ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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夢を見た。
久しぶりの普通の夢だった。みんなが出てきたような気がする。
あれ……でも、どんな夢だったかな。
残念だわ。とても幸せな夢だったのに……。
夢ってどうして忘れてしまうのかしら。
ふと目を開けるとそこは私の部屋。私の寝台。
ああ、本当に幸せな夢を見てた。もう……どんな夢だったのか覚えていないけれど。
「……もいっかい寝たら続き、見れるかしら」
よし、寝よう!と布団に潜り込もうと、掛け布団を掴んだ。
むにっ
………はて。何だか懐かしい触り心地。
ぬいぐるみ?でもこの部屋にあったかしら。
布団と思って掴んだものを目の前まで持ち上げる。
外からの光に目がくらむ中、やっと焦点が合うと私は息が止まった。
「え゙」
糸目で丸々っとした体。どうやら掴んだところは首根っこのようで……。
誰か……ウソだと言って。
「やっと起きたのだ~……」
「っ……ぎゃああああ!!!」
「君は……っ!相変わらず耳にくる叫び声なのだ」
叫ばずにいられるわけがない!
手に持ったまま硬直した私から、ヒラリと井宿は降り立った。
「外が騒がしくなったのだ。見に行って……」
言葉が途中で途切れた。不思議に思っていると、目の前で元の姿に……大人の男の人の姿に戻った。そしてそのままクタリと膝をつく。
その姿が珍しくて身を乗り出して覗き込んだ。
「井宿?」
「………身体の力が抜けた……?」
寝台の上と下で目と目が合う。その後、井宿は1人で何か考え込んだ。
「井宿……?」
「……………」
井宿が自分の手を見る。首からかけている数珠に手をかけ、目を閉じる。
「……ねぇ、何か言って……」
「できない……何も……」
ハッと息を呑んだ。それはつまり………。
「術が、使えなくなったのだ。……あんなに必死に……覚えたというのに……一瞬で神通力が消えたのか……」
「っ……」
なぜ、そうしたのかしら。でもこの時はそうしないといけないと思った。
「大丈夫よ……!絶対にまた、使えるようになるわ!」
私はぎゅっと、井宿を抱きしめていた。力無くされるがままにじっとしていた井宿が、ポツリと呟いた。
「……どうして君は、オイラに触れてくるのだ……?」
「だって井宿……!」
「……そう何度も何度も触れられて……オイラは何もしないとでも思っているのだ?」
「えっ……?」
ふいに手首を掴まれた。くるん、と自分の体が反転するのがわかる。
素早くてびっくりする間もなく、そのまま再び寝台に横にされた。
でも今は……目の前に井宿がいる。私の上にのしかかっている。
「………え?」
「君は……オイラを甘く見すぎなのだ……」
「ち、ちり……?」
なんか……怒ってる……。
面だっていつの間にかなくなってるし、その素顔がいつになく……不機嫌だ。
押さえつけられた手が解放される。すかさず私の上から退くと、スッと面をつけて扉の方を見た。
「覗き見なんてしないで、入ってくるといいのだ」
そうスパッとキレのいい声でいうと、そこからひょこっと柳宿と翼宿の顔が現れる。
「なんでわかったのかしら~」
「こいつ、術使えんようになったんは嘘とちゃうか?」
「術が使えなくても君たちの気はわかるのだ」
「それよりもあんた!!奏多を襲ったわね!?」
「そーやった!!こんの非常時に何やっとったんじゃ!!」
「何もやってないのだ。心外なのだ」
「あれのどこが……!!」
……あーもう、朝からなんでこう……。
朝からなんだって言うの?そもそも何で……井宿がいたのかしら。
もしかして……ずっといたの?
「奏多、いい夢見れた?」
「柳宿……」
「どうなの?」
「よく、覚えてないんだけど……すごく幸せな気分で目が覚めた」
そう。なんだかすごく暖かい夢。
「そっ。よかったわね」
柳宿が綺麗な顔で笑う。
とても幸せな夢だった。そう。私が思い描いていた夢。
幸せな夢を見たあとに、現実を見なきゃいけないことがこんなにもつらい。