ふしぎロマンス4~狂う歯車~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「今聞いた話は、柳宿や鬼宿にも聞かせてよいか?」
「あ、はい。いいですよ」
「そうか。……ずいぶん長居してしまったな」
「いえ……聞いてくださってありがとうございました」
星宿が腰を上げる。
私も立ち上がり、拱手を取る。
「奏多」
すると星宿が私の手に、自分の手を重ねた。
「星宿様?」
「そなたはもう、私たちの仲間だ。そう畏まる必要はない」
「で、でも……」
「初めて私の名を呼んだ時は“星宿”と呼んでいたではないか」
「あ……」
肩をすくめて星宿を見上げる。
「ごめんなさい。本当は、ずっと“星宿”って言ってたの」
「うん。それでいい」
星宿は気味悪がることもなかった。
私は美朱のような世界から来たけれど、美朱がこの世界でやってきたことがわかる。
未来から来たと話しても、ただじっと聞いてくれていた。
「これから、よろしくお願いします」
「あぁ。こちらこそ」
そっと重ねていた手に力が入る。
星宿と話すと落ち着く。
一人になった部屋で、私はほぅ……と息をついた。
その晩、珍しく夢を見た。
ーーーヤメテェ!!
いつもと違う夢だった。
あの7つの光の夢ではない。
抽象的な夢ではなくて……今夜の夢は、人の姿が目の前にぼやっと浮かび上がる。
あれは、美朱だ。
美朱が叫んでいた。
ーーー美朱!ダメ………!!!
今度は私が叫んでる。
叫んだ後に広がる赤ーーー。
「っ!!」
バッと目を見開いた。
どうやらまだ、日も登っていない真夜中らしい。
一瞬忘れていた呼吸を再開する。
なに……今の夢……。
今まで見た夢とは違った。
起き上がる体に力が入らない。
体が震える。 私は自分の体を抱きしめた。
怖い……怖い…………!
今の夢は、嫌だ。
ぎゅっと抱きしめると膝に顔を埋めた。
「……こわいよっ……井宿……どこにいるの……」
怖い時は3頭身の井宿を抱きしめていた。
心臓がバクバクと恐怖心を覚えたのだと伝えてくる。今すぐ落ち着かせたくて、思わずそう口走っていた………。
結局、再び眠りにつくのが怖くてベッドの上で座り込んで朝を迎えた。
考えたところであの光景が何なのかがわからない。
私が、美朱ちゃんを止めていた……。
美朱との思い出は下町で出会ったあの1回きり。
夢に出てきて止めるなんて記憶はない。
つまりは……今からある、ということなのだろうか。
私に予知夢なんて……そんなこと今までなかった。
なのに見てしまうのは、何か意味があるのだろうか。
身支度を整え、部屋を出る。このままこの部屋で過ごすわけにもいかない。
「よっ」
「……鬼宿?」
部屋を出るなり、鬼宿が姿を現す。
本当に機敏に動く人だ。
「なぁ、今日は星宿様にお前の腕前をお見せするんだろ?」
「あ、うん。昨日そう言われたけど」
確かに話の中に、弓の腕前を見せて欲しいと言われた。
鬼宿と長い廊下を歩きながら答える。
「それさ、オレと柳宿も見ていいか?」
「星宿がいいって良いのなら、私は……」
「お前、なに星宿様のこと……」
ふいに鬼宿が歩みを止める。
同じように止まり、鬼宿に振り返った。
「鬼宿は聞かなかったの?私のこと」
鬼宿はその言葉に、ふい、と顔を背ける。
「聞いた。お前も、美朱と同じ異世界のものだって」
「うん」
「あと、黄龍の巫女だって話と」
「それは……」
「んでもって、お前の年」
………やっぱそこもか!
私も鬼宿から視線を外す。
「おばさんでごめんね」
「べ、別に、んなこと言ってねェだろ!」
「雰囲気がそう言ってるわ。いいのよ。この世界じゃこの年で独り身って方が珍しいんでしょ?」
「あ~……いや、別に……いないことも、ないだろーけど……」
やっぱ珍しいんじゃん!
「私の世界では、普通ですから!」
「あ、おい!どこ行くんだよ」
「星宿のところ。射場がどこか聞かないと。この歳となると体力に限界あるんだから。あなたとは違ってね!」
「……んだよ……ガキ扱いすんなってェの」
不貞腐れた鬼宿は放っておいて早々に歩き出した。とは言え、星宿の部屋がどこかわからない。
似たような造りの部屋が並び、誰がどの部屋かも……わかるわけがない。
「あのよ、星宿様のとこには後で連れてってやっから、まずは飯、食いに行こうぜ」
「え?」
「まだ食べてないだろ。体力には飯だろ。こっちだ」
鬼宿が私の手を握ってくる。
守銭奴ななわりに、こういうのはさらっと出来るのか。鬼宿も根っからのいい子なんだろう。
私の手を包み込む大きな手を握り返すと鬼宿は笑った。