ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「美朱ちゃん」
「……奏多さん、どうして……鬼宿は行っちゃったの……」
美朱は1人、部屋にいた。
朝起きたままの姿で、ベッドに突っ伏していた。
「美朱ちゃん、鬼宿の気持ちは聞いた?」
「……うん。好きだって、言ってくれた。やっとわかった、って……」
「そっか。だったら……必ずまた会えるから」
「……ほんとに?」
「えぇ。私が予言するわ」
「ほんとに、また会える……?」
「ほんとよ。私が会わせる。だから……七星、探しに行こう?」
この子がどうか、傷つきませんように。
その為なら私は何だってする。
「七星を4人で探しに行く、と……そう美朱は決めたのだな」
「うん!星宿のおかげで充分休んだし、この太一君からもらった玉を見て、七星を探してくる!」
「……そうか。気をつけていくのだぞ」
「うん!」
星宿に声をかけて、私達は出発した。
美朱は柳宿の馬に。そして、私は井宿の馬に。
もしかしなくても、きっと次はあの人と出会う。
前に鬼宿の実家に行く時に予期せず会った人。
ここで先に教えたら……どうなるのだろう。
「あ、のね……私この間」
「あ!!あそこ!食べ物屋さん!?」
「美朱ー……あんた、もうお腹空いたわけ?」
「だってー、ねえねえ、寄っていこうよー!」
「しょーがないわねー」
「…………」
実は今が初めてではない。
先のことを話そうと声をかけても、遮られる。
まるで……私に話させないようにしてるみたいに。
「奏多」
馬を降りたところで、今まで口を開かなかった井宿が私を呼び止めた。
「どしたの?2人とも、入ってっちゃったよ?」
「オイラ、戻るのだ」
「え?」
「陛下と代わるのだ」
「井宿……」
「陛下のお気持ちを思えば、その方がいいと思うのだ。でも……君のことが心配なのだ」
「大丈夫よ。行って」
「無茶はするな、なのだ」
「……………………………しないわよ」
「間が長いのだ」
井宿は困り顔を浮かべつつもス……と消えた。
そっか。井宿って七星探しの時、いないんだ。
そっと背中にある弓具を確かめる。
頼るな。
自分の身も、美朱の身も己自身で護れ。
「あら?井宿はどうしたのよ」
店に入るとすでに柳宿と美朱がテーブルについている。
「あ、うん……戻るって」
「戻る?どこによ」
「代わりに星宿が来ると思う」
「ええ!?」
柳宿も美朱も驚いていた。
井宿の変身の術のことを教えてあげると、納得した。
「それならそーと、最初から代わればいいのに」
「そんな身も蓋もないことを……」
話し込んでいると、目の前に沢山の料理が運ばれてきた。
「え、なにこれ」
「美朱が頼んだのよー。これ全部食べ切れるわけが……って、えーー!!もう食べてるー!!」
……ほんとにすごい食欲……。
待って、今……あの店員……笑った?
「うっ……」
「美朱!?どうしたの!?……まさか、毒!?」
盛られていたか、と柳宿があたりを見回した途端、先ほどの店員が素早い動きで大刀を振りかざした。
ギリギリの所で柳宿が手で挟む。
「柳宿!手が……!」
「こんのー!!」
バキッと刃の部分が粉々に砕かれる。
柳宿の怪力が発揮された。
倒れた美朱を庇うように前に立ちはだかる。
こういう時、屋内では弓は扱いづらい。
「おりゃあ!!奏多!美朱を連れて逃げるのよ!!」
柳宿が男に蹴りを食らわす。
その言葉に頷くと、美朱に手を貸した。
男達は美朱の持つお金が目当てだった。
襲いかかってこようとすると、柳宿がものすごい力で放り投げていく。
「早く外へ出なさい!!」
バタバタと3人で走り出せば、男も必死に追いかけてくる。
逃げてばかりじゃ……いつか追いつかれる。
外に出たところで、私は振り返った。
素早く弓を構える。
「奏多!?何して……!」
「動くな!!動けばその足を射る」
声に反応して男が足を止めた。
キリキリと弓がしなる。
男達の顔がいやらしく笑う。
お前に矢を放てるのか、そう思っている顔だ。
ジリジリと近づいてくる。
バシュッと矢を放った。
それは男の左太ももを掠る。
「うあぁ!!」
「はったりじゃないわ。次に動いたら心臓を射る」
完全に動きが止まったところで、私達は再び走り出した。
「奏多……あんた、なんて顔してんのよ」
「……人を傷つけるって……苦しいね」
「……よくやったわよ、あんた。見直したわ」
柳宿の声がやたらと優しく感じた。