ふしぎロマンス25~明日はあなたと~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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ああ、やっぱり……。
夢、だったのだろうか。
何もかも……。
ちゃんと理解していたつもりだった。
一緒に生きたい、そう言ってくれたとき、とても嬉しかった。
でも頭のどこかで、彼は本の中で存在する人だと。
美朱のようにはいかない。現実を見ろ……とそう理解している自分もいた。
ああ……
あんな幸せを味わって、これからどう生きろと言うのだろうか。
「ふっ、う……っ……うぅ………」
とても……美朱のように強くはなれない。
寂しい。
……会いたい。
透の言う通り、本気になってはいけない人だったのかもしれない。
でも私は……本気で恋をした。
本気で彼が好きになった。
「ち、ちり………っ……井宿ぃ……」
その晩。
私は疲れて眠るまで、声を殺して泣き続けた。
~~♪~~♪~~
味気ないデフォルトの着信音が部屋に響いた。
スマホを見ると、通話アプリを通して着信が来ていた。
「もしもし?」
「ーーあ、奏多?今どこ?」
「家、だけど……」
「ーー仕事終わってるんじゃない。ね、この間話した弓道部のOB会、今やってるのよ。出ておいでよ」
「えー……」
「もう、奏多元気なさすぎなんだもん!パーッと飲もうよ!奏多に会いたいって人、多いんだからね!待ってるからー!」
今までにも友人を通して何度か声をかけてくれた。
その都度、何かしら理由をつけて断っていたOB会。
私があの世界から戻ってきて半年。
もう半年。まだ半年。
いつも断り続けていたのに、この日は一体どうしたのだろう。
気がつくと、私は靴を履いて玄関のドアを開けていた。
「……あーーーー!奏多だー!!」
「え、何……」
「奏多が来たよー!!」
店に入ると、電話をくれた彼女がテンション高く叫んだ。
「ちょ、ちょっと……たかが来たくらいで……」
「もう!誘っても全然来てくれないんだもん!」
「ごめん、仕事が忙しくて」
「そうなの?あ、でも残念!今日は彼来てないのよね」
「彼?」
「ほら~、奏多好きだったでしょ!全校生徒のプリンス!」
そう言われてギクリとした。
「透くんのこと?」
彼もまた、弓道部のOB。
今までこの集まりには参加していたのかもしれない。
でも彼女からの返答は、思っていたことと全く違った。
「え?違う違う。そんな名前じゃなくて……」
……違う?
まさか、あんな有名な人の名前を忘れたの?
でもそうではなかった。
彼女は……いえ、ここにいる全員が彼のことを知らなかった。
透という人そのものの記憶が、皆から消されていた。
「まさか、そんなこと……」
彼がこの世界で生きたことを消したのだろうか。
そんな……自分と関わってきた人の記憶から、自分を消すなんて……どんな思いだったんだろう……っ。
「ちょ、ちょっと奏多……どうしたあ?」
「……ちょっとコンタクト……ずれた。トイレ行ってくるね」
「ええ?視力低かったっけ?あ!ビール頼んどくよー?」
知らなかった。彼はすべて、請け負っていた。
「やっぱり私だけこの世界にいて、何になるの……」
私だけ、この世界にいたって……。
「やっと出てきたー。ほら、ビール来ちゃってるよー?」
「……ごめん、もう帰ろうかな」
「ええ!?ちょ、どした!?具合悪い!?」
「う、ん……」
「とりあえず座りなよ!タクシー呼ぶから!」
そう言って私を椅子に座らせると、ここぞとばかりに人が集まり出す。
何か楽しそうに話しかけられる。
だけどもう何も頭に入ってこない。愛想笑いをしていると、誘ってくれた友人が耳打ちしてくる。
「あと少しでイケメンも来るわよ、年下なのよ~」
イケメン?年下?
それならもう充分すぎるくらい、イケメンな彼らと過ごしてきたわ。
「あたしらが卒業したあとに弓道部に入ってきたんだよ。入った時から、奏多を知ってたみたいよ!」
「何それ」
いや、ほんとに何それ。
「今日までだって、ずっと奏多に会うためにその人参加してたんだからー!はあ~、あたしが結婚してなかったら……彼が良かったなー!」
「こらこら」
「早く奏多も結婚しなよ!」
結婚、ねえ……。
あれだけしたかったのに、今は……どうかな。
「私、もう一人でいいかも」
あんな経験は二度とない。
あんな思いをするのは、恋焦がれるほどの思いはもうないと思う。
ここにいても仕方がない。
帰ろうと、テーブルに手をかけ立ち上がろうとした。
「それは困るな」
突然、背後から声がした。
彼女は私の後ろを見て、にこやかに手を振った。