ふしぎロマンス4~狂う歯車~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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その日、星宿と鬼宿、それから柳宿だけの前で矢を放った。
何度も放てば、それは意のままに的に当たった。
「すげ……」
「そなた……素晴らしい弓使いだな」
「こんな的確に射ることが出来る人、初めて見ましたわ」
「役に立ちますか?」
昨日も言った言葉を投げかける。
3人とも大きくうなずいていた。
「もちろんだ。美朱は武器を持てぬゆえ、戦える者がいると心強い」
「よかった」
仲間になった。
弓の腕前も落ちていなくて、これで彼らを護る事が出来る。
誰も死なせはしない。みんな……悲しませない。
私が、危険から遠ざける。
それなのに……
どこからか
歯車がおかしくなった。
「奏多ー?ちょっとこちらに来なさいなっ」
宮殿に住み始めてしばらく経った頃だった。
夜、星でも見ようと部屋を出たところを柳宿に呼び止められ、近づいてきたかと思うと手首を引っ張られ、どこかに連れていかれる。
「柳宿?どこ行くの?」
「あたしの部屋よ」
「え?なんで?」
「あたしが気づいてないとでも思ったの!?」
なんのこと?と思う間もなく、柳宿はどんどん歩く。
ほどなくして、部屋の前についた。
「入って。お茶でも飲みましょ」
「こんな時間に?」
「そーよ。あんただってこんな時間から部屋を出てたじゃない」
「それは、そうだけど……」
「ま、少しだけ、奏多とゆっくり話したかったのよ」
「柳宿……」
部屋に招き入れてくれた柳宿は上着を脱いだ。
今まで見た中で、随分と身軽な……薄い服。
「なによ」
「それ、寝間着?」
「そーよ。もう寝ようと思ってたんだけど、気になっちゃったから」
「なにを?」
柳宿が結っていた髪も下ろす。
綺麗で緩やかな流れを作る髪に目が行く。
「あんたが、今日も寝ないんじゃないかって」
真剣な目をする柳宿と目が合う。
「ほんとに気づいてないと思った?」
「…………」
「あんたが隠れてうずくまるの、見てたのよ。時々、眩暈もしてたんじゃないの?」
「……よく、ご存知で………」
柳宿は星宿を見ているとばかり思っていたのに……
「これ、飲んで。安眠出来るわよ」
コト……と、近くのテーブルに湯のみが置かれる。
中にはとてもきれいな色をしたお茶が見える。
「いただきます」
「どーぞ」
イスに腰掛け、湯のみに口をつける。
程よく温かく飲みやすい。
「おいしい……」
「ね、どーして眠れないのよ」
「え?」
見ると、柳宿は鏡台に向かって座り、髪を梳いていた。
「……まだ、あの部屋に慣れてなくて」
「それはあたしも思ったわ。でも本当にそれだけ?」
「…………」
「あたしには、話せない?」
櫛を置き、目の前に立つ。
見上げる柳宿は、とても綺麗だった。
「柳宿、あなた綺麗ね」
「は……?なっ、なによ、突然!」
「とっても綺麗。男の子にしておくの、もったいない」
「それはあたしが一番そう思ってるわ」
腕を組み、プイッと横を向く。
まだ……あどけない。
そう。まだ、若い。
「重圧……に負けそうになるから、かな?」
「え?」
少しでも柳宿を安心させたくて、ポツリと呟いた。
柳宿が再び、私に目を向ける。
「これからのことを考えると、とても怖い」
「なに……」
「それだけ、巫女と七星士が超えなくてはいけない試練がたくさんあるの」
「あんたは……それを知ってるのね」
柳宿の体が少しだけ震えている。
「大丈夫。私があなたたちを護るから」
「奏多」
「全ては巫女が戻ってきてから」
「美朱が?」
「そう。だからね、美朱ちゃんが戻ってきたら……連れてきて」
「……あんたどっか行くの?」
「鬼宿がお金を稼いで田舎に帰るって言ってたでしょ?」
「確か明日、ここを出るって言ってたわね」
「うん。私、ついていこうと思う」
「はぁ!?本気なの!?」
柳宿が驚くのもわかる。
鬼宿についていくということは、移動も大変なのだ。
「ここにいなさいよ!」
「ううん。先に行ってる」
「……なに、あとで美朱が行くっていうの?」
「うん。美朱ちゃんは鬼宿に会いたいだろうから。だから連れてきて欲しいの」
でも……何か引っかかる。
本当ならこんなお願いなんてする必要無いはずなのに。
そう思ってしまうのは、この日までの鬼宿の……
様子がおかしかったから。