ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「はい、さっさと寝なさぁい?」
寝台に向かってると思っていると、柳宿は言うなり私をポーンと投げた。
「ぶっ……!柳宿!あ、あなた投げたわね!?」
「痛くないところなんだから、平気でしょ~?」
まったく悪びれることなく言い放つ柳宿に、顔を摩りながら起き上がった。でも、それもすぐに肩をぐっと押されて、横にされる。
「柳宿ー!!!」
「だからあたしは甘くないって言ったでしょ。あんたが大人しくなるまで、押さえつけててやろうかしら。片手で出来るわよ」
すぐさま布がかけられる。いつも掛け布団として使っていたものだ。
「おい、いくら何でも強引やろ」
「翼宿……あのねえ、奏多にはこのくらいしないとまたすぐ勝手に動こうとするんだから。あんたも何やってンのよ」
「せやけどなあ!こいつ……」
翼宿が私を見てくる。
「こいつ……不安がっとんねん。わかるやろ、お前なら」
翼宿の言葉に柳宿がぐっと押し黙る。もう一度起き上がろうとすると今度は妨害もなく、すんなり上体を起こすことが出来た。
「あんたって……ほんと怖がりなのね」
……そう、なのかもしれないわね。
ううん。きっと、そうだ。
「あなた達を、失うのが怖いわ」
それぞれに目を向ける。3人とも黙っていた。
「巫女でもない私がこの世界に来た意味は、あなた達なんだと思う。ずっと……あなた達が気がかりだった」
学生時代の頃に芽生えた感情。
今思えば小さな恋心にも似た感情。
「ずっと……救いたいと願っていた。あなたたちに幸せになって欲しい。そのためには……生きていて欲しい」
「奏多……あんたは?それで幸せなの?」
「とっても幸せだよ。みんなが笑ってくれるなら。あなたたちはまだ若いの。まだまだこれから、楽しいこといっぱいあるんだから」
そういう私は……この10年は大して面白いということもなかった。
高校を卒業して、普通に大学に行って就職して。そこでも特に面白みもない生活を送っていた。
それが普通だと思っていた。だけどこの人たちは私が過ごしたその10年を、これから過ごせるだろう日々を迎えずに終えてしまうかもしれない。
「急にぼーっとしてどないしたんや?」
「さっき……翼宿に言ったからかな」
「あ?」
視線を手元に落として、目を閉じる。
今までこの世界でやってきた事。とても目まぐるしくて、しんどくて辛くもあったけれど……ドキドキして、楽しかった。
「やっぱり……私……あなた達を護りたい。この世界にずっといたい」
彼らは知らない。
自分が本の中の、架空の人物だ、と。美朱も自分は違うと思っているだろう。でも、彼女だって……本の中の人間。
“ふしぎ遊戯”という、物語の中のひとり。
私と、あの人だけが知る事実。
だけど今、目の前にいる彼らは確実に生きている。同じ空気を吸って、同じものを食べて生きている。
「好きなだけ、いたらいいのだ」
それは、久しぶりに聞くのではないかと思えるくらい、優しい声だった。
顔を上げるといつもの面の顔。笑っている顔だけれど、今は本当に優しく感じる。
「好きな、だけ?」
「ああ。君が、帰りたいと思う時まで。それまではここにいて、皆の幸せを願えばいいのだ」
その言葉だけでも、心が軽くなった。
願うだけでいいのならいくらでも願う。ずっと、願うわ。
これで話が終わっていれば、私は少しは安心して眠れたのかもしれない。でも、さっきの井宿の言葉に、逆に不安に思った人が一人現れた。
「……待てや!!オレは、帰さへんぞ!」
翼宿だ。
「お前が帰りたい言うても、帰さへん!」
「そこはあたしも同感だけど……翼宿、いきなりどうしちゃったわけ?」
「いきなりとちゃう!ええか、柳宿。お前だけと思うんやないで!」
「何がよ」
「こいつをなあ……」
……うわ、なんか言う。
言っちゃうわ、翼宿……。
「こいつに惚れとるんは、オレもや!!」
……言ったー!!!!
柳宿の顔色がみるみる変わる。
……ああ。
何もそんな……声高らかに宣言しなくても、いいんじゃないかな……?