ふしぎロマンス24~情の証~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「す、朱雀や……!」
上空に朱雀が現れた。その朱雀の周りを黄龍が旋回する。
ふっ、と自分の右膝が熱く感じた。
この……感覚。
ーー井宿……
「奏多………」
君に呼ばれた気がした。
「皆、念じるのだ!朱雀七星の力は体に戻っているのだ!!」
右手にシャン、と錫杖を出した。
「破っ!」
体にかけられている術を解いていく。
これだ。こうでなくては。
手にした錫杖を握りしめた。
「よっしゃあ!字ィ出よったで!」
「あたしも出てるかしら?」
「おー!出とる出とる!」
「俺もだ。いくらでも治してやる。恐れずに戦え」
「心宿……朱雀が巫女に呼び出された以上、お前にはもう勝ち目はないのだ!」
それぞれが応戦できるように構える。
「……ここまで、か………」
心宿が天を仰いだ。
「朱雀の巫女……お前は神獣に食われるとわかっていても……」
心宿の顔が、美朱に向けられる。
「それでもお前は、唱えるのであろうな」
「……当たり前だよ。あたしは、負けない!負けるもんか!!」
「それも……知っている」
心宿のこんなにも力ない声は初めてなような気がした。心宿の隣に、房宿が寄り添った。
「開神!!今すぐ唯ちゃん、私の親友と……奏多さんを返して!!」
美朱の声に願いを託した。
「見てみい!青龍の中から、出てきたで!」
「奏多……奏多も出てくるわよねェ!?」
しかし……。
「う………ぁッ、」
「美朱……!」
美朱はうずくまって、苦しみを耐えている。黄龍からの変化は……ついに見られなかった。
「奏多は……返してもらえないのか……?」
「井宿……」
「……軫宿………俺は一体何をしていたのだろう……」
術も使えず、ただ見ていることしか出来なかった。
「なんて……無能なんだ……!」
「井宿……まだ、諦めては……」
「軫宿の言う通りだよ」
これは、透の声か。
「俺はこんな結末を望んだわけじゃない。奏多を黄龍にやるために、ここまでしてきたんじゃない!」
「何を……まだ何かやれることがあるのか!?」
「井宿。君は奏多を一生、護るかい?」
「ああ。護りたい」
「即答するんだ。君が?」
「もう……その場で言わずに後悔したくない」
何度、素直になる機会があっただろうか。
それなのに俺は……全てに嘘をついた。自分の気持ちを知っていたのに。
「これからの俺の願い、井宿に託そうかな」
「透……?」
透は俺を一瞥すると、苦しむ美朱の肩に手を触れた。
「……え………?」
何か、美朱に告げている。
わけもわからずに見ていると、透が自身の体に風を巻き付け、空高く舞い上がった。
「黄龍!取引しよう!!」
「なんや、あいつ………」
「取り引きって……?」
「透さん……身代わりになる気なんだよ……」
身代わり……?
「もしかして……最初から、そのつもりだったんじゃないかしら……?」
「あいつなら、やりかねんで」
だが、それでは彼女が戻った時に……透が……。
「やめろ!透!!それでは彼女は喜ばない!!」
「井宿!?あんた、何言ってンのよ……!」
「奏多が戻ってくるかもしれへんのやぞ!?」
「そうかもしれない!だが、駄目だ!透!君は、彼女の中で存在が大きい!わからないのか!?」
奏多が戻ってきても、君がいなければ……奏多は自分を責めてしまう……!
「大丈夫さ。井宿、君がいれば」
「他に手は……!」
「ないよ。黄龍は力を失いつつある。黄龍は表立って出てくる神獣ではない。けれども……四神にとって、天帝にとっても失えないものだ。黄龍はずっと、自分の代わりとなる依り代を求めてた。依り代は2人いるんだ。どちらでもいいと言うなら、俺がなるだけだ」
同じだった。
彼女があの時笑ったように、透もまた、笑っている。
「透……だめだ……」
「じゃあさ……伝えてよ。奏多に……」
「愛してる。幸せに……って。頼んだよ」
透はそう告げるとさらに空へと舞い上がった。
「……開破!」
奏多が唱えたように、彼もまた唱える。
そして、黄龍は彼をも飲み込んだ。