ふしぎロマンス5~命の重さ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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全員がこの場からうごいたとわかると、私も鬼宿の家に向かうために歩き出した。
しばらく行ったところで、ピタ……と足を止めた。
「………どっちかな?」
目の前に二手に分かれた分かれ道。
なんと、ここでこれか!?そうよね!そうなるよね!道だもの!
鬼宿の家への道のりなんて、知るわけがない。
これは、どうしたものか、と暫し考え込む。
集中していたからか、声がするのを聞き取った。
人がいるなら、道を聞けるだろうか。なんて説明すればたどり着けるのかもわからないけれど。
それでも誰か手を貸してくれるかもしれない。
そう思って声のする方へ歩き出した。
「ええ加減にせェよ、お前ら!」
…………え゙。
人影が見えてきたところで、足が止まる。
前方に見える……あの、オレンジの頭は……。
な、なんだってこんなとこに……!
あれは翼宿じゃないか!
こんな所で会うものなのか?いるものなのか?
こっちへ来たの間違いだったかな!?
「さっさと出すもん出せや!」
しかも山賊のお仕事中ですか!?
あれ、でも翼宿一人のように見える。どうして……?山賊さんってつるむんじゃないの?
勝手なイメージを持ち、そっと固唾を飲んで見守ると相手は数人。
舌打ちとともにドンッと、手荷物を置いて逃げていった。
おー、翼宿の威嚇だけで?すごい。
哀れ、相手の人たち。
「ほれ、持っていき」
「す、すんません……」
見ると、翼宿の後にうずくまっているご老人がいた。
逃げた相手が落としていった荷物を、翼宿はおじいさんに手渡しその場から立たせた。
既に震え上がっているおじいさんは、お辞儀を何度もすると、大事そうに荷物を抱えて走っていった。
え、今のは……もしかして。
「人助けー!?翼宿が!?」
思わず声を張ると、ものすごい形相でこちらを睨みつけられた。
しかも……ダダッと駆け寄ってくる。
し、しまったぁ~……!
後悔してももう遅い。
強い力で肩を押さえつけられた。
「お前……誰や!!さっきのヤツらの仲間か!!」
ひぇ……迫力が~……
体も硬直してしまって、声も出ない。
「誰や言うてんねん!!」
はい、もう馬鹿なんだと思います。
もうどうして自分から首突っ込むんだろう~。
自分でも泣けてくる。
なんて言おう。なんて答えようか。
なんとか昔の知人とか思われないだろうか。
なんだっけ。確か別名とかあったような。名前……あ、少し思い出せそう。
ーーーよくいらっしゃいましたお入りくださいありがとう。
記憶にある会話を思い出す。
誰だっけ。
その時なんか、名前を言ってたじゃないか。
ああ!思い出した。
「黙っとらんで何とか言えや!」
「こーじ!」
「!」
あ。当たった?
そっか、翼宿の別名はこーじって名前だっけ?
何だかしっくり来ない感じもするけれど、何かと質問攻めだった翼宿が、今度は言葉をなくした。
これで、なんとかなりそうだ。……と、思ったのに。
「な、なんや……お前、功児の女か……?」
え?
こーじの女……?
だれ!?
「なんやねん!それやったら早う言わんかい!」
「え……」
肩に置かれた手は、「すまん」と言って退けてくれた。
「何でこないな所におんねん。功児はどないしたんや?」
「あー……そのですね、道に迷いまして……」
「はぐれたんか!?」
「あは、えーと実は……」
「山に戻るんやろ?まだ用があったんやけど……近くまでやったら連れてったるで」
「え!?だ、大丈夫です!」
「ええねんて。そーかぁ、功児にも女が出来たかぁ。全然会ってへんかったんや。女の1人や2人、できてもおかしないな」
……どうしよ。
ものすごい勘違いしてる……。いや、させてる。
「ほな、行くで」
「いや、ちょっと待っ……」
「何しとんねん!!」
こ、声の重圧~……!!
翼宿の声の張りに思わず萎縮してしまう。それでもこの状況はまずい。
「待ってください!翼宿さん!!」
「……それ止めろや。どうせ功児がペロッと話したんやろけど、オレは幻狼や」
げんろう……
そうだよ!!幻狼だよ!!
しまった、言われてみれば、この名前だった……!
あぁ……私ってば、アホ……。
ちゃんと覚えておきなさいよ~。
「げ、幻狼さん」
「なんやねん。その気の抜けるような呼び方は」
「え……」
「功児の女なら、オレの仲間やないか!“幻狼”でええ」
うーわー……。
そうだった。翼宿って仲間思いだわ。
優しいのよ。うう。勘違いさせてごめんなさい。
「あ、あの……じゃあ、幻狼」
「なんや?」
「この先に村がある、よね……?」
「ああ。あるな。さっきのオッサンもそこの村のモンや」
「じゃ、じゃあその村にはあの道からだと、どっちの道から行くの?」
「それなら右……って、おい!どこ行くねん!」
「ごめんなさい!ありがとう!」
右、と聞くやいなや走り出した。思いっきり。
追いかけてくるかも、と思ったけれど、不意をつかれたからか、翼宿は呆然と立ちすくんだままだった。