ふしぎロマンス24~情の証~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「っ危ねェ!!」
鬼宿が唯と角宿を庇う。
私も腕を後ろに引かれて、ドンッと背中が井宿の胸にぶつかった。
私達のすぐそばにあった電柱にそれはぶつかり、バンッと弾けて折れた。
「っ………ほんとに殺す気、だった……?」
「大丈夫なのだ……?」
肩をくっと掴まれる。
「震えてるのだ」
「……だ、だってそれ……」
どう見ても爆弾みたいなものだ。
そんなのを目の当たりにしたら……さすがに怖い。
それに……いる。
スゥ、と現れた人に釘付けになった。
「心宿………」
心宿は堂々とそこに現れた。彼の放つ禍々しいオーラに足がすくむ。
体が小刻みに震え出すと、スッと前に井宿が立った。心宿からの直接な視線を感じなくなっただけでも心がホッとする。
「心宿……てめェ、こんなとこまで……何しにきやがった!!」
「唯様を渡してもらおうか」
その言葉を聞いて青ざめていた唯が力なく倒れた。
それを角宿が抱き込む。
「唯様!お気をしっかり……」
「角宿」
「っ……」
心宿に名を呼ばれたことで、角宿が体を固くした。
「唯様を、こちらへ」
「……心宿さん………」
角宿が躊躇う。まずい。
ここで渡されてしまったら……。
「唯ちゃん……」
私は彼女のそばに近づくと、角宿が警戒する間もなくその唇に触れた。
「……ほう。黄龍が青龍の巫女を救う、か。これは面白い」
唯の意識を取り戻そうとした。
彼女は、“知っている”と言った。それに賭けてみるしかない。
でも……。
「うぐっ……」
突然、起こる吐き気に思わず唇を離した。
「奏多!」
井宿がふらつく体を後ろから支えてくれた。
「どうしたのだ!?」
「……わからない……拒絶、された……?」
こんなことは初めてだった。
でも、確かに今……与えようとしたものを拒まれた。
黄龍が、嫌だと言っているような気がした。
「……私は平気。でも唯ちゃんが起きてくれないわ……」
「唯様は疲れてらっしゃるんだ。どこかで休ませないと……」
でもそれを心宿が許してくれそうにはない。
「井宿……オレが隙を作ったら、お前、こいつら連れて走れるか?」
「オイラがするのだ。だから君が……」
「っ……井宿!?」
その言葉に思わず服を掴んでしまった。あ、と思った時には鬼宿がわずかに微笑む。
「んな顔されたら井宿にさせられるわけねェって」
「鬼宿……」
「逃げてくれ。そんで、美朱を護ってやってくれよ。オレが……時間を稼いでる間に……!!」
言いながら、鬼宿は駆け出していた。
止める手はむなしく空を切り、鬼宿は心宿に飛びかかっていた。
「心宿さんに勝てるわけが……朱雀七星士じゃなくなったお前らなんて、普通の人間と同じ……」
「それでも鬼宿を信じて、今は逃げるしかないのだ」
……逃げる……?
そんなの出来るわけがないわ。
相手は心宿。青龍七星士が一人、心宿なんだ。
「その子は君に任せたのだ。奏多、走るのだ」
「…………」
「奏多!」
パチン、と両頬を手で挟まれた。
ハッとして目の前にある井宿を見る。
「呆けている暇はないのだ。鬼宿の願いは何だったのだ?」
「み、美朱を護る………」
「そうなのだ。美朱のそばに翼宿たちもいると思うのだ」
そうだ。
早く合流して、そして唯を目覚めさせなくては。
「ごめん、もう平気」
「よかったのだ。君の気持ちもよくわかる」
井宿がふ、と笑う。
いつの間にか面さえも取れてしまった。
つけ直すこともなく、井宿はそのまま私の手を引いて走り出した。
急がなくちゃ。
美朱と唯を会わせて、朱雀を呼び出さなくては。
私の頭の中は、それでいっぱいになっていた。