ふしぎロマンス24~情の証~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「オイラから離れずについてくるのだ」
このただならぬ気が誰のものなのかなんて、安易にわかる。
心宿だ。ということは、この学校のどこかに唯がいるんだ。
井宿が差し出してきた手を自然に取る。
「走れるのだ?それとも担いだ方が……」
「……冗談言ってる場合?急がないと!」
「至って真剣に言ったのだ」
「余計悪いわよ」
とは言っても、走ればすぐに呼吸が荒くなる自分が憎い!
学校の仕組みのわからない井宿は気配だけを頼りに走る。しかもとんでもない所を通ろうとする。
中へ入れるドアを見つけると井宿を呼んだ。
「上なのだ!」
「う、うえ!?」
待ち受けるのは階段!泣く泣く駆け上がるが私の心臓は限界だ。
3階まで来たところで、向こうの校舎にかなりの衝撃波が巻き起こった。
「っ………!」
「あっちなのだ!」
げっ……また階段……!
「井宿!ちょっと待って!!」
あちらの校舎に行ったからと言って、心宿たちにたどり着くとは思えない。
「とりあえず降りよう!唯が一緒なら……出てくるかもしれない!」
正直、私の知るとおりになるとは思えない。
それでも、もしかしたら……。
「いたのだ!」
階段の踊り場から外に逃げ出す唯の姿が見えた。
井宿が肘で窓をかち割る。
「井宿!?」
「……掴まるのだ!」
「え……ええ!?」
抱き寄せられると、そのまま井宿は窓のサッシに脚をかけた。
まさか……今、3階まで上がってきたところなのよ……。
「ムリムリムリー!!!」
「しがみついているのだ!」
言われなくてもそうさせてもらいます!
ぐっと井宿の腰を抱きしめると、ふわっと腹部に重力を感じなくなり、ひッと喉が鳴る。
着地の衝撃が来る!とさらにしがみつけば、思いのほか一度大きく体が上下しただけで終わった。
「君がいて、怪我はさせないのだ」
「……ホントに信じられないほどの身体能力ね……」
どっと感じる疲労感。でも、すぐそばで私たちの出現に驚く彼女に目が行くと、井宿から離れた。
「唯ちゃん!」
「あ……あなた……」
「っ、危ないのだ!!」
井宿が叫んで、私と唯を引っ張りあげる。と、同時に今までいた場所に衝撃波がぶち当たった。
「嘘でしょ……!私、普通の人間!」
「う………」
「唯ちゃん!?大丈夫!?」
どこか怪我を……と近寄ってみれば、彼女の太ももを見て目を見開いた。
「それ……」
「うろ……こ……っ」
カタカタと震え出す体を私は抱きつつんだ。
「大丈夫!大丈夫だから……!」
「ここから離れた方がいいのだ。走れ!!」
今度は有無を言わさない強い言葉に、私は唯の手を取って走った。
横で聞こえてくる苦しそうな呼吸。
そうだ。もう、この子は2つの願いを叶えてもらっている。
「……唯ちゃんっ、心宿に何か……」
走りながら聞いた時だった。向こうの通りから、この時代に似合わない服装が見える。
それは私と井宿もなんだけど。
さっきからすれ違いざまに通行人から視線感じまくっているのも事実。
「唯!」
「唯様!!」
……あれ?なんだか違和感。
「唯様!お怪我は……お前達……!!」
「井宿……と、奏多!?」
「す……ぼし?え、なんで鬼宿と……?」
違和感が何なのかがわかった。鬼宿と角宿が一緒に走ってきたからだ。
………あれぇ?
そんな、同じ空間に普通に一緒にいれる間柄だったかしら。
「………何だよ」
目が合うと、角宿がキッと睨みつけてくる。
うん、あの角宿よね。亢宿とかでもなく………。
「……あたし、知ってるんだよね」
え?
「心宿がさ、あたしに何をして何に利用されて、これから何が起こるのか、あたしが何をすべきなのか、全部知ってんだ」
角宿に支えてもらいながら、唯が眉根を下げて私を見る。
知って、いる……?
「唯、ちゃん………」
「あの人が教えてくれた。透だよ。だから……角宿、あんたも生きててくれて良かった」
「唯、様………」
角宿がきゅ、っと唯を抱きしめた。
あ、そう……か。
私にはちっとも心を開いてくれないけれど。唯には違う。
角宿の未来もいい方向に変わったんだ。
「角宿……よかった」
「ふんっ」
プイ、と顔を背けられるけれど、その頬は少しだけ紅潮している。
でも………そんな時、とうとうあの人が目の前に現れた。