ふしぎロマンス5~命の重さ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「きつねさん!?」
美朱がもう既に会っている井宿に向かって声を出す。
ほら、やっぱり来てくれた。
井宿は念じると、スルリと糸は解けた。
柳宿でもどうにも出来なかったのを一瞬だった……。
男はクナイを井宿に向かって何本も放つ。
放ったクナイは井宿の服を掠めていった。無数に切られ、右膝も見える。
“井”という文字がくっきりと浮かんでいた。
男はやはり倶東国の刺客だった。
糸から開放された柳宿が取り押さえる。
あ、これ……
「あぶない!」
思わず刺客を付き飛ばそうと試みるものの、いち早く井宿から引き寄せられる。
目の前で……この男の命が終わった。
見殺しには出来ないと思った。子供たちに酷いことをした人でも……。
「……無茶しないでほしいのだ。あのまま出ていけば君に当たっているのだ」
井宿が耳元で微かに呟いた。
「あんた、朱雀七星だったの!」
「オイラ井宿と言うのだ。きつねさんではないのだ」
井宿が柳宿と美朱に話をしている間、横になってもらった鬼宿のお父さんのそばに行った。
「あの……少し触れてもいいですか?」
「わしに、かな……?」
「はい」
「奏多……お前、どうする気だよ」
さっき、結蓮ちゃんには出来たんだもの。
きっと……できる。
「苦しいのはどこですか?」
聞くと、胸あたりを手でさすっている。
「ここですね」
そっと手で触れれば、そこに唇をつけた。
途端にぐらりと眩暈がする。
唇をつけてすぐにこうなるなんて、今まではなかった。
一旦離し、顔色を伺う。
「親父……?」
「ふしぎだ。……息苦しさがなくなった」
「本当か!?奏多!お前、すげェな!」
よかった。
もう一度、と思っていると、肩に手を置かれた。
見上げると、井宿が立っていた。
「もうダメなのだ」
「……あと少し」
「ふらついてたのだ」
「奏多!お前、無理して……!」
見透かされている。
でも何故一度だけでふらついたのだろう。それだけ……この人の病は重いのだろうか。
「鬼宿のお父さん。また明日、楽にして差し上げますね」
「あ、ああ。すまないね……」
立ち上がろうとすると、井宿に腕をつかまれる。
手を貸してくれているのはわかるけれど、突っぱねてしまった。
「平気だから」
「…………」
「おい、奏多……」
歩き出すと鬼宿がついてきた。
「その頬……結蓮を庇ってくれたんだってな」
「柳宿から聞いたの?」
「あぁ。あと……結蓮の熱も」
「うん。私、すごいでしょ?」
「すごい、けど……!お前が無理して何になるんだよ!」
鬼宿の声に視線が集まる。でもその中に、美朱の視線はなかった。
「柳宿……美朱ちゃんは?」
「美朱なら外へ行ったわよ」
「外?大変!鬼宿!」
「何だ?」
「今すぐ美朱ちゃんを追って!」
「奏多、どーしたのよ!一体!」
「美朱ちゃんは、唯ちゃんを探しに行ったのよ!」
知ってるでしょ!?と言うと、鬼宿は思い出したようだ。
「唯……?初めて美朱と会ったときに美朱といた……?」
「そう!その子!早く追いかけて!見失うわよ!!」
急き立てると鬼宿は家から出ていった。
美朱は倶東国に行こうとするはず。確か、ものすごく傷つくはずだ。
どうにか回避してあげたい。
だけど……
私が思っているよりももっと……
複雑なことになっていた。