ふしぎロマンス25~明日はあなたと~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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誰?
声がした方を……後ろを振り返った。
声の主は少し離れたところで立っていた。
え………?
「来たきた!待ってたのよー!」
「……呼び出してくれてありがとうございます。先輩」
「いいのよー!奏多!この人だよ!……奏多?」
彼女に視線を向けていた目が、私に向けられた。
2つの開いた瞳。
その両目から目が離せない。
だって……どう見たって……あなたは……。
「ちち、り………?」
そうなんでしょう?
喉から声を絞って、やっと出すことが出来た。
諦めかけていた私に……奇跡が起きた。
「……え、知り合いだったの?“ちちり”ってなに?」
彼女の声に、ハッと意識が戻った。
「何でもない!私、帰るね!」
「ええ!?ちょ、具合は!?」
「大丈夫!」
「それなら他にもあんたを紹介してほしいって人が!」
「いらないわ!私にはこの人がいるから!」
「ええええ!?」
だって、だってだって……!
「私、この人が好きだもの!」
「えーー!?奏多!?」
「呼んでくれてありがとう!来てよかったわ、じゃ!」
驚かせている。
そりゃそうだ。さっきまで沈んでいた気持ちはどこに行ったのか。
今は何よりも……あなたと話したい!
「行こう!」
「………待ち望んでいた言葉をこうもあっさり言われるとは……」
「早く!」
「言われなくても」
ふ、と変わらない優しい目で笑われた。手を出すと、その手を握り返してくれた。
「井宿!井宿、早く!」
心が本当に踊ってる。人って浮かれると、ステップ踏みながら歩くのね。
小走りに走る私に、あなたは微笑みながら付いてきてくれた。繋いだ手に力を込めれば、同じように握り返してきた。
「嬉しそうだ」
「嬉しいわよ!もう会えないかと思ってたんだもの。でもどうして!?今までどこに!?」
「君が……あの集まりに出てきてくれたから」
くん、と引っ張られた。体は素直に井宿の腕の中に包まれた。
「もしかして……ずっと待ってた?私以上に?」
「……物心ついた時から」
「うそ!?」
トクン、トクンとなる彼の心臓の音を聞いていたら、まさかの物心ついた時からの発言に耳を疑った。
「どういうこと?」
「転生したんだ。君の世界、この世界に。生まれた時から、ずっと君だけを想っていた」
それは……つまり鬼宿と同じことが井宿にも起きているということ?
それじゃあ……それなら……!
「記憶……記憶は全てある?」
怖い。もし、記憶がないなんてことがあったら……。
「忘れて欲しいことでも?」
「そんなものあるわけ……!」
「全部ちゃんと覚えている。俺が……前世で井宿だった俺が、いつ、どうやって君と出会って、何をしてどう思って過ごしたのか……ちゃんと覚えている」
「ほんと、に……?実は忘れてるってこと……!」
井宿をぎゅっと抱きしめた。井宿もまた、私を抱き込む。
「夢を見るとずっと君と過ごしてきたことを見ていた。君が……戦い、涙を流し、心宿とキスしてたところも」
「え゙………」
それは忘れていて欲しかった!!
「あれは悪夢だ……。見る度にその日1日憂鬱に……さすがに何度も見れば心宿に殺意が芽生えてきた」
「あは、ははは……」
冗談に聞こえない。
乾いた笑みを浮かべたまま、彼を見あげた。
「まだ……信じられないわ。本当に、井宿が……?」
「そんなに信じられない?」
「だって……もう普通の男の子みたいだもの。服も髪型だって」
「失礼な……昔も今も、普通なのだ」
「え?」
「あ………」
それは、ポロッと口から出た。
彼が気まずそうに目を逸らす。
「もしかして……無理して話してない?」
「…………」
「実は“オイラ”とか今も言ってるんじゃ……!」
「それはないのだ!」
「……“のだ”……ついてるよ」
「あ………」
プッ
「あはははは!なにそれ!」
盛大に吹き出すと、井宿はその場にしゃがみこんで頭を抱えた。
「はあ~~……どうも君と話すと出そうになる……っと、また付けたくなる……、くそっ……」
1人でなんか耐えてる。
何やってんだか。
「井宿」
「…………」
「井宿ったら」
「……どう考えてもこの口調じゃ……格好がつかないのに。夢で君と話している時はずっとあの口調だったから……」
「もう!井宿!!」
私もしゃがみこんで、井宿の顔を両手で包み込んで向けさせる。
目の前できょとんとした目で見られた。
「無理するから余計ダメなの!私は、どっちの井宿も好き!我慢するからダメなのよ!」
「っ………」
“好き”
そう言っただけなのに、私は井宿に抱き寄せられていた。