ふしぎロマンス23~護りぬく思い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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宮殿につくと、鳳綺さんが待っていた。柳宿はすかさず、彼女をそっと抱きしめる。それだけで彼女は悟ったようだった。
「鳳綺さん……お座りになられてください」
彼女のお腹の中には星宿の子がいる。
大事な、大事な体だ。
「ありがとうございます。あなたが奏多さんですね」
「はい。ご挨拶が……今になってしまい、すみ……こんな、ことに……」
声が震えて途切れ途切れになってしまう。
鼻の奥がツンとすれば、じわ……と出てきそうになる涙をこらえた。
泣けない。ちゃんと、謝らなければ。
「奏多……」
柳宿が肩を落として声をかけようとした。
それを彼女が引き止めた。
「……陛下が仰られていた通りの方ですね、奏多さん」
「………え……?」
「ずっと聞いていました。美朱さんのこと、あなたのこと。陛下はあなた方のお話をされている時が、一番お幸せそうでした」
優しい声が胸に入ってくる。
彼女に話している星宿の姿が、すぐに思い浮かぶ。
「出立される時、陛下はわかっておられました。自分はもう戻ってこられないかもしれない、と」
「っ……」
「ですが、死に行くわけではない。護るために行くのだと、そう……仰られました」
鳳綺さんの目から涙がこぼれた。
悲しいはずなのに、不安なはずなのに……落ち着いている声。
「そして最後に、陛下はこうも仰られました」
ーー鳳綺。私は奏多に言われたのだ。幸せになれる、と。
ーー私は……幸せになった。今度は私が願う番だとは思わぬか。
ーー私は、君とこの国の民、美朱、そして奏多が幸せになってくれることを、ずっと願おう
ーー幸せに。どうか、幸せにおなり……。
「っ……ほと、ほり………」
堪らなかった。
もう立っていられなくてその場に座り込んだ。
大事な人だった。この国にとって、本当に。
「……陛下……ご安心ください。必ず立派な世継ぎを産みます」
彼女の決意を聞き、私に力が戻ってきた。
「鳳綺さん」
私は、立ち上がって目をぐいっと拭った。
「1つ、またお伝えしてもいいですか?」
「はい。ぜひ……」
鳳綺さんが微笑む。
とても綺麗で、私は今、拭いたばかりだというのにまた一筋涙をこぼした。
「あなた様は、とても可愛らしい男の子をお産みになられます。星宿のように聡明で美しく、鳳綺さんのようにお優しい、可愛い子です」
そう言って精一杯笑みを浮かべた。
鳳綺さんの綺麗な笑顔も、深みを増した。
「奏多。ありがとね」
その場をあとにすると、柳宿が声をかけてきた。
柳宿の頬にも涙のあとが見える。そして、横を歩く翼宿もぐすっと鼻をすすっていた。
「私……もう、誰も泣かせたくない」
「奏多……」
「皆も、絶対護るから」
もう迷わない。後悔なんてしたくない。
ぽん、と頭に手を置かれた。見上げると、その手は軫宿のものだった。
「気負いすぎだ。それに……お前にばかり護られていては、男がすたる」
「軫宿……」
「そーよ。泣かせたくないっていうけれど、あたしも泣かせたくはないわ。あんたをね」
「これから行くんやろ。オレらから離れるんやないで!」
「柳宿……翼宿……」
「……ほら、あんたも何か言いなさいよ!」
柳宿が黙り込んでいた井宿を小突く。
「……全部言われたあとで何を言えと……」
「井宿、いいよ。ありがと。でも皆、第一に美朱を護らなきゃ。私は二の次」
思わず笑うと、井宿の顔も穏やかになった。
あ、久しぶりだ。そう思っていると、通り抜き際に彼は言った。
「美朱もだが……君も護るのだ。護らせて欲しい」
「井宿……」
不意打ち。その笑顔で言うなんて。
ああ、もう……人を喜ばせて……。
「行こう。美朱の世界へ」
彼女達が、待っている。