ふしぎロマンス7~黄龍の依り代~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「えっ!星宿のところまで送ってくれるの!?あたし達、みんなを!?」
美朱が部屋から出てきたところで、太一君が紅南国まで送り届けてくれると言ってくれた。
「そうじゃ。歩いて帰るつもりだったのか?それならわしは止めはせんが」
これには私も美朱もブンブンと首を横に降った。
冗談じゃない。
この山から紅南国に行くのにどれだけ歩くのか……想像するだけで体が震える。
「奏多さん、よかったねー!」
「うんうん!歩くとか無理だから!」
手と手を取り合って喜ぶ。
後ろで鬼宿も井宿も苦笑いを浮かべていた。
「体力はつけておいた方がいいと思うのだ」
「井宿!余計な事は言わない!!」
太一君の気持ちが変わってしまったら困る。
井宿を一睨みすると、美朱と鬼宿の腕を取って太一君の元へと向かう。
井宿はため息をついて、あとに続いた。
「それでは、今からお主らを紅南国に戻す。会いたい者の顔を思い浮かべよ」
今、私は太一君を囲み、四方に座っていた。
美朱と鬼宿は経験があるようで、慣れたように目を瞑る。井宿も然り。
3人が目を閉じたのを見て、私も急いで目を閉じた。
会いたい人……星宿かな?
うん、思い出せる。星宿の綺麗な顔を。
ーー奏多、ここに残って……。
一瞬、頭をよぎるのは彼の顔。声。
ーーブゥン!!
「ッ……!」
「愚か者!何を考えておる!お前だけ違う所に飛ばされるぞ!!」
思いのほか、誰か1人のことを思うというのは、とても難しかった。
意識がすぐに削がれる。
必死に思い浮かべた。決して彼ではない。
あの人のことは考えるな。
今だけは、戻ることを考えるんだ。
「ぎゃぁお!!!」
いきなり間近に聞こえてきた音に、肩がビクッと上がった。
なに、今の……。
放心状態の中あたりを見回すと、美朱が星宿に抱きしめられている所だった。
あ、帰ってきたんだ、と思った時には体が浮く感覚。
「うわっ!なに!?」
「……それはこっちのセリフよぉ~?」
「………あ。」
声のするほうを見ると裾をパンパンと叩きながら立ち上がる柳宿の姿。
「あんた……もうちょっといい登場の仕方なかったわけ?」
「え、もしかして……」
「アタシの上に降ってきたのよ」
うーわー……やらかした。
「みーんな星宿様の所についたっていうのに……アンタ、もしかして……」
「な、なに……?」
柳宿がずい、と顔を近づけてくる。今は女性らしい格好はしていないからか、柳宿がちゃんと男の子に見える。
「アタシのこと、想って帰ってきたんだ?」
「え、いや……え?」
「へー、ふーん、そうなんだ?」
「~~ッ……違うよ!!無意識だもの!!」
本当に不思議。
あの時、ちゃんと星宿を思い浮かべたと思ったのに、柳宿の元に辿り着くなんて。
私、何気に柳宿に会いたかったのかな。
「奏多。そなたも無事だったか」
美朱を自身の腕の中から放した星宿が私に目を向けてきた。
「うん。大切な巫女なのに、危険な目に合わせてしまった……ごめんなさい」
「奏多が謝る必要は無い。こうして皆が無事に戻ってきてくれただけで、私は嬉しい」
「星宿……」
なんて優しい人!
「星宿。あたし、少し疲れちゃったから部屋戻るね」
「あぁ、そうするといい」
美朱が柳宿にも帰ってきたことをぴょんぴょん跳ねながら喜んだ。
こういう仕草が出来るところがどちらも可愛い。
部屋に戻った美朱を目で追う鬼宿に、私は近づいて言った。
「鬼宿、美朱ちゃんの所に行っておいでよ。ちゃんと話をした方がいいわよ?」
「奏多……」
「そのあと、私とも話しようか」
「………わかった」
素直に部屋に向かってくれた。
よかった。ちゃんと2人は通じ合う仲になりそうだ。
あんなイケメンに愛されて、実は少しだけ……いや、ちょっとは羨ましくもあるけれど、私は応えられないから……。
「美朱と鬼宿は……」
2人が見えなくなった所で、星宿が呟いた。
そうだ。美朱と鬼宿が通じ合えば……自ずと彼は……。
「星宿様……」
「ねぇ、星宿」
「うん?なんだ、奏多」
「1つ、異世界から来た者として、予言してもいい?」
「ん?」
これはちゃんと記憶にあるから。
私の知るあなた達の物語。
「星宿は幸せになるよ」
「奏多……」
「絶対、なる」
力強く言うと、星宿は優しく笑った。
それはもうとても綺麗に。
「そうか。私は幸せになるのか」
なるよ。
私が……そうさせる。
必ずあなた達を
幸せにする。