ふしぎロマンス7~黄龍の依り代~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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目を開けると神々しいほどの明るさに目を細めた。
ここは……。
あたりを見回して察する。
ほら、私の体は下着すら身につけていない。
眠っている間にあの子達が治した証。
「別に怪我なんてしてなかったのに……」
「体中に打ち身を食らったのは怪我に入らないのか?」
ん!?
「話を聞きに来た」
…………顔を上げられない。
何この声……!
こ、怖い……怖すぎる!!!
「奏多」
名前を呼ばれて、そーっとシーツをたぐり寄せる。
きっと目の前には恐ろしい形相をした井宿が立っているのだろう。
あの時の怒り方は……本気だった。
「あの……美朱と鬼宿は……」
「別の部屋で娘娘が治療している。それも知ってるんじゃないのか」
……ハイ。知ってました。
ゴメンナサイ……。
「そう怒りを露わにしてはそやつも話すに話せまい。井宿、面をつけておれ」
突如、聞こえてきた声に顔を上げる。
井宿と私の間に立つ、太一君の姿があった。
「…………!」
こちらの顔も怖い………!
「今、失礼極まりない事を考えておったな」
「………スミマセン」
「まぁ、よい。井宿、面はつけたな」
後ろを振り返ることなく言う太一君の言葉に、やっと私は井宿を見た。
険しない顔、に見えるものの、糸目でつるんとした顔では神妙な顔をしてるくらいにしか思えなかった。
「だ。取り乱してすみませんでしたのだ」
「井宿……」
井宿を見ると、ふい、と視線をそらしながら私にも短く「すまない」と言った。
すまない、と思うのは私の方なのに。
井宿は、あの時私達を助けてくれたのだから。
「倶東国で何が起きたのかは見ておった。だが、確認することがある」
「確認?」
「奏多、と言ったな」
「はい」
「背中を見せよ」
……はい?
「え、今ここで?」
「そうじゃ」
え、井宿いますけど?
「そなたはこやつを男と思ってたのか」
「え!?違うの!?」
井宿、女の子だったとか!?
「ハァ……そんなわけないのだ」
だよねー。
私の思考はダダ漏れだったようだ。
言葉にするまでもなく、会話が続けられる。
でも、そんなあからさまにため息つかなくてもいいじゃないか。
「ただ後ろを向けば良い。心宿が見たものを見るだけじゃ」
「何で知ってるの!?」
「……だからこの方はこの世界の全てを知っているのだ」
井宿の声がとても冷たい。
機嫌悪い時もあるんだ……。
「……まぁ、背中くらいなら……」
「…………」
拒否権など到底無いに等しいだろう。
2人の視線を受けながら、くるりと後ろを向いてシーツを下ろした。
背中に下ろしてあった髪を前に持ってくる。
「これか……」
「?」
確か、あの時心宿も“紋様”がどうとか言ってた。
私も見ようと体を捻る。
「う……もうちょいなのに、見えない……」
「お主、体が硬いのぉ」
自覚してたことを………。
「“黄龍の依り代”が現れるとは……わしはもう少し調べることがある。服は娘娘が直しているところだ。暫し待つがいい」
え、行っちゃうの?
服なんて私でも直せるのに。
あっという間にまた井宿と2人になった。
いたたまれなくなり、とりあえずシーツを巻こうと、手を動かした時だった。
ッ………
私の肌よりも冷たい何かが背中に触れた。
それが井宿の指だとわかるのに時間はかからなかった。
「ち、井宿!?」
振り向こうとすれば、もう片方の手が肩に触れてくる。
まるで動くな、と言わんばかりだ。
「井宿?」
「…………」
無言だった。
何を考えているのだろう。
背中の紋様とやらを見てるのだろうか。
「私でもどんなものが付いてるのかわからないのに、あんまり見ないでくれる?」
「君は背中くらいなら誰にでも見せることが出来るのだ?」
「え?」
「君は……オイラに触られてもなんとも思わないのだ」
「ええ??井宿、どうし……」
「心宿に触れられていた時の君は、真っ赤になっていたと言うのに……」
「井宿も見たの!?」
井宿の顔を盗み見ると、ちょうど頷いていた。
あ、アレを見られたのかー!!
「君は馬鹿なのだ……あんな手に引っかかって……今だって……」
「井宿?」
「警戒心が無さすぎなのだ」
後ろから井宿は自分の額を左肩にそっと乗せた。
わずかに横に顔を向けると、ふわっと井宿の前髪が鼻先をかすめた。
「ふっ……ふぇっくしょん!!」
「!?」
「ふっ…えっくしょん!!」
「奏多……?」
「あーもう、井宿の前髪で鼻がムズムズした」
「………………」
無言で私から離れる。
そばにあったシーツに手をかけると、バッと私にかけた。
「服を持ってくるのだ」
頭からシーツを被り、ようやくそこから頭を出すと、すでに井宿は部屋から出ていった後だった。