ふしぎロマンス4~狂う歯車~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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いつからか、違和感を覚えた。
それは、鬼宿の言動。
「鬼宿……生き生きとしてない?」
「あんたに触発されたんでしょ。負けらんないって、毎日ここの武官に相手してもらってるのよ」
不思議だった。
鬼宿は、美朱がいない今ぼーっとして美朱を待つんじゃなかっただろうか。
「お前、もちっと食えよな」
「充分食べてるけど」
「はァ!?美朱ならここにあるもの全部食べきってるぜ!?」
鬼宿は美朱がいないのに、美朱のことを話していた。しかも、こんなにも至って普通に。
もっとこう……禁句になるものかと思ってた。
思い出すもの全てが、腑に落ちない。
「柳宿。必ず連れてきてね」
思い出すことをやめ、柳宿からもらったお茶を飲み干す。
連れてきて、2人を会わせれば大丈夫だろう。
こんなモヤモヤも、きっとなくなる。
覚えた違和感もなくなるだろう。
「お前、馬にも乗れねェってのに、なんでついてきたんだよ」
翌朝、私は鬼宿と宮殿を出た。
今はカポカポとゆっくり進む馬の上。先程から前に座る鬼宿のボヤキが止まらない。
「お前が乗ってっから早く走れねェじゃん」
「ゔ……。今に慣れるから待ってなさい」
初めての遠出での馬。
もちろん現代とは違う馬の乗り心地にお尻がモゾモゾ動く。
「鬼宿はいいよね。足を乗せるところがあるんだから」
「なぁ、さっきから動くのやめてくんねェ?」
「無理。お尻痛い」
「馬の腹を太ももで挟むんだよ」
「そんな太ももに力はいんないわよ」
「んっとに、筋力ねェな」
はぁ~とため息をつかれる。
くっ……これじゃ足を引っ張ってるだけじゃないか。
かと言って降りて走るにも持久力なんてないし……
太ももの内側を使って馬を挟んでみる。
確かにズレる頻度が減った。
でもこんな足に力を入れっぱなしなんて……無理だ。
「あとよ、もちっと掴まってくれよ」
「え?なんだって?」
「だから!もう少し掴まれって!肩に手だけ置かれちゃ……落馬しちまうぞ!」
「落馬って……この速さじゃ落ちないわよ」
へら、と笑ってるとグッと風圧が体を襲う。
ビックリする間もなく、鬼宿にしがみついた。
「鬼宿!?なにっ……速いって!」
「悪ィけど、このままじゃ日が暮れちまう。飛ばすから掴まってろよ?」
あ、有り得ないっ……!
体を跳ねないようにしようとしても馬が足を動かす度に自然にピョンピョンしてしまう。
どうしても前に座る鬼宿にしがみつく他なかった。
小さな村につき、そろりと馬からすべり降りる。
………お尻が痛い………
コソッとお尻を摩ると、店に入っていた鬼宿が戻ってきた。
「ん?どした?」
「……いいえ、なんでも」
こういう所には気づかないらしい。
ふん。鈍いんだから。
「オレ、この村で用心棒やることになったからよ」
「私も見回り、行くわよ」
「はっ!?なんでだよ!」
「あのねー、ここでじっとしてたらただのお荷物になるじゃない」
「あぶねェだろ」
もう既にお荷物だと言うわけでもなく、本当に心配しているのがわかる。
きっとこういう真っ直ぐな所に、美朱は惚れたのだろう。
「平気よ。それに、誰か怪我した時に治せる人がいたら……どう?」
「お前……ほんとに、治せるのか……?」
「話だけじゃ、信じてなかったの?」
星宿は鬼宿と柳宿に話したはずだ。
でも、そういえば実際に使って見せたことがない。
練習はコソッとしてたけどね。
何かが壊れた、と聞けばそれを拝借して元に戻した。
「どこか、怪我はしてない?」
「え?」
「力、傷にも効くって見せてあげる」
鬼宿の腕を取り腕の状態を見てみる。
やっぱり、擦り傷は所々にある。
「これくらいなら、すぐだよ」
「な、にすんだ……」
「じっとしててね」
両手で包み込んで額をつける。
腕が一瞬、ピクッと引いた。
「痛くないから」
案外、怖がり?と思いつつ、意識を集中させる。
皮膚がスゥ、と綺麗になった。
「ほら、出来た」
「……ぁ………」
マジマジと自分の腕を見る。
時々、「すげ……」と声が漏れた。
「血が出てない怪我なら皮膚を再生できる。血が出る怪我なら、その血を止めることは出来るの」
「怪我の度合いによって、完治させられるってことか」
「そうみたい。まだ……この力が弱いんだ。使いこなせてない気がする」
きっと、もっといい方法があるんじゃないだろうか。
これはずっと、思ってきたことだった。
もっと効率よく……再生できる方法が。
「鬼宿、今から回るんでしょう?」
「あ、あぁ」
「一緒にいくわ。いいでしょう?」
今度は反対しなかった。
鬼宿はすぐに私の弓と矢の入った筒を持ってきてくれた。
鬼宿にも認めてもらえたような気がして嬉しかった。