ふしぎロマンス7~黄龍の依り代~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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結局、服を持ってきたのは娘娘だった。
一緒に遊んで欲しいのか、着替えるまでずっとそばにいた。
「着替えたっ?着替えたっ?」
服は今まで着ていたもの、つまりは井宿がこの世界に来た時に用意してくれたものだった。
娘娘が「こっちもあるよ!」と見せてくれた倶東国の服。
さすがにこれは……着れないわね。
「着替えたらこっちねー!」
きゅ、と最後に髪紐で髪をまとめあげた所で、娘娘は裾をつかんで引っ張ってきた。
「どこに行くの?」
前をぴょんぴょん飛ぶように進む姿が可愛い。
頬がゆるみっぱなしでついて行くと、娘娘は部屋の前で立ち止まった。
「ここに入るね!」
「ここ?あっ、娘娘?」
娘娘は扉を開けるとぴゅーっとどこかへ行ってしまった。
何があるのだろう、と中に入ろうと再び前を見る。
部屋の中には大きな鏡、そしてその前に佇む美朱と鬼宿、井宿の姿があった。
「やっと来たか」
「!?」
ぬっ、と逆さまで太一君が現れる。
目の前に、至近距離で!
「あまり驚かんか」
「いえ、これでも驚いてます。これが現実か、と」
「まぁ、よい。お前もこちらへ来て見るがいい」
見ろ、と言われて大きな鏡を見る。
これは……見ていいものなのだろうか。
このあと、これに映るのはきっとあの出来事だ。
すぐに鏡に唯が映し出される。
私の知る、唯の悲しい記憶が流れ始めた。
徐々に美朱がカタカタと震え始める。
無理もない。友達が、襲われているところなんて……見るもんじゃない。
「もういい……止めてーー!!」
「まだじゃ。まだこの続きを見るのじゃ」
え?続き?まさか続きまで見せるつもり?
子供に見せるなんて!と太一君を止めようとする。
だけど……。
『ーー奏多………!!』
なに?
今、呼ばれ……た?
視線を鏡に向ける。
ゆっくりと。
『ーー奏多!どこかにいるのか!奏多!!』
この……声……。
唯の悲鳴の向こうで私を呼ぶ声が近づいてくる。
「透くん……?」
その声の主の名を口に出すと、鏡の中にその姿が映し出された。
『ーー!?そこで何をしてるんだ!!』
透は唯に気付き、襲いかかっている男達を唯から引き離していく。
でも、次の瞬間、透に矛先が向けられた。
次々に透に殴りかかる。
防いでいても、一度隙を突かれ殴られるとそれからはもう彼は防ぐことが出来ず、全ての攻撃をその身に受けた。
足を払われ、膝が地面につく。
膝がつくと腹部や背中をこれでもかと蹴られた。
「ッ……透くんッ………!!」
これは記憶なのに、助けにいきたい。
今すぐ駆け寄りたい。
どうしてあんな優しい人を傷つけることが出来るの。
どうして無抵抗の人をあんなに殴って蹴ることが出来るの?
悔しさと悲しみと攻撃しているあの男達への憎悪。
感情が高まる。
それはほぼ、同時だった。
記憶の映像の中でも、無抵抗だった透に異変が起きた。
「奏多!鎮まるのじゃ!これは記憶でしかない!」
「………………」
太一君の言葉に、今まであったどす黒い感情が幾分なくなった。
ハッとして周りを見ると、全員驚きの表情をしていた。
今、私……何を。
鏡の中では透の周りに風が吹き始めた。
それが徐々に透の周りに集まると共に、男達がうめき声を上げ始めた。
『い、痛い……!』
『頭が……頭がぁ!!』
『やめろ!やめてくれー!』
何が起こっているのかわからない。
ただ、男達は頭を押さえ込んでいた。
透の周りに吹き荒れる風が一層強くなる。
ゆら……と起き上がった透の顔がちょうど真正面に見えた。
「透くん、じゃない……あんな……あんな冷たい顔……」
「奏多さん……」
美朱が傍に来て、そっと私を抱きしめる。
互いに体が震えているのがわかる。
鏡に映る透は手を振りかざす。途端に風が男達にまとわりつく。
頭を押さえ、必死に耐えていた男達の体に、たくさんもの切り傷が刻み込まれた。
これは……美朱にもあった傷と同じだ……。
『うああああああ……!!!!』
叫び声が幾重にも聞こえる。
耳を閉ざしたくなるほどなのに、どうして……
どうしてあなたは冷たい目をしてみているの……
とうとう男達はその場に倒れ込んだ。
血がたくさん流れている。
生きているのか、息をしていないのかはわからない。
でも、倒れてようやく風が止んだ。
それと同時に透の意識も途絶え、映像が消えた。