ふしぎロマンス25~明日はあなたと~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「私、ずっと透くんが好きだった」
言葉にするのは、初めてだ。言って初めてわかる……自分の気持ち。
「16の時から3年。でも……その時の彼は手の届かない、そんな素敵な人だった。それから10年経った今でも変わらなくて、再会してこの世界に来たの」
10年振りとは思えなかった。忘れていた胸の高鳴りも、また蘇っていた。
「透くんは皆に慕われ、愛されて、いつも優しかった」
あのまま、この世界に来ていなかったら、未来は変わっていたかもしれない。
「雲の上の存在だった。ドキドキもしたけれど、ここで過ごすうちに何かが違うと思った。その違いにずっと気づかないふりをしていたの」
彼はよく私に忠告してきた。
まさか私も美朱のように芽生えるとは思ってなかった。
年も年だし、出会った頃なんて……いえ、それは今もだろうけれど呆れられていた。
それに、相手にされない、とも思ってた。
「柳宿……翼宿……」
「なあに?」
「おう。しゃーないから聞いたるで」
彼らを見ると、ああ、もうわかってるんだと思った。ちゃんと、私に言わせてくれようとしてる。
私は、深々と頭を下げた。
「ごめんなさい。私……好きだけど……あなた達のこと、好きだけど……っ」
「何かが違う?」
「っ………ごめんなさい」
頭に、ぽんっと手が乗った。ああ、この手も、よく知ってる。優しい手。
「頭、上げえや」
そう。こういう時、すぐに起こしてくれるのはあなた。
「ガッツリ、フッてくれたわねェ。こーんないい男なのに。ねェ?翼宿」
こんな時、こうやって言ってくれて、私の心を軽くするのはあなた。
だから、私は……勇気を出して言えるの。
「井宿……」
「この流れで分からないほど、鈍くはないのだ」
「ホント?今度はちゃんと言うから聞いてくれる?」
伝わってる?
ああ、やばい。今になって心臓がバクバクしはじめた。
「あの、……私ね、」
くぅ……いざその時となると言葉にならない……!
「奏多さん、意外と奥手さんだったんだね」
「しーっ、美朱、今は黙ってないとだめだろ?」
「……だってさあ………っわーーー!!!」
突然何かを見た美朱が叫んだ。
「一々驚くな美朱よ。……して、そろそろ話は済んだかのぉ。いつまで待たせるんじゃ」
「「「「太一君!!」」」」
誰かと思ったら、太一君がそこに娘娘とふわふわ浮いていた。
び、びっくりした……。
「井宿、さっさと言う所は言わぬか!じれったい奴じゃのう」
「……人前で告げるつもりがないだけですのだ」
「そうか?さっきは透の言葉を言うておったではないか」
「あれはあれ、これはこれ、ですのだ」
目の前で繰り広げられる、どちらも歩みを見せない会話に目が釘付けになる。
……えっ……これはタイミング逃した……?
なんてこと………!
「お前達、あまり時間が無いぞ」
太一君が星宿と張宿に言う。
ああ、そうだ。彼らは今、特別なんだ。
「そうだな。我々にはもう肉体がないのであったな、張宿」
「はい、星宿様」
「いやですわあ!!星宿様あ!!」
「柳宿……涙を拭きなさい。鳳綺に泣かれているような気がしてならない」
「はっ……そ、そうでしたわね。星宿様、柳宿は……笑います!」
柳宿の健気な一面を見てしまった。
「張宿……」
「軫宿さん、あの時ずっと傍にいてくれてありがとうございました」
「……いや。俺こそ救うことが出来なかった……すまなかった」
「いいえ。……あ、軫宿さん」
「なんだ?」
「これで、最後かも知れません」
「…………」
「言わずに、いいんですか?」
「……………」
「後悔、されませんか?」
「お前は本当に賢いな」
「軫宿さん……」
「井宿にバレると厄介だからな。そのまま胸に秘めておいてくれ」
「ですが……」
「いいさ。井宿がきっと、幸せにするだろう」
「でも……」
「もうよせ、張宿。いいんだ」
「……でも、井宿さん、僕達と一緒に戻ろうとしてますが……」
「何だって?」
そう。
張宿たちがそんな会話をしているとは気づかずに、私が美朱や鬼宿と最後の会話をしていると、井宿は星宿や柳宿、翼宿のそばにいた。
「何しとんねや」
「だ?」
「なんでこっち来てンのよ!あんたはそっち!」
「だあっ?オイラは君達と同じ世界の人間なのだ」
「お前の居場所なんてあらへんぞ」
「そうよそうよ」
「なぜそんな悲しいことを言うのだ。オイラ達は共に戦った……」
「そやな。仲間や!どこにおっても、仲間やろ?」
「翼宿……」
「あんた、託されてなかったァ?それなのに離れ離れって、約束守れないじゃない~」
「それは……」
井宿が私をチラリ、と見た。
私も井宿もその約束を守ることが出来るとは思ってない。
だって……わかっているから。
ここが、本の中という事を、わかってる。