ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「お願い。私を信じてくれない?」
井宿もお守りを渡したことで腹を括ってくれたのかもしれない。今度は言い争いにならず、渋々ながらも承諾してくれた。
「君が目覚めるまで、ここにいても?」
「ええ。構わないわ」
「オレもおるで!」
「どうぞ」
手を挙げながら名乗り出る翼宿に思わず笑った。
手首には数珠。手の中にはお札を持って、寝台に上がり込む。
横になり、暫らくすると瞼が重くなった。
こんな人に見られているのに眠りにつけるのは何故だろう。きっと……これも黄龍が絡んでいるのかもしれない。
「……寝てもうた。ホンマに大丈夫なんやろな」
「信じるしかないのだ。戻ってくるのを……」
真っ暗な闇。
そう、これよ。これを見たら次は……そう。明るくなる。
ポッと一箇所だけ明るくなると、その灯りの方へ歩み寄る。
歩けているのかはわからない。それでも、灯りが近づいてきているから、歩いているのだと錯覚する。
灯りがあたり一面に広がり、目を細めて慣れるまで待つ。再び目を開ければ……天幕の中に立っているのがわかる。
そこに目的とする彼はいた。
「……透くん」
「奏多」
お互いに目が合った。
そして透の声に反応して、振り返る人。
「奏多、と申されましたか?」
「心宿……」
彼は今、まさに現代の風景を見ていた。
あまりにもこの時代の景色に似合わない風景が天幕の壁に映し出されている。
「……ああ。今ね、そこにいるんだよ」
透が私の隣に来る。心宿がこちらを見るが、どこか目線が合わない。
「奏多は夢を通じてここに来ているんだよ。見えない?」
「……実体は見えませんが……そこにいるのはわかります」
目の前に立つ心宿に、見られている訳では無いのに、緊張してしまう。
「透くん……心宿に、伝えて欲しいことがあるの」
「………なに?言ってみて」
「戦争をやめて。倶東国の皇帝に、私が直談判するからあなたは、あなたの事を思っている人を大事にして。案外近くにいるのよ……と」
「……そう伝えたらいいの?」
「うん。お願い」
透が心宿に向き直る。きっと、私の気持ちを汲み取って伝えてくれるはず。
なのに……彼の口から出たものは、全く違った。
「奏多が仲間になりたいって。この身を捧げるらしいよ」
えっ!?
「ほう……」
「その代わり朱雀に攻撃をしないで欲しい。そう言ってる」
ちょっと伝え方違くない!?どういうこと!?
「透くん!?どうして嘘をつくの!!」
叫んでも、彼は返事をしなかった。
そしていくら違うと訴えても、心宿には聞こえなかった。
「それを信じろ、と?」
「俺はただ伝えてるだけ。信じる信じないは任せるよ」
「フッ……」
「どうする?奏多はまだそこで聞いてるけど」
心宿が私のいる方をチラリと見て、そのまま背を向けた。
「……もう遅い。あの時、私のもとから逃げた者に興味はない」
あの、時……?
「青龍も無事に召喚された。私には唯様さえいらっしゃればそれで満たされる」
小さく喉を鳴らして笑っているけれど、私にはその背中が酷く傷ついているように見えた。
あの時……心宿から逃げた時って……。
「そう。どうしても?奏多が手に入るかもしれないのに?」
「フッ……明日になればこの世界から消える身ではありませんか。この者が知らないだけで……」
……え?いま、なんて言ったの……?
透が顔を歪ませる。
「明日まで言わなくていいことを、どうして今、言ってしまうんだ。奏多がいると言っているよね?」
「ああ、それはとんだ失礼を。朱雀七星との最後の夜を、と私なりの粋な計らいですよ」
「……余計なことを………奏多、俺についてきて」
私に向かって声をかける。だけど、足が動かない。
彼が天幕から出ても、そこから動けないでいた。
「……あの時、私を受け入れてさえいたら……違っていたかもしれんがな」
その場に1人残っていた心宿が呟いた。確かに聞こえた。
「私が……心宿から逃げたから………?」
あれがラストチャンスだったの!?
そんな……そんなことって……!
「心宿!お願いよ!もう一度話をしましょう!!明日、会って話をしましょう!?」
だけどその声は届かない。代わりにどこからか風が吹いてきた。
「早くおいで」
出ていった透が戻ってくる。
風が私を運び出す。実体はないはずなのにこんなことも出来るのは、依り代同士だからだろうか。