いない。
「美朱……!どこから……」
「こっちや!」
功児が走り出す。
……はやっ!
「な、なんや!?ついて来てへん!遅っ!」
「あなたが速すぎなだけだから!」
「あーもう、ホンマかいな!」
くるっと戻ってくると、ひったくるように手を掴まれる。
お、お、お?
飛ぶような感覚が襲う。
「って、今度は心臓が追いつかない……!」
曲がり角を曲がったところで、功児は立ち止まった。
後ろから覗き込むと、前から同じように星宿と柳宿が走ってきている。
「なんや、お前ら……」
「星宿!柳宿!」
「奏多!?そなた、無事であったか」
「私は平気!美朱ちゃんは!?」
「さっき連れてかれたのよ。探してるんだけど……」
「柳宿、ここにいるらしいの!そうでしょ!?」
功児に問いかけると、静かに頷いた。
「そなたは……」
「この人、信用できるわ。大丈夫」
「お前……」
「あんたが言うなら、今は信じてあげるわ。ここね」
柳宿が壁に一旦、拳を当てる。
息を一呼吸すると、はっ!と勢いよく壁をぶち壊した。
組み敷かれている美朱の姿が目に入る。
「美朱!大丈夫か!」
「星宿ぃ!」
砕けた壁が当たったのか、むっさい男は体をふらつかせていた。
現実に目の前にいる睿けんを見て、顔が引き攣る。
「………無理。やっぱ相手できないわ」
「……せやろ」
横で功児が頷く。
こう言っちゃなんだが、最近、整った顔をしている人達に会ってばかりだ。自然に拒否反応が出る。
星宿は美朱を後ろに庇い、睿けんに剣先を突きつけた。
「この娘は朱雀の巫女だ!指1本でも触れた罪は死に値する!!」
「待って、星宿!ねぇ、教えて!体に字がある人のこと……ホントにいるの?」
美朱が睿けんに問いただすと、功児が息を呑むのがわかった。
もう私はわかってる。美朱に近づくと、肩に手を置いた。
「美朱、その人なんだけど……」
「わ、わかった!教えるさかい!!“翼宿”や!!確か字ィ持っとった!!」
睿けんの必死な声が聞こえたかと思うと、ふいに浮く感覚。
え、なに?
気づけば目の前に広がるふわふわのオレンジ。
視界が反転する世界……。
「ええぇぇーー!?」
「ッ……じゃかしいわ!耳元で叫ぶな!」
……有り得ないって。
いや、ほんと……有り得ないって!!
「奏多!!」
「ちょっと!その子、放しなさいよ!」
高い位置にいるのだろう。
下の方で見上げてくる星宿と柳宿がいる。
功児も目が点になっていた。
「久しぶりやんけ、睿けん!!」
「げ、幻狼……帰ってきたんか……」
「旅に出て帰ってきたらお前が頭やて?ブッサイクなツラしおって“嫁”までもろうたとは、けっこうなこっちゃ!」
……あぁね、なんかこのセリフ、覚えてるわ。
「こいつはもろとくで!!返して欲しいんやったら頭の座をかけてオレと勝負せい!!」
うん、そういうと思った。
「……ただし、この女は今夜一晩たっぷり可愛がらせてもらうで」
くくく、と面白そうに笑う彼に、つい笑いがこみ上げる。この人に出来るわけがないのに。
肩に担がれ、どうせ抵抗は虚しいことになるだろうと諦める。
「おのれ!!奏多を返せ!!」
「星宿!私は大丈夫だから!待ってて!だから……!」
止めようと声を張っても時既に遅し。
「いっちょう遊んだれ!!」
星宿や柳宿の前にたくさんの狼が放たれた。