ふしぎロマンス5~命の重さ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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全然、わかっていなかった。
思い返せば、このあたりのことはサラッと読んでいたように思う。
読者だった私はあの時はまだ学生で、この時のことも鬼宿が美朱と会って、思いが通じて……キツネ顔の変な人が出てきた。
そう思うくらいだった。
美朱を狙って、柳宿たちがいた所に矢が飛んできた事実なんて、ほぼ記憶になかった。
それくらい、描かれていたのは些細な一コマで終わっていた。
でも今はどうだ。
目の前で起きたこと……これが現実。
血を流して……もう、息をしてくれない。
「柳宿……!奏多!?お前、どこにいて……!何があった!?」
呆然と立ちすくむ中、鬼宿の声と美朱の悲鳴が聞こえた。
「……見ての通りよ!美朱のいた方に向けて矢が飛んできたのよ!」
柳宿と一緒にいたところに、鬼宿と美朱が近寄ってくる。
「奏多……お前、無事だったのか」
「…………」
「奏多?」
鬼宿が顔をのぞき込んでくる。
やめて。今は顔をみないで。自己嫌悪で吐き気がするの。
「あたしが……狙われてるって……あの人言ったの」
美朱がガタガタ震えながら呟いた。
「あの人達……あたしのかわりに……!?」
「違う」
思わず声が出た。3人が私を見る。
「救えたはずなのに……私は知ってたはず。私が」
もっと警戒していれば……!!
再び沸き起こる感情に、顔を両手で覆った。
泣いてはいけない。悲しいのは誰だ。村で待っている、この人達の家族だ。
「奏多……」
鬼宿の手が肩に触れた。
「さ、早く村に行きましょう。知らせてあげなくちゃ」
「そうだな。奏多、歩けるか?」
「……平気。美朱ちゃんについててあげて」
「あの……あなたが、奏多さん?」
愛くるしい顔を向けてこちらを見てくる。
「うん、そうよ。はじめまして、美朱ちゃん」
村に戻り、今、私たちの前には美味しそうな食べ物が並んでいる。
「美朱……あんなに震えてた割にはよく食べるわね」
「だって、色んな事あってお腹すいちゃったんだもん」
「この神経の図太さを奏多にもわけられたらねぇ……」
柳宿がチラリと見てくる。
「それにしてもさ、さっきあたし達を護ってくれた人、誰だったのかしら……」
ギクリ、とするときには鬼宿がすでに身を乗り出していた。
「護ってくれた人?」
「そーなのよ。奏多があたしをつき倒して庇ってくれただけでもビックリしたって言うのに……」
「奏多さん、すごいー!」
「さらに誰かが覆いかぶさってくれたのよねー」
「オレ達が来た時にはいなかったじゃねェか」
「あたしもすぐ探したんだけど、いなかったわ。奏多、知ってる?」
視線が集まる。
鬼宿に至っては、痛いくらいの視線だ。
「……柳宿。そいつ変な喋り方だったか?」
「喋り方?……そうねぇ……どーだったかしら」
記憶が曖昧なのか、思い出せないという。
大丈夫よ。きっともう少しで現れてくれる。あなたたちの仲間なのだから。
「ま、オレが護ってやるから、安心しな!な?美朱」
鬼宿に言われて、美朱の顔が紅潮する。
なのに、鬼宿はその顔には気づかず、村人に呼ばれて外へ出ていった。
「そうだ、美朱ちゃん」
「あ、はい」
「今夜、一緒に寝ない?」
私の知る鬼宿と、今ここにいる鬼宿が違うというなら……私が導かなくてはいけないのだろうか。