ふしぎロマンス21~予期せぬ事態~
夢小説設定
この小説の夢小説設定ふしぎ遊戯の原作に沿って進むお話。
オリジナル要素も多いです。
七星士よりも上の大人ヒロイン。
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「では、奏多。今夜はしっかりと休むといい。井宿、待たせたな」
「いえ」
星宿が井宿を引き連れてこの場を離れようとする。
このまま行かせてしまっていいの?
「星宿!休んでなんでいられないの!」
「奏多……」
「明日の朝になれば、あなたたちは七星士としての“能力”がなくなるわ!そうしたら……そうなってしまえばもう、止められない……!」
必死に叫んだ。もう頭が痛くなることはなかった。それが何を意味すのかは今は考えられない。
「七星士としての能力が……」
少なからず、その場にいた全員が言葉を失っていた。
「奏多。そのことを踏まえて少し井宿と話をしようと思う。大丈夫。そなたは少し休みなさい。とても疲れている顔をしている」
「疲れてなんて……」
「ない、とは言わせないのだ。君は今日ずっと気を張り続けているのだ」
「井宿……」
やっとこっちを見たかと思ったら、その気迫に押され、思わず黙り込んだ。
「翼宿。奏多を必ず部屋にまで連れていくのだ。必ずなのだ」
「……おう。なにが何でも休ませたるわ」
「任せたのだ」
なんでこういう時だけ、タッグを組むかな……。
「あら、あたしが連れてくわよォ?」
「柳宿はオイラと来るのだ。青龍が召喚された時のことを知りたいのだ」
「ああ、そうねー。たまちゃんもいないし、美朱も眠ってるんだものね」
「柳宿、すまぬな」
「そんな!構いませんわ!星宿様のお部屋ですわよね?さ、行きましょ!奏多、しっかり休みなさぁい!」
じゃね~、と柳宿は陽気にヒラヒラと手を振って星宿に付いていく。
星宿の自室に行けると知った柳宿は嬉しそうだ。
……なんか、完全に星宿に負けた気がするのは何故?ちょっと切なさを覚えたのは何故?
「俺も、少し用を済ませてこよう」
軫宿がこの場から出ていくと、翼宿が私の腕を掴んできた。
「え、何……?」
「逃げんようにするためや」
「はっ?」
逃げる?
私が?
「部屋に入るん見届けるまで、このままや」
「………えー。…………逃げないのに」
「その間ァ!!そんなんやから信用ならんのや!それとも抱っこで連れてったろか!」
……だっ………こ?
「はあ!?」
「なんやねん。今更こんなんに恥ずかしがるんか。純情やなあ」
ニヤ、と笑う顔が満足そうだ。
………根に持ってたのか。
言い返してやりたいけれど、今は本当にそんなことを言ってられない。
「……翼宿。ほんとに……こんなのんびりしてちゃダメなのよ」
「………休むんのも大事なことやろ」
「でも……」
俯く私に、ふっと肩に手を置かれる。
「翼宿?」
「ホンマや。ずっと気ィ張っとるな」
見上げると翼宿がなんとも言えない困り顔で見下ろしている。
気を張っている……。そうね。
確かに心休まる時がないわ。
翼宿にそのまま手引かれて歩いた。
どちらも会話することなく、ほどなくして自室の前についた。
「ほな、もう寝るんやで?」
「…………」
「何しとんのや。早う閉めんかい」
扉を開けて中に入ったものの、閉めることができない。
このまま、休んで朝を迎えてもいいのだろうか。そうしたら……みんなはどうなるのだろうか。
私の知らない、新たな未来になるのだろうか。
それとも……。張宿のときのように変えることなどできなくて、また私は目の前で……誰かを失うことになるのだろうか。
「っ……翼宿、怖い……どうしたらいいのか、わからないっ……」
「お前……」
こんな事言っても、困らせてしまうだけだ。私が自分で考えなくては。彼らを救う方法を。
落ち着いて。大人の私が狼狽えてどうするの。
「……ごめん。何でもない。翼宿も休んで明日に備えて」
できるだけ、ニコリと笑って扉を閉めた。
……いや。完全には閉まらなかった。
扉の隙間に、翼宿の足が挟まっていた。
「えっ!?ご、ごめん!」
扉を閉める力を緩めると、それは一気に開かれた。
肩を押され体が後ろに傾くと、翼宿が中に押し入ってきた。
あっという間に体が反転させられたかと思ったら、扉の横の壁に追い込まれた。
背中に感じる壁の冷たさ。
目の前にある、真剣な眼差しを向ける翼宿に、言葉をなくした。