ふしぎロマンス25~明日はあなたと~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「奏多」
今度は間近で聞こえた。
頭を持ち上げてみると、そこにはあなたがいた。
「井宿」
「……おかえりなのだ」
優しい目と合う。また、会えた。
私も唯と同じように黄龍から出てこれたようだ。
ん?唯のように?
「ちょっと待った!」
「うん?」
確認することが怖くて、顔を井宿に埋めた。
「私、今どんな格好!?」
「…………」
「あああ……わわわわわっ……」
これ、絶対にやばいパターンじゃない!?
ここで!?こんな往来で!?この年で!?素っ裸!?
「大丈夫。オイラが、隠しておくのだ」
「ち、ちちり……?」
我ながら情けない声を出した。
井宿は優しい声とともに、更に私を引き寄せる。体が僅かに動いたことで、体全体に袈裟がかけられていることに気がついた。
「誰にも見せない。誰にも……」
その声に、幾分心が、ホッ……と……
「するわけない!」
「だっ?」
「恥ずかしいわ!!服くらい着せて返してよ!もしくは気絶させたままにしてて!中途半端が一番、残酷!」
くわっ!と空高くうごめいている龍に向かって叫んだ。
元凶はあの龍だ。
「……ったく、相変わらずねェ。起き上がると見えちゃうわよ」
「こ、これでも着とけや!ボロボロやったけど、さっきの鱗で綺麗さっぱりになったさかいな」
「鱗……?」
「わからんのか?」
首を傾げていると、井宿が手早く翼宿の上着を着せる。
「……井宿………」
私の意識のないうちに何が起こったのだろう。
不安に見つめていると、帯留めで前を締めながら口を開いた。
「今は……何も考えなくていいのだ。あとできちんと話す。だから今はこれを着て…………大きすぎるのだ」
「そらすまんのう」
「あら、これじゃあ丸見えねェ」
「見るななのだ!!」
「……ハイハイ」
井宿がやけに世話を焼いてくる。
今は肩にポンチョのように袈裟まで巻いてきた。
「井宿、もう大丈夫よ」
すくっと立ち上がる。
おっと、足を開いてはダメね。
空を見上げると、そこにはまだ3体の神獣がいる。
さっきまで、あそこにいた。
なのに今は……。
「黄龍……」
その名を呼んでも、もう応えてくれない。
ただ……上空の黄龍が、ひと鳴き……鳴いた。
「あ、れは………」
黄龍が2つの赤く輝く球を出した。
空高く、その赤い光は留まった。そして1つの球の中から、長い長い巻物が広げられた。
ああ……あれは……張宿だ。
張宿ががんばってくれてる。
「……房宿」
傍らで同じように天を仰いでいた心宿が呟いた。
「行け。もう私のそばにいる必要は無い」
「心宿……」
「もう、私も……お前も、七星士ではなくなる」
「……はい」
「お前を、手放してやろう」
「いいえ。私は……あなたのお傍にいます。何があっても……ずっと」
「房宿……」
「心宿さん、オレもついていきます」
「……角宿」
「いいですよね、心宿さん」
「フッ……物好きな奴だ。だが、お前はいらん」
「なっ!どうしてですか!」
「私には房宿がいる。お前は亢宿の所へでも行くがいい」
「………な、んで……」
「お前のたった1人の肉親……だろう」
……だめよ。泣くな。
今、泣いちゃだめよ。
でも聞いてしまった。彼の言葉を。
心宿……。あなたはやっぱりどこかで受け入れていたのね。
こうなることを……。
黄龍が巻物を青龍に巻き付けた。
途端に青龍がスゥ、と消える。
「元に戻っていくわ……」
青龍が消えると、街並みが元に戻った。
そして……心宿、房宿、角宿も……消えていった。
ただ最後に見た彼らが、うっすら微笑んでいたことが、私を何よりも安心させた。