ふしぎロマンス3~再生の力~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「しばらくお別れなのだ」
今、私は何を言われたの?
「そんな悲しい顔、よして欲しいのだ」
「だ、だって井宿……今……」
「それは奏多が宮殿に行くから……でもきっとすぐにまた会えるのだ」
「だったら“お別れ”とか言わないでよ~!」
「だぁ~……なんでそんなに怒ってるのだ~?」
井宿はわからない、と首を傾げる。
信じられない!
「……私が約束破ったから……愛想つかされたのかと思った!」
「だっ!?どうしてそうなるのだ!オイラはただ、宮殿に入るならきっとしばらく会えないと思っただけなのだ」
「すぐに帰ってくるわよ!ただ説明してくるだけだもの」
「それは……難しいと思うのだ」
井宿が言うには、私を呼び寄せた人はこの国の皇帝陛下。普通なら謁見、会うだけでも色々と待たされる。
ましてや、呼び出される理由が再生の力となれば、なかなか手放してくれないかもしれない。
井宿はそう確信していた。
「オイラは君のそばにいるのだ」
井宿の声がやけに優しく聞こえる。
漠然とした不安に気づかれたのだろうか。
「宮殿の中は安心なのだ」
「……うん」
「ちゃんと話してくるといい。そうすれば、あの方はきっと良くしてくれる」
いつの間にか井宿のお面が外されていた。
そういえば……はじめて見る。
「やはり驚かないか」
「……どうして外してくれたの?」
「ちゃんと、奏多に見せておきたいと思った」
「……そう」
「嫌か?怖い?それならもう……」
「ううん!そのままで!」
お面がない井宿の表情はわかりやすかった。
怖いはずが……あるわけない。
言葉をいう代わりに井宿の頬を両手で触れる。右手は傷に触れた。
井宿はじっとしていた。
目を開けることの出来る方で、私を見ている。
この開けることの出来ない閉じた瞳は、もう見ることは出来ないのだろうか。
包み込んだまま、無意識に顔を近づけた。
「奏多。これは治さなくていい。そういうつもりで見せたわけでもない」
ピタッと動きが止まる。
井宿の顔は真剣で、ドキリとする。
今、私は何を…………。
「あ……」
井宿の傷はそんな簡単なものじゃないのに。
私は何を勝手にしようとしてたのだろう。
自己嫌悪に陥り、手を引っ込めようとした時、井宿が手を握ってきた。
「いつか……消して欲しいと思ったら、消してくれ」
「井宿……ごめん」
「いや、いいんだ。それまでは」
スっとどこからか出てきた面をスムーズにつける。
「このままでいいのだ」
いつもの、笑顔。
声のトーンの高さも、もう今までのものに戻っている。
井宿の苦しみも……救ってあげたい。でも……。
それは今じゃない。
「井宿、縮んで」
「だっ」
詳しく言わなくてももう、すぐに望む姿になってくれる。
目の前に子供くらいの小さな井宿。
その愛くるしい姿を抱き寄せた。
「行ってきます。ちゃんと、話してくる。また、会おうね」
「もちろんなのだ」
「はぁ、この抱き心地のいい井宿もしばらく我慢か~」
「思ってることがダダ漏れなのだ……」
「ありゃ?」
「オイラのことを過信しすぎなのだ」
井宿の頭をナデナデしていると、盛大にため息をつかれ、姿が元に戻った。
おっきくなると……撫でられない。
せっかくのふわふわとした短い髪の毛が手触り良くて気持ちがいいのに。残念だ。
「もういいのだ?」
「わかって聞いてるあたりが腹黒いよ」
「そんなつもりはないのだ~」
家を出るまで、そんなやり取り。
この世界に来てからずっと楽しくて居心地の良かった、井宿という存在。
離れるのは心細いけれど、今から行くところは七星士がいるところ。
いずれまた、井宿とも会えると思う。
また会いたいなら……私を仲間と見なしてもらわなきゃ。
再生の力を知りたいというけれど、ちょうどいい。
私は護りたい者がいる。
手を貸してもらえるのなら、きっとこの先にいる人に信用してもらうほうがいい。
最後に一度だけ、井宿と暮らした住まいを振り返って、再び歩き出した。
目指すは宮殿。
星宿のいるところ。