ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
あまりにも近い。もう触れるか触れないかのところで、井宿は止まった。
「まだ行くというなら……このまま君の唇を奪って、行かせないようにするのだ」
「な、に……いって……」
「どうするのだ」
こんなのハッタリだ。
いや、本当にするかもしれない……。
いやいや!井宿は僧侶!
しないでしょ!?よし、ハッタリだ!!
「言っておくけど今夜しかな、っ……!?」
言い終わらないうちに、それはぶつかって来た。
「んっ!?んむー!!」
離そうと試みても井宿の両手がしっかりと包み込んでいる。
ハッタリじゃなかったぁー!!
しかも段々と重なり方が深くなり、息をしなくてはと口を開けば、そこにすかさず井宿の舌が入り込んでくる。
「ふ、ぁッ……」
どうしていいのか、どうなっているのか戸惑う私をその舌が乱す。
舌をとられ絡みつかれ、何度も唇を甘噛みされた。
「……っ、ちちりっ……!」
少しだけ唇が離れた瞬間に、唇と唇の間に手を差し込んだ。私の手のひらに井宿の唇が当たる。
「な、何するの……!あなた、僧侶でしょ!?それとも何か治して欲しいってわけじゃないよね!?」
なぜか私の力は消えていない。
きっと黄龍の力まで封印してしまえば、透の力も使えなくなるためだと思っている。
戸惑い続ける私の手のひらを、井宿はそっと握り退けた。
「僧侶でも、煩悩に溺れる者もいる。我慢すればするほど……耐えられず深みにはまる」
ぽかん、と呆気に取られていると、さらに言葉を続けた。
「それに口付けは、治癒やものを再生するためだけのものではないのだ」
「……し、知ってるけど……!こんなことでキスなんて……」
「君の世界では“きす”と言うのか」
……また余計な単語を覚えさせてしまった……。
「君がまだ心宿に会いに行くというならば、またキスをする」
……ちゃっかり活用してるし。しかも使い方あってるし。
「どうなのだ?」
「もうそれって脅迫だよ!?そんなのに構ってられな……」
また言い終わらないうちに頬に手が添われ、唇と唇が重なる。
……脅迫は本気だーー!?
「んっ!んーっ!!!」
今度はドンドンと胸を叩いてやった。
これはいくら何でも嫌だ!!今度はすぐに離してくれた。
それでも今までの温もりが嫌というほど唇に残って、頬が熱くなる。
「……脅迫でもなんでもいい。君が行かないと言うまでやり続けるのだ」
「なっ……なんっ……」
あいた口が塞がらない。
「井宿ってそんな人だった!?」
「……どう思われていたのかもう聞かないのだ。知ったこっちゃないのだ」
「井宿!?」
「あんな男にやるくらいなら……オイラが貰い受けるのだ」
……はい?
あれ、今、私の耳……変になったかな?
「朱雀の者ならば、君を大事にしてくれるのならば、と思っていたが……心宿はダメなのだ」
「あの……井宿?」
「もう遠慮はしない。しなくても……いいのだろう?張宿」
………張宿?なんのこと?
あ、でも井宿が私の足元に向かって言っている。目線の先には張宿の文字が出た左の足の甲がある。
「張宿……と、話をしたの?」
「したのだ」
「張宿……私の中にいるのね?昨日も夢の中にいたような気がするの。本当に幸せな夢だった」
「それはよかったのだ。幸せな夢ならオイラも見たことがあるのだ」
井宿が目を合わせてくる。
さっきまでこの人の言動に振り回されてあたふたしていたのに、自然と見つめ返していた。
「いつか、正夢にしたいのだ」
どんな夢なのかはわからない。でも、井宿は夢のことを覚えていそうだ。
「きっとなるわよ。井宿が願っていれば、きっと」
「そうなのだ?」
「ちゃんと寝てるかわからない井宿が夢を見たほどだもの。特別なのよ」
「……そう言えば、夢なんて久しぶりに見たのだ」
「でしょ?」
「それなら希望は捨てないでおくのだ」
「そうそう、それがいいわ」
なんだかわからないけれど、気が晴れたようだ。
機嫌も落ち着いたようだ。これならもう、いいよね。
「それじゃ、私、行くね」
「……どこにいくのだ?」
そう言うなり、手首を取られる。嫌な予感しかしない。
「……どこって……部屋にだけど」
「心宿の所ではないのだ?」
「ち、違うわよ!!というか、みんなの目があるのにここから出れるわけないじゃない!」
「……嘘かもしれないのだ。君は信用ならない」
私ってどんだけ……!?
ぐぐぐ、と体が引っ張られる。
ボスンっと井宿の胸に飛び込んでしまえば、耳元をくすぐる息づかい。
「嘘だったら……今度こそ容赦しないのだ」
「………ハイ」
……こ、わっ……!!
逆らわないでおこう。
うん。“今”は大人しくしていよう。