ふしぎロマンス1~本の中へ~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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あたりが暗闇に染まる時、私、奏多はバス停に座っていた。
いつものようにスマホを操作する。
バスを待つ間の必須アイテムだ。
(あ……懐かしい)
電子コミックサイトを見ていくと、久しぶりに見る文字に指が止まる。
ーーーふしぎ遊戯
(これ、学生の時に読んだ……)
思わず釘付けになって画面を見る。
学生時代、どっぷりハマった記憶が鮮明に思い出された。
友達が貸してくれて、内容があまりに自分にとってどストライクで…その後、本を全部自分で買った…。
サイトの中をスクロールしていく。
今、あの本はどこにあっただろうか。
実家から持ってきただろうか。
バスが来るまで、ちょっとだけこのサイトで読もうか。
…そう思い始めた頃だった。
「ーー奏多?」
スマホに集中していて気づかなかった。
呼ばれて振り返ると…これまた久しぶりと言う感覚が押し寄せる。
「……えっ、透くん?」
「やっぱり!そうじゃないかと思ったんだ」
声をかけてきたのは、高校、それから部活も同じだった透くんだった。
スーツの上着を腕にかけ、暗闇でもなんだか輝いて見えた。
まだ…名前も覚えててくれたんだ…。
心臓がトクン…と鳴った。
「仕事帰り?」
「えっ、あ…うん。透くんも?」
「まぁね」
なんてスムーズな会話をしているのだろう。
そうだ。この人はこんな感じだった。
誰からも慕われ、あの頃毎日のように女子からのアプローチに対応していた姿を思い出す。
「いつもバス?」
透くんは隣に座って聞いてくる。
「うん。透くんもここから乗るの?」
そんなわけがない。このバスを使うのはもう2年にはなろうとしているけれど、今まで一度たりともあったことはない。
だけど…会話を続けなくてはという思いから問いかけていた。
「いや、俺は地下鉄」
「え、そうなの?ここからまだ少しあるよ。時間大丈夫?」
「平気だよ。奏多が乗るバスが来るまでいてもいい?」
「へ?」
「ここ暗いし、危ないから…ね?」
くぁっ……
ま、まぶしい……!
その笑顔が……暗いというのに眩しい……!
そうだった。この人は素で女子を悩殺する力を持ってるんだった。
そしてその力に……学生時代、私も虜になってた。
それは自分だけが知る、秘めた想いだったけれども。
「ありがとう……ごめんね?」
「いいよ。奏多は変わってないね。10年も経つのに」
「あ、そっか。もう10年になるんだ」
高校を卒業して以来と思うと、ほんとに自分でも驚いた。
互いに目と目が合う。透くんの向こうにバスの光が見えた。
あぁ、この時間も終わりか、と腰を上げる。
「透くん、バス来たみたい」
「ほんとだ。あれに乗る?」
「うん」
正直、名残惜しい……。
最後に顔をもう一度ちゃんと見ておこうと思った。
振り返ってみると、ちょうど彼も立ち上がっているところだった。
グラッ……
「ーーーっ!?」
ふいに足元が不安定になる。
足を踏ん張っても立っていられない。
あ、地震だ、と思う時にはものすごい揺れに変わっていた。
「奏多っ!」
ついに立ってられず、彼はしゃがみこむ私を抱きしめるように包み込む。
それと同時に突風が吹き荒れる。
「透くんっ……!これ……なにっ!?」
「しっかり捕まって!何か飛んでくるかも!」
「うん……!」
言われるがままに私も彼にしがみつく。
今もなお、揺れて……ものすごい風。
目を開けていられなくて、私はぎゅっと目を閉じたーーー。