ふしぎロマンス24~情の証~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「ここからホンマに美朱の世界っちゅーとこに行けるんか……?」
私たちは朱雀廟の前にいた。
「ええ。井宿がくれたお守りを持って、強く美朱のことを思うの。美朱も鬼宿も持っているだろうから行けるはずよ」
「よっしゃ!」
「奏多、なんで入らないのよ」
「あ……私はここから祈ってみるわ……朱雀の者じゃ、ないしね」
「まさか!入れるわよ!?ねえ!」
「だっ。あれは朱雀召喚の儀の時だけなのだ」
「……ホントに?入っていいのかしら」
「ええて、ええて!ほら、早うしい!」
翼宿に手を引かれて一歩、足を踏み入れた。
ーー黄龍……。来たか……。
「え?」
「何、どうかした?」
「……ううん……なんでもない」
今、誰かの声が聞こえた気がした。でも皆は気にしている様子がない。
……気のせいかな。
「朱雀の気がないのだ」
井宿が朱雀の像の前で呟く。
朱雀がいない。本当にそうなのかしら。
入ってからわかる。さっきのは気のせいなんかじゃない。
ここに入った瞬間に感じたものは……あれは朱雀の声ではないのだろうか。
皆がお守りを握りしめる。私も同じように手にする。
黄龍。聞こえているのでしょう?
みんなと私を美朱の世界へ連れて行って。
暫く祈りを捧げると黄龍の声が聞こえた。「もう力がない。そなたの肉体をくれるか」と。
脳裏によぎる彼の声。
ーー契約してはいけないよ。
これも契約になるだろうか。でももう私に迷いはなかった。
「あげるわ」
そう呟くと、私はまたあの言葉を口にした。
「開破!」
私たちの体を黄金の光が包み込み始めた。光が眩しくなる中、引っ張られる感覚がする。
誰かに抱きしめられた気がした。
とても落ち着く……井宿の腕に。
今までいた景色が変わり、随分と近代的な景色の中、私は降り立った。
重力はどこに行ったのだろうと言うくらいに緩やかに。
「……学校……?」
あたりを見回すと、ここは学校だと思われた。
私の知らない学校。ということは、ここがどこか考えられるのは……ただ1つ。
「美朱たちの学校ね」
だとしたらここにいるのかもしれない。
美朱、もしくは……彼女が。
一歩、踏み出した所で、足元が何やら柔らかいと気がついた。
そろりと下を見る。
「井宿!?」
「……ようやく気づいてもらえたのだ」
「いつからそこに!?踏んでた!?私、人を踏んでた!?」
「………気にしなくていいのだ」
「するでしょ!」
本当に何のことでもないと言った具合に井宿が立ち上がる。そしてあたりを見回した。
申し訳なさ過ぎてもう少し周りに注意しようと思う。たぶん思うだけだけど。
「ここは……美朱はここにいるのだ?」
「ええ、きっとね。ここは学問を学ぶところよ。でも……」
私も周りを見る。
「どうして、私とあなただけなのかしら」
「……わからないのだ」
そう。
どこを見ても、翼宿や柳宿、軫宿の姿がなかった。
まさか連れてこれなかったのだろうか。……いや、まさかまさか。そんなこと……。
そう言えば……。
「井宿。さっき……私を抱き寄せた?」
「……………」
そう聞けば、井宿はふいっと顔を逸らした。
……やっぱり。
「美朱のことを思わなかったんでしょう!?」
「……………」
「だから皆とはぐれて私のところに……」
「また君が……いなくなるかと思ったら勝手に動いていたのだ」
「だからって……」
「不安に……思ったのだ。仕方ないのだ……」
なんとも不思議な感じだ。井宿が不安に?
私はくす、と声が漏れた。
「あれだけ避けてたくせに」
「……避けてた?」
「目も合わせない時あったわ」
「……それは………」
「私、嫌われてると思ってたんだけど……」
「…!?」
慌てたように逸らされていた顔がこちらに向く。
「どうしてそうなるのだ!?逆に……っ」
おっと……これは……どう捉えるべきかしら。
目をパチッと一度まばたきをさせると、井宿はまた、ふい……と視線を外すとそのまま背を向けた。
「井宿?」
「……嫉妬……そうだ。あれは、嫉妬してただけなのだ……」
………ああ、嫉妬………。
なんだ、嫉妬してただけなの。あ、そう……。
「って、嫉妬!?井宿が!!」
「…………」
「なにそれ、かわいー」
「かわっ……オイラのどこが……!」
思わず笑みがこぼれた時だった。井宿がピク、と何かに気づく。
「井宿……?」
「……この“気”………」
「わかるの?」
「それくらい威圧的な“気”なのだ」
井宿は私を背後に庇いながら身構えた。