ふしぎロマンス25~明日はあなたと~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ち、井宿?」
「我慢……本当によく、昔も今もよく我慢したものだ。自分を褒めてやりたいくらいなのだ」
「あ、あれ……?もう普通に喋るんだ?」
「君が無理するなと……」
「言ったね」
「どちらの俺も好きだ、と」
「言ったわ」
「我慢するな、とも」
「………言ったわね」
「もう我慢しない」
「それがいいわ」
「君に……キスしたい」
そっちの我慢!?
「ダメなのだ?まだ我慢した方がいいのだ?」
だ、ダメってわけじゃ……!
でもここ、外……なわけで。
周りを気にしたのが伝わったんだと思う。
井宿が手を引くと、道路から遮られるようにある塀の裏側に連れていかれた。
「こんなとき、術さえ使えれば消え去るのに。……せめて袈裟さえあれば……」
「いや、大事な神通力と法衣、そんなことに使っちゃダメでしょ」
「……そう思っても仕方がないのだ。もう俺には何の力も……」
「私もよ。この世界に戻ってきたら再生出来ないの。だから怪我なんて……」
「しない。だからもう……」
そっと壁に押し付けられた。
井宿が目の前に立って周りから遮ってくれている気がした。
「他の者とキスしないでくれ」
「井宿……」
「あの時は致し方ないとはいえ、もう目の前でキスされるのは懲りごりなのだ」
「うん……ごめんなさい……」
「もう、俺以外とするのはダメなのだ。わかったのだ?」
「はい、約束するわ。あなたとしか、しない」
に、と笑うと私は自分から井宿にキスした。
一瞬驚かれたものの、すぐに体が抱きしめられて深く口づけされた。
うっすら口を開けばすぐに舌が入り込んでくる。
久しぶりの感覚に眩暈を引き起こしそうだ。
「………んっ、ぁ……」
何度も舌を絡め取られ、角度を変えては深く重なり合った。
今までの分を取り戻すかのように。
「はあっ……井宿……息、息させて……っ」
あまりに長くやりすぎて酸欠になりそうだ。
どちらかともなく唇を離すと互いに甘く吐息を吐いた。
「奏多」
胸がドキン、とした。
そう言えば……とても久しぶりに名前を呼ばれた。
「君が好きだ」
不意打ちの声に鼓動がさらに早くなる。
耳元に寄せられて、囁かれた。本当に、待ち望んでいた……言葉を。
「井宿……私と……ずっと一緒にいてくれる?」
「ああ。どんな時も、君の傍に」
「好きよ。本当に、心から好き」
「俺も……」
「君を愛してる」
あの世界に行ったことで私はかけがえのない人たちと出会った。
不思議な世界で不思議なことばかり起きた。
でも、気づくことが多かった。
仲間との絆、命の尊さ、人の優しさ……。
どれもあの本が教えてくれたこと。
大事に生きていこう。
私にもかけがえのない人を与えてくださったのだから。
本当に、素晴らしい世界だった。
ふしぎロマンス 〈終〉