ふしぎロマンス6~再開~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「ほら、あんたも少し休んでなさい。美朱はきっと鬼宿が連れてくるわよ」
「うん………」
少し早く気づいたから、すぐに見つかっていればいいけれど……。
「頬の手当もしなきゃ。あんた、自分の傷は治せないわけ?」
「両手で包み込んで、額か唇がつくところなら……」
「まー!それじゃ足くらいしか治せないじゃない!」
「だね。でも大丈夫だよ。もう痛くないし」
「そう?」
「……それでも腫れてきてるのだ」
今まで黙っていた井宿が口を開く。
この声は……怒ってる声だ。
「そーいえば、奏多の面倒見てた七星って井宿のこと?」
「うん。そうだよ」
「へー!そう?あんただったの」
「だ……」
柳宿に見られて、井宿がたじろぐ。
「でも変なしゃべり方ねー。しかもその顔。変なヤツ」
「……オカマよりマトモだと思うのだ」
「なっ……!!」
「あ、井宿。それ言っちゃうんだ」
「何よ!なんでわかるわけェ!?」
「見ればわかるのだ」
「うそーー!」
あ、めちゃくちゃ落ち込んでる。
「……今、君は男物の服を着てるのだ」
「あ。オホホホホ!やだ、ほんとだわー」
じゃー、バレても仕方が無いわね、と柳宿は機嫌良く笑った。
こういう所、すごく可愛いと思う。
「付き合ってられないのだ。奏多、少し外に出るのだ」
「うん?いいけど」
今も喜んでる柳宿をそっとしつつ、外に出た。
少し家から離れたところで井宿が振り向く。
「オイラ、聞いてないのだ……」
「え?何を?」
「口をつけて再生すること。あと……年上なこと」
「……!?」
なんと!?
なんで井宿も知っているの!?
年の話は宮殿での出来事なのに!
「森にはいたし、宮殿に入り込むくらい出来るのだ」
……恐るべし!
井宿の凄さが更に凄く感じる。
「井宿は……年上だと気にするの?」
「別にいくつでも構わないのだ。ただ……こんな頼りない年上に会ったのも初めてなのだ」
「た、頼りない……!?」
「無茶ばかりする無鉄砲な所をいい加減なおしてほしいのだ」
「なんだとー!井宿の服も綺麗に再生してあげようと思ったけど、やめた!」
「だっ!?」
「力使うくらいなら、鬼宿のお父さんの具合治すわ」
プイッとそっぽを向いた時だった。
暗闇の向こうから、鬼宿が走ってやってきた。
「鬼宿……?」
「奏多……」
外にいる私たちに目を止めると、鬼宿は井宿を睨みつけながら馬のところへ行った。
「え……鬼宿!何してるの?」
「……美朱が腹減ったらしくて動けねェって言うんだ。乗ってきた馬に菓子があるからって……どこだ?」
その言葉を聞いて、血の気が引いた。
「た、鬼宿……」
「それは君を遠ざける口実なのだ」
「なっ……まさか、美朱が?」
「鬼宿!どうしておぶってでも連れて帰らなかったの!?」
「っ……」
鬼宿が口ごもる。
「美朱に……知られたんだ」
「え?何を?」
「オレが、お前を好きだってこと」
う、そ……最悪な展開じゃない。
「鬼宿!?なんで!!」
「あいつを止めようとしたら……!言われたんだ……“好きでもないなら優しくしないで”って……」
「…………」
「なんも言えずにいたら……」
美朱は“やっぱり奏多さんが好きなんだ”と言ったらしい。
こんなことって……あっちゃいけない!!
「鬼宿!早く追いかけなさい!あんた、何してるの!?」
「奏多……」
「あの子、1人で倶東国に行ってるのよ!あなたは朱雀七星!巫女を護るんでしょ!」
「ッ……!」
「美朱はあなたに会いに戻ってきた。自分の世界から、ここへ!!それだけは忘れないで!悲しませないで」
私が言えた義理ではない。私が2人の愛をこじらせてしまったのだから。
鬼宿は意を決したかのようにその場から離れた。
「奏多。どうする気なのだ?」
「今からおじさんの体を治す。出来るだけ、全部」
「奏多が倒れてしまうのだ!」
「それでも……!!私は休めば治る」
時間が無い。
明日まで待てそうにない。
家の中に入る前、もう一度井宿を見る。
「おじさんを治したら……私を連れて美朱ちゃんを追って」
「…………」
「たとえ起き上がれなくても……運んで。お願い」
どうかお願い。
家の中に入る途中、後ろで小さく「だ……」と井宿の渋々承諾する声が聞こえた。