ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「寝つき、早かったわね」
奏多の寝息が聞こえてくると、柳宿と翼宿はホッとした表情を浮かべた。
「疲れとんのや。朝から、動きっぱなしやったしな」
「そうね……」
思い返せば、朝に透が大怪我を負って白虎七星士の家に来てからというもの、寺院に行き、そこで張宿を失い、青龍が召喚され慌てて戻ってきた。
「長い……1日だったわ」
「ホンマやわ」
そこで柳宿は今も黙り込んで眠っている奏多に目を落としている井宿に気がついた。
「そうやって気になるんなら、なんで素直にならないのよ」
「……まだあの話を掘り返すのだ?」
「違うっていうの?」
「オイラはただ……きちんと眠っているか見ていただけなのだ」
「………あっそ」
あまりにも意にそぐわない返事が返ってきて、柳宿は呆れた声を出した。
「あんたってさ……人を好きになることに踏み込めない理由でもあるの?」
柳宿が痛いところをついてくる。
踏み込めない理由と言われ、思わず井宿は自分の左目を見られないように体を捻った。
「別に……ないのだ」
本当にそう言えるのだろうか。井宿はそっと目を伏せた。
「……胸糞悪うてしゃあないわ。そんなんじゃ、こいつ……ずっと不安がるで」
「翼宿……」
「こいつの言うとおりになったら……オレらは明日、七星士やなくなってまう」
翼宿は自分の右腕を出す。今は少し念じれば、すぐにでも“翼”と字が浮かび上がる。
「……これが出ぇへんようになったら……」
「ただの人間でしかないわね……」
「そないなことになっても、絶対に死なれへんぞ。特にお前や」
お前、と言われて井宿が顔を上げる。
「オイラだけではないのだ」
「ちゃうやろ!こいつは……」
「翼宿、わからないのだ?奏多が何を一番恐れているのか、わからないのだ?」
「なに、言うて……」
井宿がすっと顔を翼宿と柳宿に向けるとともに、面を外す。そこには、真剣な顔そのものがあった。
「奏多はこの世界に来て、ずっと何を護ってきたと思っているのだ?柳宿、君は知っているはずなのだ。翼宿、君も見たはずなのだ。張宿が命を落とした時の奏多を」
言われて柳宿も翼宿も言葉をなくす。
「もう……誰か1人でも彼女の前から消えてしまえば……奏多はきっと、自分を責めるのだ」
「……傷つくかもしれないわね」
「そんなことじゃ済まんで」
壊れる。
言葉には出さなくても、3人の脳裏に言葉が思い浮かんだ。
「……“僕”もそう思います」
「「「!!!」」」
突然聞こえてきた、眠っているはずの人の声に3人がビクリと振り向いた。
「奏多!?あんた、起きてたの!?」
柳宿が声を荒らげる。ゆっくりと起き上がった奏多の体。でも、何かがおかしい。
「……違うのだ。この気……これは奏多のものじゃないのだ」
「なんやて!?」
井宿が思わず近寄る。
目の前に奏多がいるというのに……どうしてだ。どうして……もう、会えないと思っていた人に見えるのだろう。
「……張宿、なのだ?」
井宿が小さく問う。張宿、と呼ばれた奏多は、ニコッと笑った。その笑顔がまた、張宿と被る。
「はい、張宿です」
声も姿も奏多そのものなのに、3人には張宿がそこにいるように見えた。
「少しだけ……奏多さんが眠っている時だけ、お体をお借りしてみました」
そう優しく言う張宿に、柳宿は思わず抱きついた。