ふしぎロマンス24~情の証~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「透くん……?」
力を失った体が前に倒れてくる。受け止めることも出来ずただ呆然と、倒れ込んだ彼を見た。
背中が焼けたように赤く爛(ただ)れていた。
「っ……ホンマに……やりおった……」
「奏多さん!!早く治してあげて!」
美朱の声がして、よろよろと透に口づけようとした。
「させぬ」
「っ……いや!」
心宿の術で容赦なく、透から引き離される。背後に感じる心宿の気配。
「奏多!」
「くそっ!」
井宿と翼宿が駆け出す。でも、それを心宿が手のひらを突き出して、彼らを呪縛で動かなくさせた。
「フッ……容易いな」
「く、そ……またかい……!」
目覚めてしまった。透に傷つけられているはずなのに、心宿はそれを微塵にも感じさせない。
どんどん動きを止められたみんなが、傷ついていく。
「や、やめて……!もう、ほんとにやめて!!」
私の体は自由に動いた。心宿の腕を掴むと、それを必死に下ろそうとする。
「何のつもりだ」
「やめてって言ってるの!こんなことして、何になるの!?」
空には今もなお、青龍が渦巻いている。美朱にも彼らにも何も変化が起きない。
という事は……唯は願ってくれなかったのだろうか……!
「全てのことを聞いた私が、何も手を打たぬと思ったか?」
「っ……」
心宿の空いている手が伸び、私の腰を抱く。ぐっと近づいた、その鎧に頬が当たった。
「奏多に……触るな!!」
「何も出来ぬお前らは黙っているがいい」
「くっ……」
心宿が目に力を入れただけで、井宿の衣服が破けその下の皮膚を傷つける。
「やっ……やめて!!井宿……井宿!!」
「……だい、じょうぶなのだ……そっちに行くから、待ってるのだ……!」
動けないはず。それなのに、井宿の足がズズ……と前にすり出た。
「ほう……ただの人間と化したかと思ったが……だが、小賢しいな」
まるで歯が立たない。
こんな……はずでは……。
どうして上手くいかないのだろう。
どうして、誰もが傷つかなくてはいけないのだろう。
「……あなた……唯に何か吹き込んだのね……?」
「透様……いや、あの裏切り者が唯様に話をしていることは知っていた。唯様がその言葉を鵜呑みになさるのも」
「……何を言ったの……唯にまで……何を入れ知恵したの!!」
心宿が不敵に笑う。
まだ……あなたはこんな顔をするの……?
「朱雀の力を与えれば……朱雀の巫女も同じように苦しむ。あなたは友に同じ思いをさせるおつもりか、と。唯様はお優しい。それだけでこうして思い止まって下さった」
「な、………」
なんてことを言うのだろう!!唯が美朱を大事に思う心を逆手に取ったの!?
「そして、私はこうも言った。“青龍をあなた自身で封印されるといい。全て上手くいく”と。賢い娘かと思ったが、どうやら見当違いだったようだ」
「封印……?青龍の巫女である唯に言うなんて!青龍が聞き入れるわけがない……!3つ目の願いを無駄にさせたの!?」
「私の願いを聞き入れて下さらないのなら仕方あるまい。朱雀を呼び出させるわけにはいかぬからな」
ああ、もう……本当にどうしようもない人……。
そうまでして、何を求めるというのか。
私は、あなたにも幸せになって欲しいというのに。
チラリ、と目を房宿に向けた。片隅で角宿と共に、心宿を見つめている。
あそこにいるじゃない。
あなたを、今もこうして見てくれている人が。
青龍……。
あなたなんて朱雀が呼び出されたならそれまでなのよ。
私も巫女ならよかった。
そうしたら黄龍に……。
黄龍?
………そう、か。
私が、黄龍に願えばいいのね。
体感的には実感はないけれど、もう髪も目も違う。
この世界に来る時は、この身もあげると言った。
他に何があげられるだろうか。
何でもいい。
何でもあげるから、私の願いを聞いて。
「開破!」
心宿が私を掴みにかかる。
しかし、それよりも早く私は空高く舞い上がった。
空へと上る時、井宿と目が合ったような気がした。