ふしぎロマンス23~護りぬく思い~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ふわぁっ、と私たちは空を飛んでいた。
下に目を向ければ軫宿を抱きしめて泣いている柳宿が目に入る。
「柳宿!!」
私が叫ぶと、柳宿はバッと顔を上げた。
ああ、ごめんなさい。
あなたをこんなにも泣かせてしまった。
「アンタたち……軫宿が……軫宿がねェ……」
「知っとる……今までお前らが何してたか……知っとるで……!」
「軫宿ね……ありったけの気を飛ばしたの。そこら中の人達、みんな治ったのよ」
「……そうか。すごいやっちゃ……」
翼宿が軫宿に寄る。
その時、塀の向こうでいがみ合う声が聞こえてきた。紅南の兵と倶東の兵のようだった。
この人たちも先程まで起き上がれないほどの負傷を追っていたはず。
「その命……誰が護ったと思っているんだ……」
井宿が悔しそうに呟いた。
「井宿……変わって?まだ、今なら……」
井宿の後ろに立つと、代わり際に消え入りそうな声で井宿は珍しい言葉を呟いた。
「………軫宿を、頼む……」
「もちろんよ」
これから何をするのか、誰もがわかるだろう。
“誰彼構わずするな”
そう、軫宿は言っていた。
でもね。今はあなただから。
……許してね。
私は、軫宿の前に膝をついた。
「軫宿……起きて」
またその目を開けて、またその優しい眼差しで私に、皆に笑いかけて。
そっと手を伸ばした。
彼の頬を包み込んで、その渇いた唇に口を押し付けた。
どうか……受け入れてちょうだい。
皆あなたを失いたくないの。
体中から気を放ったという軫宿を治すのは至難だった。
深く力を与えてもピクリとも動かない。
一瞬、脳裏に張宿のことを思い出す。
同じになるの……?
彼も私の中に入れるしかないの?
………いいえ。
あなたが回復するくらい、私の気をあげるわ。
今、私には黄龍自身までいるんだもの。
出来ないわけがないわ。
「………開破」
そう唱えればあなたが助けてくれる。
そうでなきゃ、あなたを受け入れた意味がない。
たちまち辺りいっぱいに黄色の光があたりに立ち上る。
またすぐに口を媒体に力を送り込む。手で顎を少し下げ、軫宿の大きな口に重ねる。
お願い。戻ってきて!!
私と軫宿の周りにたくさんの黄色の光が集まる。その光が全て、軫宿の体の中にすぅっと入っていった。
ピクッ
軫宿の瞼が僅かに動いた。
「み、軫宿……!!」
翼宿が名を呼ぶと、軫宿の目がゆっくりと開いてぐったりとして座り込んでいた体を自力で起き上がらせた。
「………もぅ、大丈夫……ね」
……はあ、大変だった。
いや、目を開けてくれたことは嬉しいことだけど、ものすごく体がだるい。
「奏多……」
「軫宿、大丈夫……?」
「………俺は……お前に………」
軫宿は一度目を伏せた。そしてもう一度目を開けると、ふっと笑った。
「無茶させたな……」
「ううん。いいの。その笑顔が、見たかったから……おかえり、軫宿」
「お前も……よく、戻ってきてくれた……」
軫宿に柳宿と翼宿が抱きついた。
その時、塀の向こうの音が激しくなってきた。
戦ってるの?助かった命を無駄にするつもり?
ああ、もう……どうして……戦うの。
悲しくなってくる。
こんな想いは誰のために……なんのために……。
「……………」
じわ、と涙が浮かんだ時だった。
井宿がその場から離れ、塀の向こうに消えた。
「さがれぇーー!!!!!」
それは、今までに聞いたことのない大きな叫びだった。
「えっ、これ井宿!?」
柳宿が驚きの声を上げる。度肝を抜かれていると、さらに聞こえてきた。
「貴様達のその命!!俺の前で……俺の前で勝手に扱うことは………許さない!!!」
何故かその叫びを聞くと勝手に涙がこぼれた。
井宿の気持ちを考えるとどれだけ辛いことだろう。
よかった。井宿の前で、仲間を……井宿の大切な友になる人を失わなかった。
井宿が大股で戻ってくる。そのまま私の前に近寄ってくると、今の私と同じようにしゃがみ込む。
ぐっと引き寄せられた。
「ちちり……?」
「ありがとう。君がいてくれて、よかった」
君が……いてくれて、よかった………。
私がいて……。
う、嬉しいっ。
なんて嬉しい言葉なのだろう。
「ううんっ……こちらこそ……」
あなたがいて、あなた達がいてくれて、本当に……よかった。