ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「どーゆうこっちゃ!ちゃんと説明せい!!」
翼宿が怒鳴るのも無理はない。
わけのわからないことを、目の前で交わされているのだ。
「……話してもいいが、殴られそうなのだ」
「殴られるようなことなんか……?」
「……逆の立場なら……今ならイヤなのだ」
「………話してみい」
え、と……なんか2人でサクサク話が進んでるんだけど……これって、私にはちっとも得にならないことなんじゃないかしら。
ポツポツと、これまでの夢の経緯を話す。
井宿からの話だけを聞けば、ただ私がうなされて息もできないほどに苦しんでいるから、自分の“気”を流し込んで呼び戻した。
そういう話だったんだけど……。
みるみる翼宿の顔が……赤らんでいく。
決して照れからじゃない。
怒ってる~……。
やっぱり私にとって得なことになるわけないか……。
「……は、話はよう……わかったわ……おう、オレでもわかったで……結局、おのれらは……」
「………翼宿、プルプル震えてるけど……寒い?」
「ほう……ええんか?今、辛うじてこのドス黒くてかなわんのを抑えつけようとしよるんやけど……ブチギレてええんか……?ええんやな?」
「………スミマセン。嘘です。ごめんなさい」
フーフー荒々しい息を吐きながら、翼宿は自分を落ち着かせていた。
ああ、ごめん。なんか………ごめん。
「アカン。井宿やなかったら殴り倒しとる」
「………すまないのだ」
「謝るこっちゃないやろ。お前がおらんかったらこいつは永遠に夢ん中なんやろ」
「恐らく」
「くそ、怒鳴られへんやん。……お前はどないなんや。お前の意思でも夢に入れるようみたいやけど」
「えっ……あ、うん。強く思って寝れば……会いに行けたこともある、かな」
専ら勝手に見せられることが多いけれど、願えばきっと見れる。そんな気がする。
「もしかせんでも……こいつ、井宿が思っとる以上に、夢見とんのとちゃうか?」
「!」
………ぎくり。
「そうなのだ?」
「え!?見てないわよ!一昨日見たのが久しぶりなくらいだし……あの時は井宿が起こしてくれたでしょ?」
起こした、の言葉に翼宿が一瞬、歯を食いしばった。
「本当に……」
「本当よ!それにもう、これがあったら大丈夫なんでしょ!?」
ジャラ、と腕を上げると小さく数珠の音が鳴る。
「……そんなの、気休め程度なのだ……」
「奏多、お前……今度、夢ん中入ってしもて戻られへんかったらどないすんねん。井宿は術使えんのやで?」
「そう、ね……でも!大丈夫じゃないかしら!」
「………はあ……これなのだ……」
「なんでそない……楽観的なんや……」
2人が同時に肩を落とす。
そんな事言っても……何だか大丈夫だと思ってしまうのだから仕方がない。
「……なあ、井宿」
「だ?」
「お前は一緒に夢ん中、入れへんのか?」
「だっ!?……無茶なことを言うのだ……術で会話が出来ても人の夢の中になど入れるわけがないのだ」
「ほんなら、さっきもろたコレ。コレも一緒に持っとったらどうや?」
そう言いつつ、ごそごそと服の中から取り出し始める。
何のことかがわかった井宿は項垂れた。
「君はオイラの味方なのか、わからなくなってきたのだ………」
「え?なになに?」
「あった!コレや!こいつの分はないんか?」
「…………あるのだ」
そう言って目の前に突き出されたものを見る。
手のひらに収まるくらいの大きさで、札のようだ。
「え?これって……お守りじゃない」
そうだ。
これはこの世界に来て、最初に井宿がお金を工面するのに作ったお札と同じだ。
井宿の念が込められているはず。
「いつの間に?」
「……昨夜は随分と時間があったのだ……」
「昨日?え、寝てないの!?」
まさか、私が変に掴んで離さなかったから眠れてなかったの!?
「昨日作ったんか?あれからオレら全員分をか?」
「術が使えなくなるとわかっていたのだ。力を使い切ったところで一応、寝たのだ」
そして、井宿が懐から1枚の札を取り出す。
「これは君のなのだ。ちゃんと持っておくのだ」
お守り。
みんなと、同じもの。
「ありがとう」
そっと受け取ると、手の中にきゅっと納めた。
井宿の力、邪(よこしま)なものから守るもの。
うん。やっぱり、出来る気がする。