ふしぎロマンス8~山賊~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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バタバタと駆け込んだ部屋には、鬼宿と美朱がいた。
「……気をつけろ2人とも!何か邪悪な気配がする!」
「星宿!一体どうしたの……!」
そうだ。
これは……この出来事は覚えている。
ーー朱雀の巫女に告ぐ
突如、耳に響く低い男の声。
「誰だ!?」
ーー我は倶東よりの使者。よく聞け。我が国はすでに紅南に進軍し、村を数カ所落としたのは周知の通り。
ああ……とうとう来てしまった。
私の記憶にも鮮明に残っている美朱と鬼宿の試練でもある出来事が。
ーーもし、これ以上の戦火を食い止めたくば、朱雀七星が1人、“鬼宿”と、黄龍の依り代である“奏多”を倶東へ献上せよ。
………え゙?
なんか思ってたのと違う。
「鬼宿と……奏多ですってぇ!?」
「む、そこか!」
井宿が気を発して、何者かを縛りあげようとする。
男は一瞬の隙をついて姿を追えないくらいの速さで逃亡した。
「奏多、大丈夫よ。あんなの無視よ、無視!」
「柳宿……」
これは……無視は……できない。
きっと鬼宿も同じ思い……。
鬼宿を見る。やはりこちらを見ていた。
「何も心配しなくていい。鬼宿、美朱、奏多。今夜はゆっくり休め」
「……はい」
星宿に返事をしたものの、鬼宿の顔色を伺う。
やはり不安に思う美朱に向かって爽やかに笑っていた。
「鬼宿……」
「大丈夫だ、美朱。どこにも行かねェよ」
「奏多さん……。奏多さんも、どこにも行かないよね!?」
「美朱ちゃん……」
不安でいっぱいの顔だ。
思わず目を伏せる。
だって鬼宿は……きっと行く。行ってしまう。
「大丈夫よー!美朱!あたしが押さえつけておくから!」
「柳宿っ……!痛いよ」
「あらやだー!軽く掴んだだけじゃない~!」
「柳宿に腕掴まれたら骨がミシミシ言うんだけど……」
「ホホホ!やーねー」
部屋から出たところで、本当にガシッと腕を掴まれた。しかも……まさかの両腕。
「えっと……」
「言っておくけど、本気よ」
「え?」
「あんたを行かせないわよ。井宿も同意見って感じだしねぇ」
「……だ」
右を見れば井宿。
左を見れば柳宿。
2人が腕を掴んでいる。
「歩きづらいよ」
「あんた、出ていきそうだもの」
「い、行かないよ!」
「動揺が声に出ているのだ」
「それはあなた達の圧力がハンパないから!星宿~……どうにかして……」
前を歩く星宿に助けを求める。
振り返る星宿も、眉を下げてこちらを見ていた。
「そなたも、気にする必要は無い。倶東国へ行くことは許さぬよ」
「星宿……」
「倶東の皇帝が考えそうなことだ。透だけでは足りず、奏多まで欲するとはな」
私まで……ほしい。
この黄龍の力をということか。
「えーと、柳宿?何をしてるのかしら?」
「何って寝る準備に決まってるじゃない」
「うん。それは見たらわかるわね。でもね」
「なによー?」
「それは私のベッドよ?」
半ば強引に部屋に連れてこられた。
部屋の中に閉じ込めておく気なのだろうと思っていたら、柳宿が部屋に居座った。
しかも、何やらせっせとベッドまわりを自分好みに替えている。
「私、本当に行かないでいいのかな」
「……ほら、やっぱりあたし達がいなかったら出ていく気だったんじゃない」
「でも……鬼宿は行ってしまうわ」
「そんなことないわよ」
「あるのよ!」
「それでもあんたまで行くことないわよ」
「鬼宿が行ってしまったら……!」
柳宿はベッドに座って横をポンポンと叩く。
言葉で言われなくてもわかった。そっと、隣に座った。
「あんた、あたしたちのことがわかるからって何でも背負い込みすぎよ。もう少しあたし達を信用しなさいな」
「でも柳宿、私の知ることと少し違うところがあるの」
だから怖い。知らないことが起こりそうで。
「全部が同じなら防ぎようもあるのに」
「あんたねー、防いだり足掻いたりしてる時点で未来って変わっちゃうんじゃない?」
「え……」
「いーのよ、変わっても。変わるのが怖いっていうなら一緒に乗り越えればいいんだし」
「柳宿……」
隣にいる柳宿が、とても頼もしく見える。
この人はやっぱりいなくちゃいけない人だ。この人を、死なせてはいけない。