ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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盗賊と思われる男達から逃げて山の中に入った。
そう長くは走れない私と美朱は乱れる息を整え、休憩していた。
「柳宿、手を見せて」
「え?なんでよ」
「刃を挟むなんて……切れたでしょ」
「なんだ、バレてたのね」
そっと手に取れば、やはり手のひらから血がにじみ出ている。
紙でスッと切れただけでも痛いというのに……どうしてこの世界の人たちは斬られてもこんな気丈に振る舞えるのだろう。
「柳宿、痛そう~。大丈夫?」
「美朱に心配させてたら、あたしもまだまだねー。別にこれくらいは大したことないわよ」
「すぐに治すね」
「……あんた本気?治してもらうの、初めてね」
「そうだった?」
柳宿の手のひらに唇をつけた。
スゥ、と切れていた箇所が何事もなかったかのように綺麗に消え去る。
痛みもなくなったようで、柳宿は自分の手をマジマジと見た。
「……すごいわね」
すごくなんて……ないよ。
こんな治癒は、あなた達の仲間だって出来るのだから。
この先出会うであろう、軫宿の顔を思い浮かべた。
「それにしても……星宿、あたし達がいるところわかるのかなぁ」
「それは……そうねぇ。あまり動くと会えないかもしれないわね。落ち合う場所も決めてるわけじゃないし」
「だよねー。奏多さん、どうしたらいいかなぁ」
「そうね……。私達がここにいることを遠くからでもわかるといいわよね」
「そりゃそうだけど、それをどうすんのよ」
「星宿ならきっと気づいてくれることを今からしよっかな」
上手くいくかはわからなかった。
それでもやってみる価値はある。
近くにあった大きな木に近づく。
美朱と柳宿に少し離れておくようにいうと、その木に片手をつき、目を閉じ意識を木に向ける。
ーーキィィィン
僅かな高い音が聞こえた。
目をゆっくり開けるともう片方の手を上に上にと振りかざした。
「……木が、成長していく……!」
柳宿の驚きの声が聞こえる。
もっともっと手を振りかざす。
気づいて、星宿。美朱たちはここに居るわ。
ぐんぐん1本だけが成長していく。
こちらに向かっているなら、伸びていく様も見えているはずだ。
「このくらいかな?」
一度、息をついた。
初めてやることはどうしても疲労感が残る。
暫くその場で待っていると、星宿が姿を見せた。
「奏多……またなんと無茶なことを……」
へたりこんで座っていた私に、星宿は目線を合わせるように膝をついた。
「さすが星宿ね」
「無論。そなたはこのような事もできるとは。美朱、柳宿。大事ないか」
星宿が2人に視線を向けると美朱たちはそれぞれこれまでの事を話した。
そして今、星宿は美朱と話し込んでいる。
「……ねぇ、柳宿。私たちここにいていいのかな」
「いいんじゃなーい?」
「でもあなた……」
「何よ」
「つらい?」
「……べっつにー」
そうは言っても先程から柳宿の表情が暗い。
かすかに聞こえてくる声が……どうしても聞こえるからだ。
『そんなに……そんなに鬼宿が好きなのか……!?』
『こんな時に……卑怯だと思う。でも私は……』
『私はお前が好きなんだ!初めて会った時から……』
……見てしまった。人のキスシーンを。
柳宿も……驚いた顔してる。
なんて声をかけようか。いや、声なんてどうかけられようか。
『放してっ!』
美朱の拒否にも聞こえる声が聞こえる。そしてすぐに大きな音。
柳宿を見ていて気づくのが遅くなった。
大きな板に無数の針がつけられたものが、上から落ちてきた。
隣には、美朱に覆いかぶさる星宿が倒れている。
そうだ……私、何を忘れていたのだろう。
このあと…………何が起きた?
「美朱!!星宿様!!」
「柳宿!待って……!」
飛び出した柳宿を追う。
でも、目の前で柳宿が頭を叩かれ、気絶させられた。
「あ……」
日が暮れてきたこともあって、近づいてくる人影の顔は見えない。
それでも、かなりの人数に体が勝手に震える。
「み、みんな……起きて……!」
じり……と私に近づいてくる。
「起きて!みんな!!」
怖い!殴られて気絶なんてしたことがない!
とは言え逃げるなんてできない。
みんなを置いていくなんてできるわけがない。私はなんのためにここにいるのか。
しっかりしろ!
私はこの先のことを知っている。
だったら……利用するまで。
「あなた達、この山の山賊?」
「だったらなんや」
低い声。あの人と同じ話し方。でもこの人たちは知らない人。
賭けよう。あの人の仲間だと。
「私、幻狼に会いたいの」
その名を聞いた時の男の反応。どうやら私は当たったようだ。
この男たちは幻狼の仲間だった。