ふしぎロマンス23~護りぬく思い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あんた、その頭どォしたって言うのよ。そもそもどこ行ってたわけェ!?」
軫宿を救い、未だ駆け込んでくる怪我人の対応に追われていると柳宿が髪に触れてきた。
「……黄龍がね、いるの」
「どこに?」
「ここに」
「だから、ここってどこいんのよ……」
柳宿がキョロキョロと周りを見る。
ああ、そういう事じゃなくて……。
「お前……一体何したんや」
翼宿が背中に怪我をしたお爺さんを乗せて運びながら聞いてくる。
「そうなのだ。青龍への願いがこんなにも簡単に打ち破れるとはおかしいのだ」
「………それは……」
正直なところ私にもわからない。
ただ……黄龍を受け入れたら黄龍の力が増した。
そして、空間を繋げてくれた。それしかわからない。
でも彼は言った。
“一度限りかもしれぬ”
それは、一体どういうことだろう。
思考を巡らせていると、遠くにまばゆい光が立ち広がった。
「ッ……なに?この感じ………」
柳宿がその光の方を見据えた。見れば、翼宿に井宿、軫宿でさえその手をとめ、神経を研ぎ澄ましている。
「なんや、あの光……」
「あれは……心宿が放った気弾……」
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。だったら一体誰と……戦ってるのよ」
柳宿の体が震えている。その様子から、私も血の気が引いていった。
今のは……もしかして……。
心宿と戦っているのは………星宿……?
「……ッ……美朱の声だわ……!」
「ほ、星宿様の声も……聞こえるで……」
みんなが一斉に空を見上げた。
「美朱と星宿の会話が聞こえるの……?」
「奏多……」
井宿が緊張した面持ちで私を見てくる。
私には美朱の声も、星宿の声も聞こえない。それでも、この状況が何を意味することかわかった。
心宿の気弾。
美朱と星宿の声。
星宿は今……瀕死の状態なのね……。
「た、大変……っ、星宿が……!」
「奏多……!しっかりするのだ!」
ふらついた私を井宿が肩を掴んで支えてくれた。
足に力が入らない。
「……井宿……連れて行って……」
「……………」
「私を……早く星宿の所に連れて行って!!」
「………今から、では……」
井宿でさえも言葉を濁す。
空を見上げていた柳宿達に、涙が浮かび始めた。
「おねがいよ……星宿の声が止んだら……声が聞こえている間に行きたいの!!」
縋るように井宿の腕を掴んだ。
彼は息を呑むと、私を立たせた。
「馬を……星宿様の元へ行くのだ!!」
井宿が声を上げた。ハッとした柳宿と翼宿が走り出す。
「奏多。気をしっかり持て」
「軫宿……今も……星宿の声は聞こえてるわよね……?」
「ああ。今も、美朱と話をされている」
すぐに柳宿たちが馬を両手に引いてきた。
井宿が先に馬に乗ると、軫宿が手を貸してくれて私は前に乗った。
「ちゃんと馬にしがみつけるのだ?」
「え、ええ……できるわ……当然よ。だから急いで……」
「…………」
そうは言っても動揺が隠し切れない。手が震えて力が思ったよりも入らなかった。
「これでは落ちてしまうぞ。井宿。お前が支えた方がいい」
「わかったのだ。奏多、手綱を持つのだ。オイラが君を落ちないようにする」
「井宿……」
私に手綱を握らせると、その上から握り締められた。もう片方の手は私の腰に腕を巻き付け、ぐっと抱きしめる。
「いくらかマシになったな」
「……ごめん。軫宿……井宿……」
「いいのだ」
「行くで!!」
翼宿の焦る声の号令で私たちは馬を走らせた。
彼らたちの表情は硬いままだ。今は私と井宿を乗せた馬が一番最後を走っている。
翼宿や柳宿、軫宿の背中しか見えない。
それでも……彼らが悲しみ、苦しんでいるのがわかる。
私たちは信じて、走るしかなかった。
村を抜け、景色が緑いっぱいになった頃、猛スピードで駆けていた彼らの馬の速度が落ちた。
柳宿が肩を震わせている。そして……誰からということもなく馬が止まった。
「えっ……なに……?」
わけもわからず井宿を振り仰ぐ。面が外れていて顔を歪めている。
「ち、ちちり……?」
なに?
どうして止まったの?
「星宿様……ッ」
堪らず柳宿が馬からずり落ちて、その場に崩れ落ちた。その柳宿に軫宿が駆け寄る。
「……柳宿?」
彼らはわかったのだ。
今……星宿の“気”が消えてしまったことを。
「星宿様が……ご逝去された……」
井宿の悲しみの声が……耳から離れなかった………。