ふしぎロマンス3~再生の力~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「いた、いた!奏多ちゃん!!」
「えっ?」
振り向くとこちらに走り寄ってくるおじさんの姿。
あ、この人、宿の人だ。
今まで必死に鬼宿に言わないようにしていた名前を、いとも簡単に呼ばれた。
「どうしたんですか……?」
「あんたに頼みがあるんだ!」
「……はい?」
「これ!これなんだけど……」
そう言って見せられたのは、まっぷたつに割れた壺。
……げ。
何が言いたいのかわかった。
「おじさん。あの時の一度だけって言ったじゃないですか」
「お願いだ!これも!これも頼む!!」
井宿には内緒にしていたけれど、再生できるようになったすぐ、町に来たときにこのおじさんと会った。
とても困っているようで話を聞けば、宿で大事にしていた壺が割れたらしい。
宿に泊まっていた時にはお世話になったし、と力を使った。
軽率なのだ、って怒られそうで、その時は黙っていた。
「頼む!これはカミさんが大事にしてるツボなんだ……」
ガクッとその場に膝をつくおじさん。
「おじさん……」
「なぁ、このおっちゃん、めちゃくちゃ可哀想なんだけど……」
この場に鬼宿さえいなければ、サッと直してあげるところだけど……
躊躇っていると、おじさんは頭を下げだした。
「お、おじさん……!」
「頼むよ、奏多ちゃん!カミさんを泣かせたくないんだ……!」
「…………」
負けだ。
これで無視できるほど、非情にはなれない。
前に歩み寄るとき、鬼宿と目が合う。
あーもう……。
「鬼宿」
「ん?」
「今から見ること……誰にも言わないで」
「なにすんだ?」
「……再生するの」
鬼宿が不思議そうに見る中、おじさんから壺を受け取る。
「あぁ……ほんとに、ありがとう」
「もう……これで最後ですからね」
「あんたは女神だ」
そっと割れたツボを両手に乗せる。
大きいな……。
額をツボの1箇所につける。
ーーー再び、あの時の壺に……。
そう願うと、手の中で壺の割れ目がスーッとくっついた。
「はい、おじさん」
「あ、あぁ……あんたは本当にすごいよ」
「内緒よ?」
「ああ。お礼と言っちゃなんだが……」
「いいの。奥さんと仲良くね」
「奏多ちゃん……今度、あのお連れさんと一緒に来ておくれ。うまい酒をご馳走する」
とても嬉しそうに大事に抱えて帰っていった。
さーて……この今起こしたことをどう鬼宿に説明したものか。
ペラッ……
……は?
なんで今、袖をめくられてるの。
「な、なに……?」
「字!今どっかに字、出てねェのか!?」
「はいっ!?」
「お前、七星士なんだろ!?」
「ち、違うわよ!ちょっとめくらないで!!」
色んなところをめくっては肌を確認しようとする。
必死に服を押さえ、ワナワナと震えた。
「こんなところで何してくれんのよ!」
「わっ!何すんだ!いいだろ!減るもんじゃねェし」
「なんですって~……!!」
少し距離を取り、サッと背中に背負っていた弓を構える。
「わわっ……!悪かった!謝るからソレ、しまえよ!なんだ、飾りじゃないのかよ」
「私は七星士じゃない。絶対に先程のことは口外しないと約束して」
「なんで?すげーじゃん」
「約束するの!?しないの!?」
「するする!するからよぉ!」
「そ。ならいいわ。それじゃ」
「あ!ちょっと待っ」
えーい!しつこい!!
懐から一文を取り出す。それを思いっきり投げ飛ばした。
「鬼宿!取ってこーい!」
「あ!もったいねェ!!」
投げた時には鬼宿がお金目掛けて走り去っていた。
ふっ……単純な男。
やっと静かになった所で、買い物を済ませる。
今日のこと、井宿に話した方がいいかしら。
ああ、でも……力を使ったのもバレるわ。鬼宿とのやり取りも。
怒られるのが目に見えている。
内緒でいっか!
でも、その数日後。
結局、井宿にはバレた。
皇室から直々に宮殿に来るよう、家に使いの者が来た。
私のこと、それから力のことも知りたい、と書かれてあった。
「奏多……一体君は何を……」
「あは……何かな、これ~」
「…………」
……バラしてんじゃないわよ!鬼宿!!!