ふしぎロマンス22~呼びかける声~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「……ち、井宿……?」
そっと肩に触れた。無駄のない引き締まった体から温かみを感じる。
紛れもなく、生きている人。
「……うそでしょ」
ここ……ここは現実よね!?
それなのに彼らが目の前に……!?
うそ……どうしたらいいの!!
「井宿……!翼宿……!!」
今も目を開けない2人。
そんな……体だけこっちに来たんじゃないでしょうね!?
ゆさゆさと肩を揺すってみたり、ペチペチ頬を叩いてみた。
「起きてったら!!」
どうしよう……と、とりあえず移動!移動だわ!!
ああ、今まさに美朱の気持ちがわかる。
こんな……大の大人をどうやって運べと。
私にも奎介お兄さん、プリーズ。でも残念ながら私に兄はいない。
「バッグ……バッグはどこ!?今、いつなの!?」
あたりに私のバッグがないか探してみる。
……なんと、あるじゃないかー!!奇跡!奇跡だ!!
慌てると人はとりあえずものをこぼすと思う。
中をゴソゴソとしていると、盛大にバッグをひっくり返した。
携帯やメイクポーチ、財布が彼らの頭の上に落ちる。
………あ、痛そう。角が当たったわ。
でもその拍子にピクッと彼らの指先が動いた。
「お、起きた!?」
その瞬間、ガバッと抱きつかれた。
それもまた2人から同時に。
「はっ!?え!?なに……!?」
「どこにも行くなや!!」
「オイラ、離さないのだ!」
「……………」
なんだこれ。
……もう!!それどころじゃないってのに!!
「2人ともしっかりして!!もうついたわ!」
「へっ?」
「ついた……?」
「……どこも怪我してない?おかしい所はない?」
ようやく現状を見始めた彼らは、思考が止まったようだ。
井宿はあたりを見回し、翼宿は私を上から下まで見る。
「……大丈夫?」
「ここは………君の世界、なのだ?」
「お前、なんやその格好………」
うん。戸惑うよね。
私もあなた達の世界に行った時はすごくビックリした。不安だった。
あの時すぐに井宿と会えたから……井宿が私の面倒を見てくれたからどうにかやってこれた。
今度は私の番というわけね。
「理解しようとしないで。大丈夫よ。あなた達は帰れるわ」
「奏多……」
「まずは移動しましょう。この世界ではあなた達の格好の方が目立つの」
危うく、同じように動揺する所だった。
しっかりするんだ。この子達には、今は私しかいない。
「そうだ……タクシー……く、なんて寂しい財布………」
悲しいかな財布の残金が乏しい。ここから家までタクシーってどのくらいだろう。
深夜割増にもなるだろうから、出来ることなら避けたい。
でもそれならあとは……歩き?
いやいや余計目立つ。そもそもパンプスで長距離は……嫌だ。
足を動かすと、コツ……と言う。
タイトなため足も開かないし……ああ、なんてこちらの世界の服は動きにくくて、足元はおぼつかなくて不安定なのか。
何よりどうしてこう……締め付け感があるのにスースーするのか。
「お前……さっきから何やっとんねん」
「え……あ、ごめん。ちょっと色々と考えちゃって……」
「オイラ達が来てしまったから……困らせているのだ?」
「えっ?」
困る?そんなまさか。
不謹慎、だと思う。それでももう、お別れだと思っていたのに……まだあなた達と繋がっている。
それだけで私は………。
「嬉しいよ」
ほら。そう言っただけで、あなた達も笑ってくれる。
「さあ、ぐずぐずしてられないわよ。戻る方法を見つけないと」
「せやな。来れたんやから戻るんも出来るやろ」
「美朱や柳宿たちも気になるのだ。オイラ達はどうすればいい?」
「そうね……ひとまず……」
問題はここからどうやって家に帰るか、だ。
スマホを取り出す。……まだ数時間しか経っていなかった。
たった数時間で向こうでは数ヶ月も経つ。
だったら時間の無駄はできない。早く戻る方法を見つけないと。
時間を見れば幸い、最終のバスはこれからだ。
「これから物凄く理解出来ないことが続くだろうけれど、黙って私についてきて。出来る?」
「わかったで!」
「君の言う通りにするのだ」
バスのライトが見えた。
お願い。どうか……あまり人が乗ってませんように!!