ふしぎロマンス1~本の中へ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「ここで少し待っているのだ」
そう言われて連れてこられたところは年代物の古民家のようなところだった。
「ここは……?」
「宿なのだ」
「宿?泊まるところ!?」
「そうなのだ」
パァ!っと嬉しくなった。
なんせ、横にいる人はあの井宿さんじゃないか。
「どうしたのだ?」
「いえ……てっきり野宿なのかと思ったので」
ホロリ、と出もしない涙を拭う真似をする。
「いつもならそうしてるのだ」
「え゙……」
「でもさすがにこの世界に慣れていない君がいるのだから野宿は無理なのだ」
あぁ……この人が神様に見える!
光ってるわ。
後光が差してるわ!
「ここが君の部屋なのだ」
店番の人だろうか。
その人と少し話をして2階に上がる。
上がって一番奥の部屋に井宿は通してくれた。
「それじゃ、ここでゆっくりしてるのだ」
「あのっ、井宿はどこに……」
「オイラは君の必要なものを集めてくるのだ。その格好では目立ってしょうがないのだー」
「あ……そっか。そう、だよね」
「見たところ体力もなさそうなのだ。今のうちにしっかり休んでおくといいのだ」
言うなり井宿が部屋から出ていく。
窓から外を見てみる。
ちょうど、この宿から出ていく井宿が見えた。
ひとりになって、外を見ながら考える。
本当に私は何をしているのだろう。
この世界が本当にあの“ふしぎ遊戯”の世界なのだとしたら……
私はなぜここに来たのだろう。
思い出してみる。
この世界に出てくる人たちのことを。
あぁ、大丈夫だ。覚えている。
でも……物語が断片的にしか思い出せない。
そうだ。
あの本を読んだのは学生の頃だ。
記憶がところどころ抜けている。
それに、井宿がこんなところにいる事も不思議だった。
私が朱雀の巫女になったわけじゃない……
出会いが違うのは当たり前の事なんだろうか。
井宿は日が暮れ始めた頃に宿に戻ってきた。
「朱雀の巫女が現れたそうなのだ」
「そうみたいだね」
「知ってたのだ?」
「道行く人が大騒ぎしてるもの」
「なるほどなのだ」
少し前、外が騒がしくなった。
よくよく見てみると、人が口々に“巫女が現れた”と言っていた。
「今は宮殿にいるようなのだ」
「それなら安心ね」
少しの間、沈黙が流れた。
井宿はひとまとめにされた風呂敷包みを私の前に置く。
それをチラリと見ながら、私は小さく呟いた。
「井宿は、会いには行かないの?巫女に」
本当は聞くのが怖かった。
巫女が現れたと耳にしてから井宿も会いに行って、私は置いていかれるのかと不安になった。
井宿は察してくれたのか、私の前に腰掛け、荷を解きながら言った。
「七星士は巫女が自分の力で見つけないといけないのだ」
「……そうだったの?」
「それにオイラは君の面倒を見ると言ったのだ」
また神様に見える……!
やっぱり優しい。
優しいよ、頼りになるよ!
「着替えになるものと、履物なのだ。手ぬぐいに……」
一緒になって荷物を見る。
ひと昔前のものを目の当たりにして、“今”という時代が便利なものだと再認識した。
「それと……握り飯なのだ。あとで食べるといいのだ」
そっと置かれた包みを手に取る。
まだほんのり温かい。
「井宿のもある、よね?」
「………オイラのは部屋に置いてきたのだ」
「部屋?井宿の部屋、ないと思うけど」
「だっ!?」
やっぱり……自分の分まで買ってきてないんだ。
……いや、買えなかったのかもしれない。
荷物の多さから、きっとお金もたくさん使ってしまっていると思う。
「これ、部屋代」
「だぁ!?」
「さっきね、ここの人が来て、“あんたら良い仲なら一緒の部屋使ってもらえんか”って言われたの。どうやら部屋が足りないみたい」
あ、井宿の口が開きっぱなしになってる。
「お客さんが増えてきて困ってるのがわかったし」
「…………」
「部屋代も返してくれるって言うし……」
「…………」
「これで断るのも変かなーって……」
私が話し終えると井宿は盛大にため息をついた。
「君は……何を考えているのだ~……」
「何って……節約?」
「ダメなのだ!!」
「どうしてよー」
「そんな……年頃の女の子が男と同じ部屋はまずいのだ!」
今までとは違う大きめの声に、今度は私が驚く番だった。
年頃の……女の子……?
「ブハッ!」
おっと、盛大に吹いちゃった。