ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「……あんたってほんとに年上なのかしらね」
「え、何いきなり」
「なんだか……ほっとけないのよね」
ふぅ、と柳宿はため息混じりに息を吐く。
しなやかな手が伸びてきて、肩の後ろに回って引き寄せられた。
トン…とすぐに柳宿の胸に顔が当たった。
「柳宿?」
「あたしじゃ頼りないかもしれないけどさ、あたし、あんたのこと結構気に入ってるのよね」
「…………」
「とてもお姉さんとは思えないあんたが気になってしょうがないの。あたし、世話好きのよ。だからね」
そっと顔を上げると、柳宿が笑っていた。
とても、とても綺麗な笑顔。
「奏多のことは、あたしに護らせなさい?いいわね」
……あぁ………も、ダメだ。
鼻が痛い。
「ちょっとー、そこ泣くところ?」
「……ッ……泣いてないわ」
「あんた、最初に会った時も泣いてたものねー」
「柳宿だから……だよ」
「ええ?なにそれ」
どうしてこんなにも……優しいのだろう。
コツンと胸に額を預けると、柳宿の手が頭を撫でる。
ダメだな。
柳宿が優しいと涙腺弱くなる。
「眠ったのだ?」
静かになった時、ス……と井宿は部屋に現れた。
ベッドに眠る奏多の横で上体を起こしたままでいる柳宿が振り向いた。
「ええ。さっきね」
「……感謝するのだ、柳宿」
「やぁねー。別にあんたに頼まれたからしたわけじゃないわよ?」
「わかってるのだ」
「これで少しは奏多の肩の荷が軽くなるといいわね」
「だ……」
柳宿はそっと奏多の頬にかかる髪を横に払った。
「あんたが泣かないで済むように、あたし達が護ってあげるわ。だから、ずっと……ここにいるのよ?」
柳宿は奏多に顔を近づけると、穏やかな笑みを浮かべたまま、そう囁いた。
翌朝、私の部屋をものすごい勢いで叩く音で気がついた。
「奏多さん!奏多さん!!」
「ん……美朱ちゃん?」
ベッドの中から上体を起こすと、その時には既に柳宿が扉を開けていた。
……なんで柳宿がいるの?
…………はて?
柳宿はここで寝たの?
「どーしたの、美朱」
「鬼宿がいないの!!奏多さんはいる!?」
「奏多ならいるわよ」
バッと確認するかのように、部屋を覗く。
バチ、と目が合うと、美朱はへなへなとその場に崩れ落ちた。
「美朱!どうした!?」
部屋に星宿も入ってくる。慌てた美朱の声がよく響いたのだろう。
「星宿……鬼宿が……鬼宿がいなくなっちゃった……」
その声に、私は勢いよくベッドから出た。
「星宿、これ……なんて書いてあるの?漢字ばかりで読めないの」
美朱はノートを星宿に渡す。
星宿は鬼宿が自分に何も言わず消えたことに驚きつつ、ノートに目を落とす。
でもすぐに、先程よりも大きく目を見開いた。
「美朱……鬼宿は倶東国へ行く、と書いてある。“自分が行って戦を止めている間に必ず朱雀七星の残り3人を見つけてくれ”、“全員集まったら必ず帰ってくる”、“奏多のことは諦めるようにいうから、絶対に来させるな”……と」
美朱は信じられないと、気が動転していた。
きっと……昨日、鬼宿は行かないと言ったのだろう。
美朱が寝ている間に、鬼宿は倶東国へ向かった。
私の分まで背負って……。
ダメ、だよ……。
だって、鬼宿はこのあと変なもの飲まされて……。
知ってるのに何も動けないのか。
何も出来ないことが、ものすごく自分に腹立たしい。