ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「翼宿……?」
壁に追い込まれると同時に、顔の横につかれる手。
こ、れは……いわゆる壁ドンというヤツでは……!?
「あ、あの……翼宿!?」
さすがに近く感じるし、この行為そのものに胸が高鳴る。
でも、当の本人はいつになく真剣で、決して茶化しているわけではないと見て取れた。
「翼宿?どうしたの……」
「……それはお前やろ」
低くかすれがかった声に驚いた。
「お前、何がそんなに不安なんか」
「え……」
「お前の知るオレらは……そない弱いんか」
翼宿の瞳が揺れる。
……そうか。私がみんなを心配すればするほど、それは皆を弱いと思い、信じていないということを言ってることになるのか。
「ち、違うわ!そうじゃないの!」
「だったら……もちっと気楽に構えとかんかい!」
「気楽って……ど、どうやってそう思ったらいいの!?」
「どうやってて……」
「あなた達を失いたくないの!でも、刻々と近づいてきてるのよ!?青龍は呼び出されてしまうし、心宿はこの先のことを知っている。自分が死なないようにしてくるはずよ!それなのに私は……」
押し止めようとしていた思いが、翼宿にぶつけてしまう。
「このままじゃ、星宿も軫宿も危ない!あなただって……わからないのよ!?何が起こるか……わからない。だから……とても不安なの」
「……………」
「それに……透くんが私を元の世界に戻す手段を見つけてしまったら……もう傍にもいられない」
「っ………帰るん言うんか!?」
翼宿が両肩に手を置いてくる。その置かれた手には力が入っていた。
「帰らないわ!今、帰る気になんてなれないもの!」
「今………」
何度、願ったことだろう。
若い頃にこの世界のことを知って、何度、思ったことか。
「……あなたたちの無事を確認しないと帰れない……」
そう、つぶやいた時だった。
肩を引き寄せられたかと思ったら、そのまま胸に押し付けられた。
翼宿の力強い腕が、背中に、腰に回されている。
「た……すき………?」
「……ずっとここにおったらええやん」
「え……?」
「ずっと……オレのそばにおってくれや」
耳元に降りかかる切なげな声。
「……なあ、オレがやったら……お前は……どう思うん?」
そして、少し体が離れたかと思うと、翼宿の顔が近づいてくる。
一瞬、触れただけのキス。
「なんで嫌がらんねん」
「……え、と……」
するとは思ってなくて。
なんて今、翼宿の目を見たらそんなことは言えなくなった。それほど男の顔になっていたから。
「オレは……嫌や。お前が……おらんくなるやなんて」
「翼宿……」
こんな大人びた顔をする翼宿は初めてだった。
どう言えばいい?どうしたらいい?そう考え込もうとするともう一度、抱きしめられた。
首筋に顔を埋めるかのように、身を屈めてくる。
どうしよう。
すごく……いじらしい。
「あいつがお前を帰す、言うた時も……メッチャ嫌やった。……これやったんやな」
「え……?」
「透が言いよった“自覚なし”……は、オレのことやったんや」
翼宿と目が至近距離で合う。
ドキドキしてしまうのは、しょうがないはずだ。
「……お前に惚れとる」
少しはにかみながら言う翼宿は、いつもと違って見えた。