ふしぎロマンス5~命の重さ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「……鬼宿……」
「……美朱」
2人が見つめ合う。美朱が鬼宿に抱きついた。
うん、そう。それでいい。
気づくと隣に井宿が立っていた。
「いいのだ?」
「何が?」
「昨日、君は鬼宿クンに言い寄られていたのだ」
「え、知ってるの?やっぱり……。見てたんなら悪趣味だわ」
「だ……すまないのだ……」
情けない声が聞こえる。
その声も懐かしさが込み上げる。
「いいの。そばにいてくれただけでしょ?」
「…………」
「ありがとう」
井宿に笑いかける。
鬼宿もわかってくれただろう。
今もほら、美朱をぎゅって……
ぎゅって……
あ、あれ……?
ぎゅっと……しようよ。
見ると抱きしめているのは美朱の方で、鬼宿の体は硬直していた。
……想像してたのと違う。
「……逢いたかった……!」
「…………」
どうも雰囲気が……おかしい気がする。
そっと離れてから、鬼宿はたどたどしく聞いた。
「元気そうじゃねェか……お袋さんには会ってきたか?」
「……うん。仲直りは……ちょっと無理だったけど」
あ、こんな会話あったんだ。
「……あんたら、まわりの大勢シカトして何ムード作ってンのよ!」
柳宿だ。
美朱をここまで連れてきた柳宿が呆れた顔で2人を見ている。
「べっ、べつにそんなんじゃっ!はっ……柳宿!奏多、見なかったか!?」
「奏多?見てないわよ。えっ、こんな森の中に連れてきてンじゃないでしょーね!?」
あ、まずい。心配かけてる。
すぐにその場から出ていこうとした。
だけどそれは、井宿の手が肩に置かれたことで止められる。
「待つのだ」
その言葉が聞こえた直後、前方からもざわざわする声が聞こえた。
「かっ、風もないのに火が……」
「誰が消したんだ!?落ちつけ!!誰か村に戻って火を……」
不安がる村人に向かって鬼宿が叫んでいる。
「奏多はここにいるのだ」
「井宿?」
井宿は私にそう呟くとスッと消えた。
今度は間違いなく、美朱が闇に引きずり込まれる。
「美朱!!」
鬼宿が美朱までもいなくなった方へと追いかける。
ちゃんと覚えてる通り……。
それなら、その後はどうなった?
思い出す間もなく、その場から飛び出した。
「柳宿!!」
「え?奏多!あんた、どこ行ってたのよ!今、美朱が……」
「美朱ちゃんなら大丈夫!早く」
こっちへ、と言おうとした時に、襲いかかる嫌な気配。このビリビリ感……
「柳宿!しゃがんで!」
ドンッと押し倒してその場に覆いかぶさった。
「ちょっ……奏多!?」
ヒュン、ヒュンッと私たちの真上を風を切る音がする。
それと共に、ドスッと何かに当たり出す音。
「……ッ……!!!」
次から次へと私と柳宿の周りで叫び声とうめき声が聞こえる。
ヤメテ……!!
思わず顔を上げそうになると、背中に重みがかかる。
「じっとしてるのだ!」
井宿だ。
柳宿を庇う私の体を覆っている。
「一体、何なのよっ!」
わけがわからないともがき出す柳宿に目をやる。
「待って、柳宿ッ……今はダメっ……」
無数の矢がようやく止まる。
声も……もう何も聞こえない。この状況がどういう事なのか、振り返らなくても理解できる。
「た、助けなきゃっ……」
早く……早く、傷を塞がなきゃ。
力が抜けてしまいそうな体を、ぐ……と意識的に力を入れて起き上がる。
目の前に横たわる人。この人たちは……ダレ……?知らない人?敵?
……いいえ。
先程まで一緒にいた、昼間には楽しく笑いあっていた……村の人たち。
「ぁ………………ッ」
寒くなどないのに、体中が震える。
「奏多……」
柳宿がそっと後ろから手を回し目を隠す。
「見ちゃダメ。あんたは……見なくていいの」
その少しだけ冷たい手を、熱い涙が濡らす。
私は……
命の重さが……
身をもって体験した。