ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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どうしよう。どうしよう!どうしよう!!
「奏多!!しっかりせい!!」
ハッ、と目を開けた。そこには必死な顔をしている翼宿と、安堵の表情を浮かべている井宿が私を覗き込んでいた。
力を入れると、すんなり起き上がることが出来た。
「よかった……戻ってきたのだ」
「大事ないか?なんや、えらい苦しんだり泣いたり凄かったんやで!?」
「…………」
「奏多?」
「おい……なんか言わんかい!」
「……奏多!?大丈夫なのだ!?」
ガクガクと肩を揺さぶられる。
あ、まずい。心配……かけてる。
返事、しなきゃ。返事を……。
「っ………」
なのに、どうして涙しか出てこないんだろう。
震える手で顔を覆えば、そのまま立てた膝に顔をうめた。
「一体、何があったのだ……」
「話せるか?ゆっくりでええから話してみい」
肩をぽんぽん、と叩かれた。翼宿なりの優しさなのだろう。
その優しさが……今はつらい。
あなた達を置いていかなければいけないなんて……!私のせいなのに……!!
あの時……逃げていなければ!
あの時……!!
「心宿に抱かれていればよかったんだ……っ!」
「「!!!」」
ぽんぽんと叩かれていた手が、ピタッと止まった。
あれ、今……心の中で思ってた、よね?
……え?
「……………」
「……………」
「………もしかして、口に出してた?」
2人の顔を見れば、返事を聞かなくてもわかった。
やってしまったぁ!!!
泣いていたのも止まるくらい、血の気が引いていく。
「……あ、今のナシ。ごめん、聞かなかったことに……」
「無理やろ」
「………だよね」
うう………失言したこの口が憎い。
「ことの経緯を全て、一言一句間違うことなく、オイラ達に話すのだ。今、すぐに。わかったか?」
「……………ハイ」
怒りのオーラがハンパない。
今、見聞きしてきたことを私は出来るだけ思い出してそのまま伝えた。
そうするしかなかった。井宿の放つオーラが怖すぎて。
「やっぱり透が裏切りよったんか!」
話を終えた時には、翼宿は頭に血が上っているようだった。
「いや、透はずっと、奏多を護ることに重点を置いていたのだ」
「これのどこがや!」
「透はこの戦から、奏多を護ろうとしているだけなのだ」
「元の世界にこいつだけ戻してか?離れたら護られへんやろ!」
「……元の世界が、この世界よりもうんと平和だったら……ここにいるよりは、と思ったのでは?」
翼宿と井宿がこちらを見てくる。
確かにこの世界よりは……いや、美朱の世界よりも時代が進んだ世界だ。
それなりに平和に暮らせるのが私たちの世界だ。
翼宿と井宿は信じられないのだろう。だけど、世界も時代も全く違う。
ここが本の中だとは……やはり私も言えなかった。
「平和だとしても帰るわけにはいかない。でも……青龍に願われたら……強制的に帰らされてしまうっ」
「……なあ!井宿!!どないしようもないんか!?」
「こればかりは……」
重たい空気が流れる。
このまま、終わってしまうのだろうか。私だけ、1人戻って、そこにはここで出会った人はいなくて、透もいなくて……。
「……嫌だなあ……帰りたくないなあ」
「…………」
一人になることは慣れていたはずなのに……。
この世界に来たら誰かがそばにいて、起きてもすぐに誰かと会える。
慣れすぎた。この世界に。
「……させないのだ」
頭に、手が触れた。
「井宿?」
「正直、何をしたらいいのかわからない。でも……君をひとりにはしない」
「……井宿……」
「おのれだけ、ええ恰好すんやないで。オレかてさせへん。帰さへん言うたやろ?」
「翼宿……」
……ふふ。
こんな時なのに、こんないい思いしてもいいの?
これだから、余計に帰りたくないって思うんじゃないの。
「笑っとる……」
「笑えてるくらいがちょうどいいのだ」
2人もほっと息をつく。
「……で、“あの時”とはいつの時なのだ?心宿に何をされたのだ?」
「え゙………?」
「そやなー。そこんとこ、詳しく教えてもらわなな」
教えるも何も……教えられませんけど!?
「……いや、それはほら……ご想像にお任せして……」
暫し、考え込む2人。
「…………余計悪いのだ」
「まったくや。いらん想像ばっかししたで」
知らないよ!!
言うわけ、ないんだから……!!