ふしぎロマンス12~錯誤する想い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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翼宿をどう宥めようか、と思っていた時だった。
後ろから低い声に呼ばれた。
「奏多。力が戻った。治そう」
その言葉が意味するのは、私の背中のこと。
そしてそんなことを言ってくれるのは軫宿しかいない。
「いないと思ってたら……もう治せるの!?」
「ああ」
こんな嬉しいことがあるだろうか。この痛みから開放される。ウキウキしちゃう。
「嬉しいっ!脱ぐ?脱いだほうがいいよね?手、当やすいよね」
こんなたくさん重ね着してるんだもの。
背中なんて見えないよね、といそいそと帯に手をかければ、軫宿に優しくその手を取られた。
「なに?」
「そのままでいい。俺はやっかみはご免だ」
「やっかみ?もう何でもいいわ。お願いしまーす!」
その場の椅子に腰掛けると、後ろで「あいつ、ホンマのアホやな」「少し考えればわかることなのだ」と聞こえてくる。
貶されてる気がしてムカッとするものの、それはすぐに軫宿の力で落ち着いてくる。
体は嘘のように痛みが消え、軽くなった。
「軫宿~!ほんっとに、ほんとにありがとう!」
「奏多さん!怪我、治ったの!?」
美朱がパタパタと駆け寄ってくる。その後ろに不安げに見てくる鬼宿が見えた。
「うん、怪我したなんて嘘だったのかも。あ~、体が軽い、心も軽い!」
「ついでに頭も軽くなっとんのとちゃうか」
「…………」
いくらなんでもプチッと来た。
頭が軽いだと!?
「奏多、落ち着きなさいよ……」
「そうだよ!奏多さん、これでも飲んで!」
「そうね、ありがと!」
美朱が水を持ってきてくれたのかと思い込み、腹立たしさを紛らわそうと一気に飲んだ。途端に喉が熱くなった。
「っ……これ、お酒じゃない。くーっ!きっっつ」
「え!?あ……嘘ー!」
手渡された杯に目をやる。
……全部飲んじゃった。
「ちょっと大丈夫?あんた、お酒飲めたの?」
「飲めないわけじゃないけれど……こんな強いの飲んでたの?」
テーブルを見れば同じようなお酒がいくつも見える。
これをここの人たちはスイスイ飲んでた?これを?本気?
「軫宿や井宿はともかく……あんたたち子供なのよ!?」
「な、なんやて!?」
「オレ……子供?」
「ええ!そうよ!!知らないから。若いうちからこんなの、こんなに飲んで!」
「美朱も飲めねェのか?」
「うん。でもここ、日本じゃないしー」
美朱の目が杯に向いている。
この子は……私がしっかりしないと!
「ダメ!飲んじゃダメ!」
「あー!ケチー!」
「ケチで結構!はい!鬼宿も、翼宿も、柳宿もダメ!!」
「あっ……もー、あたしなら平気よー?」
バババッと酒を持てるだけ持った。
目の前からなくなった酒に、わなわなと翼宿が震え始める。
「おんどれ……何すんじゃい!!」
「1日くらい飲まなくったって平気でしょ!」
「なんやと……。ええから、よこせや!」
「嫌よ」
伸びてきた手からスルリと逃げる。
ふっ……まだまだいけるじゃない。
「おいコラ!何ボサっとしとんねん!!」
「え、オレ?」
「お前の他に誰がおんのじゃ!奏多がそばにおるやろ!早う捕まえんかい!!」
「お、おう」
翼宿が自然に鬼宿に声をかける。
あ、これはこれで……アリだ。
「オレの酒や!返さんかい!」
「い、や!あなたたち、お酒が入ってるから足元フラフラよ。そんなんで捕まるわけないでしょ」
「ムッ……なんか逃げられると追いかけたくなるんだけど……おい!翼宿、そっち回れよ!」
「オレに指図すんなや!お前がそっち行ったれ!」
「はぁ!?なんでだよ!今のはどう見てもお前だっただろ!」
「どこに目ェつけとんねん!飾りか!」
途中から彼らは追いかけることを忘れて言い合っていた。柳宿と美朱が笑ってる。
何も心配いらないんだ。あの2人は友達になれるんだから。
酒瓶を持つのも結構疲れてきた。台に置くとしよう。
ツンッ
長い裾を思いっきり踏んづけた。
あっと思う時には、ガシッと横から伸びる手が体を支える。
「君もお酒を飲んだのだ。あまり動くと酔いが回ってしまう」
「井宿……べつに1杯くらいじゃ酔わないけど」
「きついと言っていたのだ。これできついなら柳宿が飲もうとしてるものを口にしたらきっと飛び上がるのだ」
「え?柳宿?」
体を起こして柳宿を見れば、「余計なことを……」と隠れて飲もうとしている柳宿の姿。
近づいてその手に持ってる杯を口に運ぶ。
「あ、止めなさ……って、遅かったわね……」
「ッッッ……!ゴホッ……!喉、痛い!!なにこれ!!」
「だから止めときゃいいのに。ほら、せっかくのお祝いなんだから……張宿ー!」
「えっ、あ、はい!」
「何か1曲聞かせなさいよ」
柳宿の勢いに口を挟むことが出来ず、笛を取り出した張宿が目に入って思わず……私は張宿に駆け寄っていた。