ふしぎロマンス24~情の証~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「………そんなチンタラ走ってたらすぐに心宿さんに追いつかれるな」
走り出すと、すぐに角宿がボヤく。
悔しいことに言い返せない。そんなゆとりさえないくらいに、息が上がっている。
「あんたの倍近く……生きてるって……っ……言ったでしょっ」
「……そう言えばそんなこと言ってたな」
こっちはゼエゼエ言って走っているというのに、呼吸一つ乱さずに走っているのが腹が立つ。
しかも、唯を横抱きに抱えたままだ。
「若いって無限だ……っ」
「話せる余裕があるのなら、もう少し早く走るのだ」
「っ……わっ!むり……!」
ぐん、と手を引かれる。
足が、足の回転が追いつかない!ついでに心臓もやばい!!
「はあ、っ……はあ、井宿っ……待っ……」
途切れ途切れに呼びかけた時だった。近くに飛んでくる衝撃。
コンクリートに当たって、粉々になったものが飛んでくる。
「っ……!!」
間一髪、井宿が袈裟を広げて飛んできた破片から身を護ってくれた。
「心宿なのだ!」
袈裟が目の前からなくなると、悠然と立つ心宿の姿が目に入った。
周りには誰もいない。心宿に応戦していた鬼宿でさえも。
「た、鬼宿……は………?」
かすれた声が出た。その声が耳に届いたのだろう。
心宿が僅かに、くっと喉を鳴らして笑った。
「心宿……貴様……」
「お前が術者、井宿か。何度か顔を合わせたことがあるな」
「だったら何なのだ」
「あの者もなかなか私を楽しませてくれたが……さて、お前はどうかな」
「……生憎、オイラは男色ではない。他を当たれ」
「ふ……そうか」
井宿が心宿を見据えながら、私を後ろに隠す。
そ、とその背中に手を添えると、バクバクなる心臓が少し落ち着いた。
「その今、後ろに隠した者……」
私のことだ、と思うと、井宿もピクリと反応を見せた。
「随分と見かけが変わったようだが……」
「…………」
心宿が目を光らせる。
まずい。目をつけられた。
心宿が目を細める。たったそれだけなのに、井宿の体がふわっと浮いたかと思ったら、そのまま地面に押し潰された。
「井宿!!」
「来るなっ!!」
「っ……!」
今も見えない何かに押し潰されて、顔を歪めている。近寄ろうとすると、強い口調で静止された。
「ぐ………」
「井宿……っ、心宿!やめて!!」
目の前で井宿の周辺だけ重力が違って見えた。
地面に押さえつけられる体を必死に両腕で支え耐えている。
心宿に懇願をした瞬間、私の体は何かにぐんっと引っ張られた。
気がついたら心宿の腕の中にいた。
「っ……!?」
「奏多……!っ、う……!」
「な、心宿さん……」
私たちに起きたことを、角宿が体を強ばらせてみている。ぎゅっと、角宿は唯を抱きしめた。
「角宿……唯様を、こちらに」
私の腕を後ろ手に拘束しながら、低く、ゆっくりと告げる。
「オレ……は……」
「角宿!!唯を連れて逃げて!!美朱と、美朱と会わせて!!」
「……お前………」
「ふ……それを、この私が許すと思うか?」
片手で私の腕を押さえ込むと、空いた手を角宿にかざす。
「な、かご……?だめ、だめよ!!」
「心宿さん……っ」
「やめて……唯もそばにいるのよ!?」
心宿の手のひらが光り出す。
「殺さないで!!!」
角宿は動けずに目を閉じた。私も思わず目を閉じる。
ドォン……!とすごい音が聞こえた。
怖くて、目を開けられない。
「危ないとこやったなあ、クソガキ」
この、声は……。
「あたし達に感謝なさぁい?」
恐る恐る目を開けた。
「翼宿……!柳宿……!!」
翼宿と柳宿が、角宿と唯を抱き抱えている。
「井宿!大丈夫!?」
「しっかりしろ」
美朱と軫宿だ。
幻ではない。心宿の気が逸れたことで、井宿にかけられた術も解けていた。