ふしぎロマンス22~呼びかける声~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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今度は翼宿の乗る馬に乗せてもらった。武力の差から翼宿と一緒にいるほうがいいと、柳宿からの提案だった。
「もう落ちるんやないで!?」
「しがみついとくから、ガンガン飛ばして!」
「へっ!言うたな!?」
気合いの入り用が違った。士気も上がっているようだ。馬で荒野を駆け抜ける。
「……あの雲は!?まずい!皆、そこから離れるのだ!!」
井宿が叫んだ時には、既に前方を走る紅南の兵に向かって激しい雷が撃ち落とされた。
「っ……!!」
幾重にも叫び声が聞こえる。
一瞬で無くなる命。これが……戦争。
「くそっ!どこにおるんや!?」
「翼宿、彼らはきっと高いところから見てる!!」
「高いとこやな!」
案の定、崖の上に四頭の馬が見える。
「おったで!!」
いた。
心宿の後に唯がいて、その横に房宿、角宿。
そして………透。
心宿と房宿が手をこちらに向けたところで、透がそれを制しているのが見える。
透が私たちを見下ろしたかと思うと、ドサドサと皆が馬から落ち始めた。
「翼宿!?」
「ゔっ……あっーー!」
見れば私と美朱以外の皆が頭を押さえている。
七星士の力が本当に消えたのか、試しているんだ!!
「透くん!やめて!!彼らにはもう能力はないわ!!」
叫び声を上げると、彼はふっと目を逸らした。
「……く、そ……ホンマ、きっついわ……あいつの力……」
「……なにこれ……これが破壊の力ってわけ……?」
「柳宿……軫宿、大丈夫なのだ……?」
「まだ頭がズキズキするぞ……」
4人ともフラついていた。
うずくまる鬼宿にも美朱が駆け寄る。
「いくらなんでも……酷いわ……」
こうまでする必要があるの?
あなたも知っているじゃない。彼らが何をしたというの?
みんなだけじゃない。あなたのそばにいる人たちも……。
戦う必要なんて、どこにもない!!!
みんな守りたいものがあるだけ!!
「……房宿!!」
「!」
思わず私は叫んだ。
「房宿!あなただけが頼りよ!お願い!心宿を止めて!!唯に願いを言わせないで!!」
「なに……」
「あなたが心宿を幸せにできるのよ!だからあなたが……」
そうだ。
彼女はここで、命を落とす。どうやって命を落とした?
振り返るとよろけながら手にしていた剣を振り上げる翼宿の姿が目に入る。
そう、だ……。
心宿を庇って命を落とすんだ!
「翼宿!!待って!!」
駆け寄ると既にその剣は翼宿の手から離れたあとだった。ビュンッと飛んでいく。
届かないで!と願ってしまう。それなのに無情にも剣は、心宿を庇う房宿の背中にと突き刺さった。
「房宿……」
「心宿……やっと……お役…に立て……た………愛……してま……」
本の通りになってしまった。どうして……私だけじゃない。
透だってわかっていたはずなのに。どうしてあなたはそこで見ているの!?
「心宿!早く房宿を連れてきて!!」
「…………」
「心宿!!」
心宿は私の声に耳を貸すことなく、房宿を見つめる。
少なからず衝撃だったのだろう。房宿という存在に気づいた瞬間だった。
それなら絶対に……房宿を死なせるわけには行かない!
「透くん!お願い!風で房宿をここに下ろして!!」
「奏多………」
「お願い!大人しく……あなたの言う通りに帰るから!!だから手遅れになる前に下ろして!」
「おい!!何言うてんねん!!」
「……翼宿。いい、から……」
そう言ってる間に、私の元に房宿が舞い降りた。
ぐったりとしていて血の気がない。すぐに駆け寄ると房宿の唇から再生の力を送った。
「あの者は……何をしている?何故、助ける?」
「奏多は護りたいだけだ。それは朱雀七星に限ったことじゃない。君たちもだ」
「……………」
「……ね、ねえ。あの人、ほんとに帰りたがってるの?そうは見えないけど……」
「唯。俺と約束したよね?」
「し、したよ。でも……」
「唯……またわからせないとダメかな?」
「っ……わかってるよ。ちゃんとあの人の名前も言うから……安心しなよ」
「それならよかった」
何の会話がされているのだろう。聞き取ることは出来ず唇を離すと、房宿の瞼がピクリと動いた。
よかった。間に合った。
ほっとしたのも束の間、その声は聞こえてきた。とうとう彼女が口を開いた。
2番目となる、願いを。