ふしぎロマンス24~情の証~

夢小説設定

この小説の夢小説設定
ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ヒロインの名前(漢字推奨)


「透くん……房宿……!」



房宿が心宿の元へ降りてくる。
そうだ!心宿……!



姿を確認しようとすれば、私の体に触れてくる手。



奏多……」



その声にパッと顔を上げた。



「井宿!動けるようになったのね!」



井宿が眉を下げて、僅かに頷いた。



「こいつ!気ィ失っとるで!」
「信じらんない……心宿が?」
「背中をざっくりやられたな……」



背中……。
手を見てみると、そこには赤いものがベッタリとついている。



「ぁ……っ」



手のひらを見ていると、その手を袈裟が覆って拭き取られる。



「井宿っ……」
「すまない……君を……護れずに……」



ふるふると首を横に振った。
そんなことはない。井宿の声が、ちゃんと聞こえたから。



「……心宿さん……死ぬの?」
「っ……心宿……!」



私から退かされた心宿に角宿が近寄る。房宿もまた、悲しい表情で隣に寄り添う。



「心宿を……治さなきゃ……」
「!」



井宿が素早く腕をつかんでくる。



「……させたくない」
「井宿……」



きゅ、と眉間を寄せた井宿が呟く。
そう……ね。ちゃんと治すためには、自分からしなくてはいけないものね。



「もう、見たくない」



ぐっ、と手に力が入った。



「治してあげる必要はないよ、奏多
「っ、透くん……?」



彼の言葉に戸惑う。治さないでいいなんて……そんなこと……。



「それくらいじゃ死なないよ。腹が立つけれど加減したさ。気絶させてる今だよ。……唯、心の準備はいい?」



唯、と呼ばれて今まで意識がないとばかり思っていた彼女を見ると、すでに立ち上がっていて、美朱が唯に駆け寄っていた。



「唯ちゃん!」
「美朱……」



バッと唯に抱きつく。



「唯ちゃん!あたしね……!」
「……もういいよ、美朱。あんたのこと、ちゃんとわかってる」
「唯ちゃん……」
「全部さ、聞いたんだ。青龍を召喚した時に」



唯は、私が夢で心宿に会いに行った日、透からこの先のことを聞いていた。
美朱とのことも、その時初めて、耳を傾けたそうだ。



「早く……聞いてれば良かったのかな。そうしたら……同じ高校、行けてたのかな」
「ゆ、唯ちゃんっ……!」
「行けるわ!!唯も美朱も!一緒に!!」
「っ……!」
奏多さん……」



私は居てもたってもいられず、口を挟んだ。



「行ける!ちゃんと、行ける!!」
「ん。あたしも、そう信じてる。美朱……」
「唯、ちゃん……?」



唯は、自分がこのあとに青龍に食われることを知っている……。彼女に朱雀を呼び出す力を願ってもらわなくてはならない。



それは、わかる。そうしてもらいたい……。
でも!!これしか方法はないの!?
3つ目の願いで朱雀を呼び出すしか……!



奏多……彼女達なら大丈夫だ」
「透くん!」
「ここまで来れば、あの本の通りになる。これでいいんだよ。今やれば、心宿だって死なずに済むよ。君は心宿も救いたいんだろう?」



そう言われて、房宿に抱かれて目を閉じている心宿を見る。



「……救いたい」



願えるものなら……心宿だって。



「開神!」



唯の凛とした声が響いた。彼女の体が青く光り、一瞬で空へと消え去る。



そのかわりに……空いっぱいに大きな蒼き龍、青龍が現れた。



「これで君たちの力も戻る」



透がホッとした表情を浮かべる。
そうか。唯が願って、美朱が朱雀を呼び出して、同時に彼らにも能力が戻るんだ。



「……何も、起こらへんで……?」
「そんなわけ……字が出るはずだ!」



透が翼宿の袖をまくる。やはり、そこには何も現れていなかった。



「まさか……俺は確かに唯と……」



よろ、と透が後ろに下がった。
その時だった!



「果たして……そううまく行きます、かな……?」



「っ………!!」



透の体が大きく仰け反った。
そしてその体を突き抜けて眩い光が通り過ぎ、先の方で激しく衝突した。



「透くんッ!!!!」



そのまま、ぐらっと傾いて膝をついた透に私は駆け寄った。



「しっかりして……!!」



ひゅうひゅうと喉から変な音が聞こえる。
それでも彼は、ぐっと私の腕を掴んだ。



「……ごめ………失敗、した……」
「透くん!?」



その掴んでいた手が……力無く……滑り落ちたーー。



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