ふしぎロマンス5~命の重さ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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……くっ、走りたいのに……足が……。
年には勝てない体力のなさ……。
現代人にこんな森の中を走れというのは無理がある。
あぁ、でもまさかこんな所で翼宿に出会うとは。
「奏多!」
馬の蹄の音とともに、名前を呼ばれた。
「……柳宿?」
「やっぱりこっちに向かって来てたのね」
私の側まで来ると、サッと馬から降りる。
「何、あんた。汗だくじゃないの。走ったの?」
「ん……ちょっとね。柳宿、迎えに来てくれたの?」
「そーよ。あんたを置いてきてるの知ってたし。でも、どこに居たのよ。たまちゃんの家に美朱たちいるわよ」
「うん、そっか。ありがとう」
ほんと、ありがとう。
こうして馬に乗れるって……馬が運んでくれるって幸せ。
それにしても……。
柳宿と翼宿が鉢合わせしなくてよかった……!
柳宿の背中にしがみついて、大きく息を吐いた。
「あら?美朱も鬼宿もいないわね」
柳宿が家の中を見ると、男の子が美朱は水を汲みに、そして鬼宿はその後急いで出ていったと教えてくれた。
この子……鬼宿の弟くんだ。
見ると家族全員いる。
鬼宿のお父さん。それから弟くん、妹ちゃん。
「この子、熱があるのよ」
「柳宿、私に見せてもらっていい?」
「え、ええ」
柳宿に場所を譲ってもらう前に、横になっている鬼宿のお父さんに会釈する。
「あの巫女様のお連れさんかな?」
「はい。奏多と言います」
もう一度お辞儀をして、じっとこちらを見ている女の子のそばに行く。
「可愛い子。お名前は、言える……?」
「ゆい、れん……」
「そう。名前も可愛いわね」
ベッド脇に膝をついて目線を合わせる。
結蓮の頬を両手で触れると、熱くなった額に唇をつけた。
暫くして、そっと顔を離すと、結蓮はにこりと笑っていた。
「どうかな?」
「お姉ちゃん……すごくらくになったよ」
ああ、よかった。
皮膚だけじゃない。
ちゃんと、体も中も治せるんだ。
それならお父さんも、と思った瞬間に、どこからか勢いよく家の中に無数に入ってくる。
糸?と思った時には体が浮かび上がっていた。
「ぎゃー!なにこれー!!」
「柳宿!」
気づけばこの家にいる全員がつるし上げられていた。
逆さ吊りにされて、頭に血が昇り始める。
「うそでしょ……ちょっと!足!足見えるんですけど!!」
スッと現れた全身黒づくめの男に叫ぶ。
なんてことをしてくれる!もう生足なんて晒せる年でもないんだぞ!!
「……フ」
しかも、こいつ!確信犯だ!!!
「貴様らには人質になってもらう」
その声に近くでは子供たちが泣き始めた。
それもそうだ。
こんな……こんな糸に……
糸……に…………
なんかこの糸……気持ち悪いな。
ぞわぞわするぅ~!!
「奏多!?どうしたのよ!なんで泣いてるわけ!?」
「違う!これは生理現象!気持ち悪くて出てるの!」
体中にまとわりつく糸は、家中にも張り巡らされていて、それがいわゆるクモの巣に見えて仕方が無い。
こういっちゃなんだが……大嫌いなのだ。
「い、今までで1番エグイ!!」
この世界に来て、何が嫌だったかといえば、自然すぎることだった。
森に入れば嫌でも目に入る。必死に耐えていたというのに……!
この男、許すまじ!!
「あたしの力でも外れないわ……!」
「兄ちゃーん!!」
「兄ちゃんー!!!」
「ちっ、黙ってろ!」
男が動いた。
私の隣にいる結蓮を殴ろうとした。
「子供に……何してんのよ!!」
体を捻った反動で結蓮の前に割って入った。
男の平手が私の頬を叩く。
「奏多!!」
「い、ったぁ……」
……絶対、さらに許すまじ!!!
キッと睨むと同時に誰かが走ってくる音がした。
「親父……!」
「兄ちゃーん!!!」
鬼宿だった。後ろには美朱もいる。
「美朱!鬼宿!来ちゃダメよ!」
「……奏多……!」
鬼宿の目が私を捉えた。
逆さまになっていた私を。
「こんのやろー!!!何してやがる!!」
男に突進したところで、逆に男が糸を放つ。
……うわ、出し方も気持ち悪い。
鬼宿の体にも絡まり、身動きが取れなくなった。
……でも、大丈夫。きっと……きっと……!
「その者達を放すのだ」
美朱の前に、私が待ち望んでいた人がスッと現れた。