ふしぎロマンス3~再生の力~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「太一君に戻れと言われて来てみれば……君は何をやってるのだ……」
微かに聞こえた。
これ……井宿だ。
あぁ、でもダメだ。
力が入らない。
目を開けようにも、それすら出来ない。
「いいから、眠るのだ」
うん、そうだね。
少しだけ、寝るね。
あれ……?でも変だな。
井宿……戻るのは明日じゃなかった?
聞きたいけれど、もう限界だ。
体がふわりと浮く。すぐに頭がコテンと何かに寄りかかった。
井宿が私を横抱きに抱えてくれていた。
「ん……ふぁぁ……」
よく、寝た。
久しぶりに、本当によく寝た。
しかもとても温かかった。
そうそう。これ、この抱き枕がね、温かくて………
「ってぇ!この時代に抱き枕があるわけが……!!」
「ようやく起きたのだー」
「ち、ちちちち…井宿!!」
「やけに“ち”が多いのだ」
目の前に井宿が横たわって笑っている。
なんだ?なんだ!この状況!!
「よく眠れたのだ?」
「な、何が起きてるのデショーカ……」
慌てて布団から転がり出ると、井宿はそれを見て体を起こし、苦笑いを浮かべた。
「何か心外なことを思われていそうなのだー」
「だ、だだっ!だって!」
「ははっ、オイラみたいなのだー」
心臓がドキドキする。なんで井宿は平然としてるの。
私たち、くっついて寝てたんでしょう!?
「昨日、太一君に相談してきたのだ」
「……太一君?」
いきなり何を言い出すかと思えば……
あ、いや。
この状況を教えてくれようとしてるのか。
私はすごすごとその場に正座した。
「君の再生の力はまだ目覚めたばかりなのだ。無闇に使うと体力、気力、ともにごっそり使ってしまうのだ」
「はぁ、そうなの」
「これはあまり使わせられないな、と思っていたら、太一君が“もう遅い”と言ったのだ」
太一君はこの世のことを全て見ている。
だから私のこともわかったらしい。
「すぐに戻ってみたら案の定、君は倒れていたのだ」
「あ、はは……面白くて、つい」
「驚いたのだ。家にあるもの全て元に戻す気だったのだ?」
「へへっ」
「笑い事じゃないのだー。あまり使わないで欲しいのだ」
井宿の優しさからの言葉だとは理解できる。
それでも、やっと自分に出来ることを見つけたのだ。
とは言え、使う度にぶっ倒れていては意味がない。
力は井宿が見ている時に、加減をしながら使うことになった。
「自分の力がどれほどのものなのか、知るまでは気をつけるのだ。わかったのだ?」
これが井宿の口癖になった。
毎日少しずつ試すことによって、この力がどんなものなのかわかって来た。
ものには命がある。
命あるものは、全て再生できた。
大切にしていれば、より命という魂が宿りやすくなっていた。
だがしかし、やはり再生出来ないのも見つかった。
「もう少し早く気づいていたら……」
「奏多……」
目の前に小さな、本当に小さな子猫が横たわっている。
どこを見ても母猫や兄弟猫はいない。
迷い込んだのだろうか。
その子猫はもう……息をしていない。
どれだけ体を包み込んで祈っても、命が戻ることは無かった。
何度も何度も祈る。
「埋めてあげよう」
井宿が私の肩に手を置いて言った。
「うん……」
家の脇に、深く穴を掘った。
ゆっくり休めるように。
土を戻すと、そこに手を置いた。
「おやすみなさい。可愛い子……」
一瞬、土が動いたような気がした。
でもそれも気のせいだろう。
なんせもう、視界は滲んで見えづらい。
「ねぇ、井宿。縮んでくれない……?」
その言葉だけで察してくれたのか、見ればすでに三等身の姿。
そっと体を引き寄せ、包み込む。
あたたかい。
「あの猫、飼ってあげたかったな」
「…………」
「井宿……死んじゃだめよ。治せないもの」
「……だ」
小さくなった井宿をぎゅっと抱きしめた。
やっぱり死なせてはダメなんだ。
あの日、柳宿に会った日から4つの光が消える夢は見なくなった。
それだけでほっとした。
でも今、また再認識させられる。
死なせてはダメなんだと。
先のことがわかっているのだから……
私が護らなければ。