ふしぎロマンス6~再開~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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美朱は鬼宿の気持ちを知ってどんな思いをしてるのだろう。
私があんな若い子を……傷つけたんだ。
「本当に行くのだ?」
「…………」
力を使い、鬼宿の家族に別れを告げた後、私はその場に倒れた。
足に力が入らない。頭を動かすのも辛いけれど、井宿に向かって小さく頷いた。
「……ハァ……しっかり掴まってるのだ。移動するのだ」
「…………」
座り込んだ状態からどうにか手を持ち上げ、井宿を掴もうとする。
ああ、掴みたいのに……その手が震える。
ダメだ。情けない。
ぐ、と唇を強く噛んだ。
「君はそのままで。オイラが掴んでおくのだ」
呆れられた声がすると、座っているところに井宿も膝をつく。
手が首の後ろと腰に回されたかと思うと、ぐっと引き寄せられた。
力の入らない頭が、井宿の鎖骨にコテンと倒れる。
「苦しいだろうけれど……少しだけ、我慢するのだ」
我慢……何を?
この体勢を?
まさか。
こんなに優しく包み込まれているのに?
我慢どころか……眠ってしまいそうだ。
ふと目を開けると先程よりも幾分か体に力が入った。
回復しているようだ。
「……井宿?……わっ……!」
周りを見ると、ここは木の上だ。
咄嗟に近くのものを掴む。
「大丈夫なのだ。落とさないようにしてるのだ」
掴んだのは井宿の服だった。
言葉の意味が腰に回された腕を感じ取ることでわかった。コクコクと頷いた。
「あそこに美朱ちゃんが入っていったのだ」
「え……?」
見ると家を指さしていた。
「今夜はここで厄介になって、明日、倶東国に入るのだろう」
「倶東国って、遠いのね」
「だからオイラは言ったのだ。そんなひょいひょい行けるところではない、と」
「あ……あはは。ごめん」
あれは美朱が現代に戻った時に言ったことだ。
唯を助けたいから倶東国へ瞬間移動して、と井宿に頼んだ。
「井宿、今夜はずっとここで見張るの?」
「オイラはそのつもりだったのだ。でも君は……」
「私もここにいるわ。今から泊まれるところ探すのも大変でしょ」
「そう言うと思ったのだ……」
すると井宿はその場に立ち上がった。
なんとも軽い身のこなし……。恨めしくなるほどだ。
「木の上で一晩過ごす必要も無いのだ。降りるのだ」
「降りる?」
どーやってよ……。
下を見ると、結構な高さだ。
飛び降りろ、と?私に?
「ここに乗せた以上、オイラが責任持って降ろすのだ。失礼するのだ」
「へ?」
井宿が身を屈めたかと思うと、私の背中と太ももの裏に手を差し入れた。
ぬっ……!
こ、これは……!!お姫様抱っ……
思う間もなく、横抱きにされる。
「ひぇっ……」
「口を閉じておくのだ」
そう言うと、スッと真下に飛び降りた。
し、心臓にわるっ……!!
着地の衝撃すごいだろうと思ったら、そんなことはなかった。
なんですか。身のこなしがすごい人は浮くことが出来るんですか。重力なんてないのかしら?
「もう離れてもらっても構わないのだ」
「え?あっ!」
思わずぎゅっと首にしがみついていたらしい。
声に反応して、パッと手を放した。
「奏多、これにくるまって休むといいのだ」
「袈裟に?私、外套羽織ってきてるわよ」
「夜の外をナメめてるのだ……」
「え……」
井宿曰く、体を温められるならそれに越したことはないという。
それはわからなくもないけれど、今その袈裟を借りてしまったら……あなたはどうなるの……?
「いらないわ」
「……あとで凍えてもオイラは知らないのだ」
「平気よ」
と、相手を気遣って言っては見たものの……限界はすぐに訪れる。
眠い。寝たい。
それなのに、体がカタカタ震えて寝られやしない。
井宿を見れば木の幹部分にもたれ掛かって、袈裟を体にかけ目を閉じている。
なぜだ。
何故あの1枚で寝れる?
それともあれは……そんなに保温効果の高い袈裟だったのだろうか。
いや、あれは絶対痩せ我慢だ!
井宿だって寒いはず!きっとそうよ!!
貸してくれるって……言ってた。ということは…。いい、んだよね……?
そっと自分の外套を井宿に掛けた。
袈裟の上から。
よかった。気づかずに寝ている。
外套を掛けても井宿は身じろぐことなく目を閉じている。
これなら……と、井宿の隣にそっと近寄り、外套と袈裟を少しだけ持ち上げた。